華やぐ時間

時の豊潤なイメージに惹かれて 。。。。

映画 ” ヴェニスの商人 ”

2005-11-11 22:00:18 | ★映画  
シェイクスピアの原作”ヴェニスの商人”は読んでいないが いろいろな評が この映画を褒める
シャイロック役がアル・パチーノ  アントーニオ役がジェレミー・アイアンズでは ぜひ観たくなる

16世紀末の貿易都市 運河の街ヴェネチア
無一文のバッサーニオは貴婦人ポーシャに求婚する資金の援助を 友人アントーニオに依頼する 
アントーニオの全財産は4隻の船に積荷をして航海中のため 高利貸シャイロックに借金をする
街はキリスト教の信者とユダヤ教の信仰者で対立している
キリスト教信者のアントーニオ と 排斥され厭われるユダヤ教の信者シャイロック
唾を吐きかけたアントーニオの申し出に シャイロックは肉1ポンドを担保として金を貸す
シャイロックの娘が父親の金を持ち出して駆け落ちをする
バッサーニオは貴婦人の屋敷で 金銀銅いずれかの箱を選ばなければならない
ポーシャの絵の入った箱を当てた者が結婚出来るのである
外見の装飾に惑わされない 質実の寡黙な箱こそが自分にふさわしいと 銅の箱を選ぶ 
中にはポーシャの肖像画が入ってあり 二人は結婚する
ポーシャから愛と恭順の証しとして指輪を渡されたバッサーニオは 「決して 失わない」と誓う
アントーニオの船が難破し シャイロックから1ポンドの肉を要求され 裁判が始まる
駆けつけたバッサーニオが借りた金の2倍3倍の金を支払うと言っても シャイロックは拒む
老判事の代理として男装したポーシャが若き判事として 裁判を進めていく
「証文にある肉1ポンドの要求は認められるが 記してない血は一滴も流さずに切り取れ」と
バッサーニオは賢明な若き判事に感謝の品を申し出でる 
「その指輪をいただきたい 奥方もこの状況を分かってくださる」と言われ 判事にあげてしまう
ポーシャの屋敷へ アントーニオを伴って帰館したバッサーニオは 美しい妻ポーシャから
指に指輪のないことを指摘される   アントーニオのとりなしで夫は深く詫びる
裁判に負けたシャイロックは財産を没収され キリスト教への改宗を命じられる
友人たちがユダヤ教の教会へ入って行き 外に立つシャイロックの眼前で教会の扉が閉ざされる

中世の水の都ヴェニスは こんなふうに美しかったのか と思わせる映像である
この物語の中には 恋があり 友情がある   人の心を試される場面がみっつ あった
ひとつは バッサーニオが金 銀 銅のどの箱を選ぶか という場面
ふたつめは シャイロックが借金の担保を アントーニオの肉1ポンドではなく
倍額の金や他のもので代替するよう 説得される場面
みっつめは 「友人の命を救ってくれた礼を差し上げたい」「それでは その美しい指輪を」と
若い判事に所望されて バッサーニオが逡巡する場面
たいそうスリリングな場面である

この映画の感動は アル・パチーノの存在感である
時代は ユダヤ人へ多くの枷を強要していた  さまざまの偏見と蔑み
街を歩く時は赤い帽子を被るように  金を貸すのに利子を取るのはキリスト教に反する等々
キリスト教者たちが シャイロックヘ肉1ポンドの担保実行を思いとどまるように諫言する 
疎まれ蔑まれてきたユダヤ人としてのシャイロックは 人としての痛みは同じだと言い募る
シャイロックの深い哀しみ 娘に裏切られた父親としての心情 孤独 孤立
復讐に燃える心の痛みに さもありなんと共感できる
ラスト 財産を失いキリスト教へ改宗させられた者は こののち どうやって生きていくのだろう
生活の拠り所  精神の拠り所を剥奪された者は  どうやって生きていくのだろう

中世のシャイロックから 現代のホームレスと呼ばれる人たちへ思いが移る
かつてはあっただろう生きてきた足場を捨てるとは どういう一歩を踏み出せば出来るのだろうか
衣食住の一文無し 人間関係の一文無し 過去は白紙  では一週間先 ひと月先はあるのか?
意思的に持たない者は幸いかもしれない  持てないと思う者は不幸せかもしれない
では 失った者は どうやって生きていくのだろう
  
   

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