東山魁夷の日本画については 本人の経歴も作品についても ほとんど知らないけれど
新聞や雑誌に作品が載っているのを見たときは この人の絵は好きだなぁ と思って眺めてきた
いま 東京国立近代美術館で大きな展覧会が開催されていることを知り 楽しみに観に行ってきた
会場に入って 絵を観ていくうちに どの絵にも 空気が描かれている と感じた
精密画や具象画のようではない おぼろげな はかないような画風は 吸い込まれそうな空間である
むつかしくて読めない漢字の題名は 日本語の美しさを伝えながら 絵の主題を教えてくれる
曇り空の厚み 白い雪の厚み 渓流を流れる水の変化の多彩な厚み 青緑の樹の森の静謐
茫洋と遠くへ果てしない広がりは 時間が止まったかのような 静かで温かい風景である
ヨーロッパの風景を描いた作品を 初めて観ることができた
レンガ色の建物 窓は 日本画で描かれながら厚みのある質感で 落ち着いた趣がある
東山魁夷の絵に 人物は描かれず 自然の山や森や水辺の 煙るような静かな風景ばかりである
ラベルの ” ボレロ ”の曲を聴くように 雰囲気の似た絵を観ていると 清澄な気持ちが広がっていく
白い馬は どんな象徴なのだろうかと 幾通りにも想像をかき立てられる
解説より
「 墨 」は多くの日本画家にとって 憧れの世界である
表現の色彩を越えて もの本質を描く 至高の精神表現であった