元タレントの中居正広氏による女性トラブル問題を巡り、フジテレビの第三者委員会が調査報告書を公表。「女性が中居氏に性暴力の被害を受けた」と認定した上で「(行為は)業務の延長線上だ」と指摘した。
フジは業務の延長線上で起きた重大な人権侵害を、外部の報道があるまで隠蔽(いんぺい)しており、企業統治が根底から崩れていたと言わざるを得ない。
報告書は、トラブルが起きた当時の港浩一社長ら経営幹部が「人権リスクの認識を誤り危機管理としての対処をしなかった」と断定した上で「経営の体をなしていない」「被害者ケア、救済からの観点からも不十分な対応だった」と厳しく指摘した。
フジは社内で問題把握後も中居氏のレギュラー出演番組の放映を続けた。社員の人権よりも番組存続を優先したことは明白だ。
報告書は「ハラスメントは全社的にまん延している」と指摘し、今回のトラブルに限らず、人権を侵害された社員らが他にも多数いることは想像に難くない。倫理観が欠如した会社全体の病弊には言葉を失う。
フジは中居氏の依頼で女性に100万円を見舞金名目で届けた上で弁護士を紹介していた。報告書は「フジの幹部は中居氏サイドに立ち、中居氏の利益のための行動は女性への二次加害行為に評価し得る」と指摘した。社員を守らないばかりか、実質的に加害者を支援していたのであれば組織ぐるみで性加害に加担したと批判されても否定できまい。
フジは報告書の公表直前、親会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)を含めて人事を刷新し、人事権を含む経営の決定権を事実上握っていた日枝久氏の取締役相談役の退任を発表した。
日枝氏は、深刻な人権侵害の温床となった企業風土の形成に大きな影響を及ぼしており、説明しないまま退くことは許されない。
日枝体制で引き上げられた清水賢治フジ社長(フジHD社長兼務予定)と同HD社長から会長となる予定の金光修氏が引き続き経営に携わることも受け入れ難い。
報告書はBS報道番組キャスターを務める前取締役のハラスメントも指摘した。経営陣を総入れ替えして生まれ変わらない限り、公共性を有する放送会社として存続することは厳しいのではないか。
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