くらげのごとく…

好きなことを考えてふわふわ漂ってるような
時間が心地良かったりする。
たとえ時間の無駄遣いだったとしても…。

写楽考

2007年04月28日 | 観劇
「写楽考」
 作: 矢代静一
 演出:鈴木勝秀
 出演:堤真一・高橋克実・長塚圭史・キムラ緑子・七瀬なつみ・西岡徳馬
 シアターコクーン

なんとも、渋い出演者の面々がそれぞれにいい味を出してる。でも、演劇界ではすごく贅沢なメンバーよね、これ。重たくもなくそれでいて軽いわけでもなく、観ていて心地良い作品だった。

堤さんはTVや映画でも活躍されているけど、演劇界でも貴重な存在。真田さんが映画界へ行ってしまってから、こういう色気と狂気をはらんだ役ができる中年の俳優さんって他にいないんじゃないかな。華もあるし、上手いし、どんな役にもさらりとはまってしまうのだ。

謎の多い「写楽」の人生を軸に、彼を取り巻く人達が描かれる。写楽は濡れ衣をきせられて死刑になるけど、正直に自分の人生を生きている。何があってもぶれないから才能と共に輝いている。だからそんな彼を利用しようと画策する人達がどんどん卑屈に見えてくる。

優しくしてくれていても、心底からは振り向いてくれていない、写楽に一途な愛を捧げる女、お米さんを演じる七瀬なつみさんが良かった。純粋になるほど切なて、それでもなお、納得していて。

こういう女性像どこかで観たことあるぞと、よくプログラムを見てみたら、原作が矢代静一さんだった。そう、「弥々」の原作者で鞠谷友子さんのお父様。良寛を慕う「弥々」と「お米」はどこか共通する哀しさがあった。

ちなみに演出の鈴木勝秀氏は山本耕史くんのヘドヴィクも演出している。こちらは同じ人の演出とは思えないほど、がらっと雰囲気が違う。作品自体、まるっきり質が違うから当然といえば当然だが、今回は障子の影が牢屋のイメージをかもし出したり、ちらちらとはかない雪をふらせたり、写楽が首をつられて暗闇に消えていったりと視覚的にもはっとさせられる場面が多かった。笛と和太鼓の生演奏も臨場感があった。

でも、最後の場面はちょっと違和感があった。写楽の死後、成長し所帯を持ち農家のおばさんになった娘が、あっけらかんと明るく、両親のことを語るところがコメディータッチなのだ。背景も安っぽい感じ。何か、意図があるのかもしれないけど、写楽の死までは結構、行き詰る展開だったから、いかにもとってつけたような感じにあれっ?と拍子抜けした。

舞台って演出家によって色づけされていくのね。自身も演出家でもあるのに、その部分を押し殺して(?)、役者としての力量を発揮している長塚さんって、すごい人かも。

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