怠慢主婦 ドイツで同居 

日本食を食べなくなり義両親のしもべと化し、すでに何年になるだろう。遠い目しながら今日も行き抜いてやるぞっ

バスを乗り間違えた朝

2018年11月06日 | 交友関係
二週間ほど前、まだサマータイムだったときだ。
早朝の街中での約束のために、普段は乗らない朝7時出発のバスに乗った。
周囲はまだ暗いのに、小学生の子供たちでバス停はにぎやかだった。こんな暗いうちから学校に行くのは危険だろう、とも思った。
さて、やってきたバスに乗り込むとほっとした。「これで約束の時間に間に合う」ってね。
5分くらい経過しただろうか、周囲が暗いので気づきにくかった。そのバスは街へ向かうのと反対方向へ向かっていた。
通学用の別の方角へ行く路線だったんだ。
人口1400人程度のこの集落でも、朝は各方面へ向かうバスがひっきりなしに走っていることを知っていたのに、その日はそのことには頭が回らず、とにかく時間に間に合うことばかりを気にしていた。

ちょいと慌てた私は運転手に言った。
「すみません、間違えてしまいました」
顔見知りのその男性運転手は、いつも余り愛想がいいほうではなかったが、この日はご機嫌まで悪かったようだ。
「ちゃんと前の表示にあっただろう!どこ行きかちゃんと確認しないお前が悪い」
という風な口調で返されたものだからたまったものではない。
間違えたショックと、運転手からの乱暴な返事にへこんだ。
日本だったら早速バス会社にクレームを入れて、すっきり爽快になれるのだろう。ここはこんな言葉のやり取りは日常茶飯事なので、何を言われても大丈夫なように鍛えたほうがお徳だ。
10年もいるとかなり鍛えられるものだ。ただ、約束の時間に間に合わないショックはどうしようもなかった。

次のバス停で下ろされた私はすぐにウチに電話を入れた。
窮地を察した義母は「すぐに行きます」と即答してくれたのはいい。携帯電話を持って出る、という発想は義両親にはないだろう。このバス停が一体どこにあるか彼らはわかるのか?
ウチからおよそ5,6キロ北上した集落に入ることはわかるが、普段来ない場所なので詳しく説明することもできなかった。

辺りはまだこんなに暗い。
そんなに遠くに来たわけでもないのに、暗い見慣れぬ場所は不安にさせる。
ときどき、近くの小学校へ通う子供たちが私の目の前を通った。
反対方向、つまりウチへ向かうバスは一時間後だ。
もう、間に合わないだろう。
人生にはこのような諦めも必要だな、などと早朝のバス停で哲学し始めた私。

15分ほど過ぎたところだったろうか、義両親たちの車がやってきた。
「方々で通りがかりの人たちに尋ねて、バス停を探し回った」と彼らは私に説明した。
義父はちょいと嬉しそうに「いやぁ、本気で携帯電話を勉強しなくちゃあな!」と興奮していた。
ああ、また始まった・・・
いや、義父の携帯電話勉強宣言にあきれている場合じゃあない、もしかしたら間に合うから街まで急いでくれっ!

そして・・・
間に合うどころか、予定より早く到着した。
やはり、自動車は便利だなぁ。ドイツの公共交通機関は日本のそれらと比較すると、非常に劣っているので自動車移動に頼ったほうがいい。何がエコの国だ、ってしょっちゅう思う。自動車を買わせるためにわざと毎年料金を値上げしているのか、運転手の愛想を悪くさせているのか、って考えてしまう。

・・・とはいえ、私専用の自動車を持つことは、経済事情で今後も難しいだろう。
次にバスに乗り間違えたときは運転手と言い争えるわけのわからぬ論争力を発揮しよう。「間違えて困っている乗客にそんな意地悪な言い方はないでしょう」って怒鳴ってみたい。
また、義父に携帯電話のかけ方を教えよう。通話を終えたら電源を切ってしまわないようによくよく教え込まなくてはならない。