生徒がいた。
中学3年生だ。
小学校時代から登校したことがない。
いまの担任の先生も顔をみたことがない。
でも、他の生徒と同様に扱うことにした。
毎日学級ノートを自宅に届けた。
届けるのはクラス全員が交代して協力してくれた。
朝の回収は近所に住む生徒に頼んだ。
もちろん本人は玄関にも出てこない。
母親を通しての受け渡しだった。
ノートには、返事を書く欄があった。
「よかったら書いてください。」
その生徒の分はいつも白紙だった。
なにしろ会ったこともない生徒だ。
「何を書いたらよいか。」
先生は毎日苦労した。
たまたまサッカーのW杯開催中だった。
一行書いた。
「応援している国は?」
短い返事があった。
「フランス。」
先生はインターネットを駆使した。
フランスチームの情報を集めた。
それをノートにべたべたと貼り付けて届けた。
その後、生徒は相変わらずだった。
やがて夏休みに入る。
「絶望とは愚か者の結論だ。」
先生はこう思ってノートの継続を決意していた。
それでも一方で「ムダか」という思いもあった。
1学期最後の朝だった。
回収されたその生徒のノートを開いた。
先生は驚いた。
何と返事が書いてあるではないか。
見たとたん先生は涙があふれて止まらなかった。
いつの間にかノートを握りしめ、心の中で叫んでいた。
「教師でよかった。この仕事をしてよかった。」
その返事とは、たった一行。
「先生、ありがとう。」だった。
中学3年生だ。
小学校時代から登校したことがない。
いまの担任の先生も顔をみたことがない。
でも、他の生徒と同様に扱うことにした。
毎日学級ノートを自宅に届けた。
届けるのはクラス全員が交代して協力してくれた。
朝の回収は近所に住む生徒に頼んだ。
もちろん本人は玄関にも出てこない。
母親を通しての受け渡しだった。
ノートには、返事を書く欄があった。
「よかったら書いてください。」
その生徒の分はいつも白紙だった。
なにしろ会ったこともない生徒だ。
「何を書いたらよいか。」
先生は毎日苦労した。
たまたまサッカーのW杯開催中だった。
一行書いた。
「応援している国は?」
短い返事があった。
「フランス。」
先生はインターネットを駆使した。
フランスチームの情報を集めた。
それをノートにべたべたと貼り付けて届けた。
その後、生徒は相変わらずだった。
やがて夏休みに入る。
「絶望とは愚か者の結論だ。」
先生はこう思ってノートの継続を決意していた。
それでも一方で「ムダか」という思いもあった。
1学期最後の朝だった。
回収されたその生徒のノートを開いた。
先生は驚いた。
何と返事が書いてあるではないか。
見たとたん先生は涙があふれて止まらなかった。
いつの間にかノートを握りしめ、心の中で叫んでいた。
「教師でよかった。この仕事をしてよかった。」
その返事とは、たった一行。
「先生、ありがとう。」だった。