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戦果拡張の発煙弾〜平成29年度富士総合火力演習

2017-09-04 | 自衛隊

後段演習の仮想戦闘訓練が始まっています。

装甲機動車RCVが敵の兵力を測るための「様子見攻撃」を行いました。
敵を急襲し、それによっててんやわんやの大騒動が起きた、と仮定します。

オート班(バイクの偵察隊)は、その様子を観察しているという状態です。

急襲攻撃を終えたRCV班は急いで離脱するのですが、あれー?
本番の、しかも模擬戦闘だというのにオレンジの旗をあげたRCVが・・・。

オレンジの旗をつけた車両だけ、(´・ω・`)という感じで引き上げます。
早く離脱しないと相手に場所特定されちゃうよ?
予行とリハでは続出したオレンジ旗の装備は、仲間とは全く違う方向に
退場していくことに気がつきました。

「お仕置き部屋かな」

「・・・普通に整備するところでしょ」

オート班の報告によって、敵の居場所がわかったので、富士教導団は
A道、B道沿いに攻撃し、三段山を奪取することを決定しました。

まず、後方の特化火砲が敵陣地を攻撃し、間髪入れずに
74式戦車隊が射撃陣地を占領しようという構え。

会場左と右に2台ずつ配備します。

対戦車誘導弾を撃ち、それに反応して出てきた敵戦車を、
待ち構えていた74式戦車が撃破します。

74式戦車は決して移動しながら砲撃を行いません。
必ず移動し、止まって4秒目くらいに射撃を行います。

もし敵が三段山に展開していたら、被害多数。
もし本当の戦闘だったらここまで敵が何もしてこないなんてありえませんし、
こんな簡単にやられてくれる敵ならそもそも上陸なんかできそうにありませんが。

一連の攻撃は戦車隊、施設科、そして特科部隊によって行われます。

障害処理を行うため、特科部隊が援護射撃を繰り返す中、
発煙弾が弾着し、敵の戦闘行動を妨害します。

施設小隊の障害処理を妨害しようとする敵を再び74式が撃破!

今回改めて気づいたのですが、こういう「据え撃ち」に一番向いているのか、
実は後段演習で最も発砲回数が多いのが74式なのです。

引退が近いから花をもたせているのかなと思っていたのですが、
砲を換装して破壊力は普通にあるそうですし、つまり適材適所ってことなのかな。

次に施設小隊の地雷原処理車が地雷原処理ロケットを投射します。
画面が暗いですが、これは木曜日の予行の時の画像です。

この日は投射直後の煙も黒々としていましたが、本番は真っ白でした。
予行と本番では地雷原処理車の位置も投射方向も全く違いました。

理由はわかりません。

こちらが日曜本番に投射された地雷原処理ロケット。
右手から左手に向かって、予行とは全く逆方向から飛んでいきます。
(防衛相観覧席からの見やすさの問題かもしれません)

ロケットに付いている索には数珠のように丸いボールが連なっていますが、
これが爆薬ブロックで、地雷を爆発させ、戦車用の通路を確保します。

爆薬ブロックの数は24個ですが、展示用に爆薬を4分の1に減らしてあります。
ブロックがこんなにたくさんありしかも密接なのに、
爆発は広範囲に3箇所に分かれて起こるのがいつも
不思議です。

特科部隊が見えないところから何度かに渡って前進支援射撃を繰り返す中、
ヒトマル式戦車が攻撃前進してきます。

10式の展示は常にその軽快な機動性を見せることを重視しています。

進入してきて4台が斉射。

この後FV戦車の攻撃を支援するため、またしても74式戦車が撃ちます。

74式が撃つのはこれで確か4回目となります。
支援専用にしたら一番出番が多くなったということでしょうか。

後段演習では今のところ90式戦車の出番が全くなし。

続いて10式戦車、二連続同時射撃を行います。
もうわかったから90式にも撃たせてあげて!

そこに敵の戦闘ヘリが現れたので、87AW、ガンタンクがたたき落とします。
「ハエたたき」のあだ名は伊達ではありません。

実は破壊力はあるけれど、航空機を確実に落とせるかというとそうでもない、
とこの時聞いたような気がしますが、きっと何かの間違いでしょう。(適当)

この後FV小隊、特科火砲、迫撃砲が入り乱れて突撃支援射撃を行い、
敵対戦車部隊を撃破してしまったということです。まじか。

戦車中隊の突撃を支援する射撃の最終弾が弾着した後、どう聞いても

「自衛隊は突撃する!自衛隊、前へ!」

と言っているように聞こえたのですが、これも不思議な言い方だと思いません?


ここで後段演習になって初めて90式戦車が現れ、
そして締めの一発というべき一斉射撃後、敵陣にいきなり突入し、数秒後には

「突撃成功!」

と通信してきて、ようやく脚光を浴びました。
ある意味楽して一番おいしいところを取ったと言えなくもありません。 

戦車部隊が敵地に殴り込みをかけている時、ふと左手上空を見ると、
ヘリ部隊がホバリングしてこちらをうかがっています。

ここから行われるのが、総火演名物の打ち上げ花火、じゃなくて、発煙弾発射。
総火演を象徴する写真としてよく使われるあのフィナーレです。

よく「白煙弾」とこれを表現している人がいるようですが、白煙弾だと
あの白リン弾と同義になってしまうようなので、注意が必要です

自衛隊的にはこのシーケンスを「戦果拡張」と称しています。
発煙弾でこちらの存在を覆い隠し、同時に戦車教導隊が敵地に突入していくというわけです。

今回わたしは木曜日の予行の時、カメラを持ち替えなかったため、
望遠レンズ装着のままこのシーンに臨んでしまいました。
つまり失敗したということなのですが、おかげでこんな写真が撮れたのです。

空中にはっきりと分かるほどばらまかれた多量の発煙手榴弾。

大きさは小型ペットボトルくらいでしょうか。
確か新装備のMCVにも AAVにもついていたと思いますが、
発煙弾の発射機、スモーク・ディスチャージャーは、軍用車両であれば
普通に搭載している標準装備です。

戦車などには複数個まとめた状態で外装されており、車内からの遠隔操作で発射されます。

違う種類の装備がこうやって同じ発煙弾を上げることができるのはそのためです。
そしてこの写真を仔細に見ていただければ、点火前の発煙弾がほぼ一列、
同じ高さに打ち上げられているのがお分かりになるでしょう。

各装備はこの「戦果拡張」の際の発煙弾打ち上げの高さを揃えて投射します。
ほぼ同じ時間に点火し、同じ高さから美しい滝のような煙幕を降らせるというわけです。

これは放物線の頂点で発煙弾が発火する瞬間です。

火花によってフラミンゴのような淡いピンクに染められた白煙が、
投射した装備の上に降り注いできます。

どうしてこれが戦果拡張に必要なのか今ひとつなのかわかりませんが綺麗だから許す。

ちなみにこの写真から以降は日曜日の本番に撮ったものです。
二回参加してどちらも撮れたので、本当に良かったと思いました。

10式戦車にも、WAPCにも、等しく降りかかる火花と煙。
中にいる人はどんな気持ちで・・・あ、中からは見えないのか(笑)

段階に分けていますが、発煙弾発射の命令が下ってから火花が白煙に変わるまではほんの一瞬です。

発煙弾を上げた部隊が火花と煙のシャワーを浴びている間に、
74式戦車、87式AW、そしてヘリ部隊が会場左から現れます。

こんなこともあろうかと、今回は中望遠レンズのカメラに持ち替えておいたので、
ズームアウトし、スモークの全景も撮ることができました。

端っこのWAPCにはスモークはかかっていません。

最後の瞬間を写真に撮ろうとして頭上に伸びている腕の数が多すぎい!

そしていつのまにか敵は制圧され、畑岡地区は自衛隊統合群によって取り戻されました。
そして、残存する敵を今度こそフルボッコにするために、
全装備が空と陸を一斉に左から右へ移動していくのでした。

「状況、終わり!」

ソードソードミードミード ソミドミドソド〜〜〜

ソードソードミードミード ソミドミドソド〜〜〜(移動ド)

 

続く。

 

 



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4 Comments

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機関砲 (Unknown)
2017-09-04 06:32:29
敵機がまっすぐに突っ込んで来れば、撃ち続けることが出来る機関砲は確実に落すことが出来ますが、横を通り過ぎる敵の場合、撃ち落とせるとは限りません。

護衛艦の場合、自分を守るための最終防御は機関砲(CIWS)です。敵機あるいはミサイルはまっすぐ自分に突っ込んで来るので、何とかなりますが、敵機が87AWを回避して戦車を攻撃するような機動をされたら、対処は難しい場合もあり得ます。
返信する
いつもありがとうございます (まりめとろん)
2017-09-20 22:25:16
はじめまして、今年の総火演前関連記事を探していてこちらにやって参りました。
本来は最新の記事へコメントさせていただくのが良いのかと思いますがお許しいただきたく存じます。
元々好きだったこのジャンル、昨年の総火演初当選から、縁あって今年は土曜の予行へと、ようやく自分の趣味に走れるお年頃となり近場のみですがフラフラと陸海空を楽しんでいます。
エリス中尉さまブログを発見し、クリアかつ めっちゃ沢山のお写真と的確にツボをくすぐる記事のあれこれに、一人にやにやしつつ楽しませていただいています。
総火演記事をスタートに じわじわと最新記事から古い記事へと、あちこち楽しみに読み進めておりますが、ある時「読者になる」というボタンに気付き、試行錯誤して自分のブログをとりあえず開設。いざ!エリス中尉さまブログ読者になる!と張り切ったところ、読者になるボタン消えておりました(ToT) 。
まぁブログ名検索で探せば見つけられましたので、諦めずにまたお邪魔します!
(まとまりのないコメントでごめんなさい)
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みなさま (エリス中尉)
2017-09-20 23:09:14
unknownさん
あー、なんかあれ横をすり抜けられたら弱そうですもんねー。
あの日本のアームが独自にうにょうにょ動くことができたら状況は少し変わるかも。

周りの人がこの時、「あれは役に立たない」と断言していたのでそうかーと思いながら
聞いていました。

まりめとろんさん
初めまして。ようこそおいでくださいました。
当ブログは女性にも読んでいただける自衛隊&海軍ブログを目指しております。
が、自衛隊の中の人たちにも目を通していただいていて、ごくごく稀に
内容についてご指導をいただくこともあります。

ところで、わたし個人の趣味でブログパーツの「読者になる」というボタンを
削除してしまっていたため、ご迷惑をおかけしたようで申し訳ありません。

この秋のいろんなイベントにも突撃を予定しておりますので、
まりめとろんさんの参加したイベントについてここでお話しすることになることでしょう。
会場ですれ違うこともあるかもしれませんね!

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高速戦闘 (筆不精三等兵)
2017-10-07 11:14:24
「ガンタンク」の愛称もあって、如何にも頼もしげに見えるんですが、その手の方たちには余り評価が頂けてないんですね。
以前、築城の航空祭で展示されていたVADSについて係の方に尋ねたら、「毎分3000発の発射速度で弾倉には500発入ります」と答えられ「全力で6秒間しか撃てないんですか?」と少々不安に思い聞いたところ、「コイツの出番が来ても最近の戦闘機やミサイルは迎撃可能範囲を2秒もあれば突っ切っちゃいますから」とあっさりした答えが帰ってきたのを思い出しました。
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