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菅野直伝説その3~隊長はつらいよ

2010-07-11 | 海軍人物伝






好評、菅野直劇場第三弾です。

海軍は「指揮官先頭」をモットーとしていました。
いかなることも、まず先頭に立ち、たとえそれが命にかかわることでも率先して後に続く兵に範を示す、
というのが上に立つ者の心構えだったのです。

海軍に限らず、「長」のつくものは、部下にどんな姿を見せるか、ということをいつも考えています。
下に見せてはいけない姿、見られたくない姿というのも当然あるわけです。

 たとえば角田和男中尉の伝記「修羅の翼」では、

「長髪なんか生意気だ」と、頭をつかんで振り回され、叱られるだけならともかく
「部下の前でそんな目にあわされ、言いようもなく悔しかった」

とあります。

 上に立つものがそういう姿を見せてしまったら、部下の心を掴み統率していくことにすら支障をきたす、
という考えでしょう。
心ある上官なら、その部下の前で恥をかかせるような叱り方はしないものと思われます。


ちなみに我らが笹井中尉の指揮官先頭例は、
「みんなが嫌がる苦いマラリアの薬をよせばいいのに噛んで飲んで見せた」
「重量オーバーの一式陸攻からまず自分の荷物を蹴落とし、
さらに服を脱いでパンツ一枚になった」

というほのぼのしたものです。

どんな行動をとり、部下の前でどうふるまうか、ということを上に立つ者はいつも考えていたわけで、
もし部下がいなかったら、多少行動に変化があったのではないか、と思われるのが

本日の菅野大尉です。

菅野大尉は、指揮官先頭をもっとも体現した隊長で、いつも
「わが隊の飛行機が一機でも出撃するときは、隊長の俺が行く」
と言い、そのとおりにしていました。
そして、当然のことながら、遊びも指揮官先頭、部下を引き連れてよく遊んだということです。

そんなある日、菅野、松村大尉、柴田少尉、宮崎飛曹長の4人松山市内の海軍クラブに繰り出しました。
元気に騒いでいると、隣から「やかましい、静かにせんか」
構わず騒いでいたら再び「やかましい!」

菅野大尉、ブーッとふくれたとたんふすまを

<待ってぇ菅野大尉!あなたは今どこで飲んでるの?
街のレスじゃなくてそこは海軍クラブでしょう?
隣が上官かもしれないって、少しは考えてぇえ


というエリス中尉の叫びもむなしく、開けてしまいました。
そこには床柱を背負った少将はじめ、佐官クラスがずら~り。

「げっ」

青くなる4人。

しかし、何を思ったか菅野大尉、つかつかと部屋に入って行ったと思ったら料理を蹴飛ばし、
胡坐をかいてテーブルの上に座り込んでしまいました。
気色ばむ帝国海軍佐官。
てこでも動かない構えの菅野大尉。
気まずい時間が流れます。

しかし亀の甲より年の功とはよく言ったもの。
だてに年は取っていない床柱の少将、しばらくしてから
「・・・・もうよい、帰れよ」
さすがにその一言で菅野大尉もほうほうの態で引き上げたそうです。

この時もし後ろで部下が見ていなかったら?
さすがの菅野大尉も、すぐに謝ってことを大きくしないで済んだのではないでしょうか。
部下にぺこぺこ謝る姿だけは見せられん!ってところで座り込んでみたものの、
引っ込みがつかなくなったと。

菅野大尉、実は「誰か止めてくれえ」という心境だったのではと勝手に想像してみました。





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