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クロス・ドメイン(領域横断作戦)〜平成30年度 自衛隊記念日 陸自観閲式

2018-10-18 | 自衛隊

14日に行われた観閲式で、安倍首相はその訓示において

「宇宙・サイバー・電磁波の分野で構想優位を
確立できなければ国を守り抜くことはできない」

とスピーチしました。
この日の車両行進は、そのための戦略に呼応する部隊が
どのように編成されているかが明確にわかる構成となっていました。

宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域を
防衛という軸中心に横断して実現する体制の構築。

クロス・ドメインな防衛力の強化

とこれを称して、これから行進するいくつかの部隊がその
領域横断作戦に関わることを強調していたのです。

まず「情報化部隊」。
指揮官は東部方面情報処理隊長の2佐が務めます。

クロスドメイン作戦の基幹、つまり頭脳となる部隊です。

無人偵察機システムなど、情報関係機器の装備が6両で行進です。

無人偵察機、ドローンも、いつからか観閲式行進の常連となりました。

そして空自ペトリオット部隊

ペトリの指揮官は第一高射群、第3高射隊長である2等空佐、
車の運転手は女性自衛官ですね。

弾道ミサイルを撃墜する防衛システムの一角を担います。

パック3、射撃管制装置、発射装置などのシステム5両です。

高射特科部隊

今回芦屋基地にご一緒した方で、高射特科部隊だった元自衛官の娘さんが、
やはり高射特科部隊所属であることを伺いました。
驚いて、

「女性でも高射特科部隊入れるんですか!」

と聞くと、

「いやー、あれは立ってるだけで別に何もしなくていいから」

という返事でしたが・・・そんなことないよね?

ミサイルによる敵航空機射撃、これはやっぱりこれからの
防空の形となっていくわけです。

93式近距離、11(ヒトヒト)式短距離、地対空誘導弾中隊が続きます。

87式自走高射砲中隊も領域横断作戦に資する装備です。
ちなみにガンタンク、予行ではアンテナはじっとしていましたが、
本番ではくるくると派手目に回っていました。

地対艦ミサイル部隊の指揮官はミサイル部隊中隊長。
1等陸尉です。

多連装ロケット中隊の上部に注目してみました。

地対艦ミサイル中隊

地上展示で対艦ミサイルを強調していたのは、
この領域横断作戦があってのことだったのかと納得。

そして電子戦部隊
これからの戦闘は、電子戦が実は大変重要となってくるはず、つまり
自衛隊の頭脳判断力の優秀な人材はここに投入されているはずです。

いかにも頭良さそうな人たち、♪───O(≧∇≦)O────♪キター

隊長の肩書きもなんかすごいですよ?
第304中枢交換通信中隊長、三等陸佐。

何と言っても電磁波領域における作戦を行う部隊ですから。

この装備、何にするかはさっぱり見当がつきませんが、とにかく防衛省は
敵のレーダーや通信を妨害する電子戦を強化すべく、
平成4年から新しい電子戦評価システムの運用を開始します。

「電子戦が全ての勝敗を決する」

という言葉は決して大げさなものではありません。
しかし、実際のところ、同盟国のアメリカは、自国の最重要技術を
外部に出したがらないので、協力はまず望めません。(当たり前)

それで、日本独自のシステムを開発することにしたということです。

 総火演でも、目に見えない電子戦が一部披露されていましたが、
これからの戦闘は戦車で撃ちあったり、ましてや歩兵が突撃することはなく、
いつの間にか始まって、次の瞬間勝敗が決まることもあるってことですね。

陸海空で情報を共有し、共同で作戦に当たる作戦はこんな時代の流れから
自然発生してきたといえるでしょう。

 

 

さて、ここからは起動防衛力の展開の段階順に展示が進みます。
まずは即応展開として、先遣部隊が登場しました。

ところで余談ですが、今回、従来の車両行進のまるで運動会のような
「祝典ギャロップ」という、わたしが全く評価していない曲の代わりに
新しく作曲されたかっちょいい曲が演奏されていたことを書いておきます。

あの「祝典ギャロップ」、「越天楽」のメロディになるまで
いつもイラっとしていたので非常に助かりました。

先遣部隊といえば偵察部隊、といえばオート隊ですね。
オートバイで敵地に潜入し、情報を収集します。

87式偵察警戒車ももちろんこの先遣部隊に含まれます。

敬礼を行うのは車長のみ。

続く水陸機動団も先遣部隊、つまり情報収集を任務としているようです。

水陸両用車AAV7を使って、島嶼部への攻撃に対応する
我が国初めての本格的な水陸機動団です。

観閲式の待ち時間には、部隊結成に伴って作曲された
「水陸機動団歌」も披露されていました。

最後の

「♪すーいりーくきーどうーだんー」

という部分しか覚えていませんが、思ったより軍歌っぽくもなく、
歌うことで士気高揚に繋がりそうなかっこいい曲でした。

まさか水陸機動団に女性隊員は・・・流石にいませんよね?

AAV7を降りてゴムボートに乗り換える・・・のかな。
総火演では皆でこれをえっちらおっちら運んでいたのが印象的でした。

続いて1次展開部隊、即応起動連隊が続きます。
先遣部隊の情報を共有しつつすぐさま展開する、ということで
装輪車がまず現地に飛んでいくわけですね。

というわけで16式機動戦闘車。

足回りが軽く現場に急行できることに加え、
実は火力も結構とんでもない能力を擁すのが16式です。

イタリアなどでは「戦車が来るまでの場つなぎ」という位置付けだそうです。
日本でも「各種事態に即応」を期待されているのがこの装備です。

機動戦闘車は全部で15両投入されました。

普通科車輌部隊

続いて事態の推移に呼応して2次展開する部隊です。
ここからは履帯装着した車輌の登場となります。

先頭は89式装甲戦闘車。

続く人員輸送用車輌には歩兵を8名ずつ搭載しています。

120ミリ迫撃砲。

96式多目的誘導弾、中距離多目的誘導弾もここに続きます。



施設科部隊は陣地の構築を行うわけですから、
2次展開部隊の一つと考えるようです。

まずブルドーザーを乗せた車。

なんか掘削機みたいなのきたー。

地球の裏まで掘り進めそうな機械です。
正確には坑道掘削装置といい、トンネルを掘るためのものです。

機械の後ろについているベルトコンベアで掘削した土を運びます。

まるでタンクのようですが、これはあの92浮橋。
1セットで最大104m、通過可能重量50tの浮橋を架設できます。

この他にも07式機動支援橋も行進を行いました。

部隊間の通信連絡など、第二次展開に不可欠な通信科部隊

野外通信システムなどの車輌で構成された部隊です。

化学科部隊

放射線などで汚染されている地域でもこれで偵察を行います。
装備品を除染するシステムもここが担当。

NBC偵察車が先頭です。

こちらは化学防護車。
装備展示でもお目にかかりました。
内部は高い機密性があり、空気浄化装置を装備しています。

NBCとは違い、生物兵器の検知は行いません。

ここまで展開したらそろそろけが人も出るでしょう。

ってことで第二次展開部隊には衛生科部隊も含まれます。
現地での治療はもちろん、医療施設への後送を行います。

大きなトラックは野外手術システムだと思われます。

さて、ここまでの展開において、まだ出てきていないものといえば・・・?

そう、戦車ですね。
自衛隊の展開構想においても、戦車はラスボス、
最後の最後で出て来るものという位置付けのようです。

そういえば聞いたことがあるなあ。

「戦車を出さなければならなくなったらそれはもう日本の終わりの時」

「シン・ゴジラ」ではいきなり10式投入してたけど、
あれはそういう意味でもあったのか・・・・。

 

続く。



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1 Comments

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電子戦 (Unknown)
2018-10-18 17:19:29
>これからの戦闘は戦車で撃ち合ったり、ましてや歩兵が突撃することはなく、いつの間にか始まって、次の瞬間勝敗が決まることもあるってことですね。

これは当たっているともいないとも言えます。

陸上であれ、海上であれ、空を飛んでいるもの(飛行機やミサイル)はレーダーで捜索します。大気は電波を反射せず、空中を飛ぶ飛行機やミサイル等の人工物だけが電波を反射するので、反射波があれば、必ず飛行物体がいると判断出来るからです。

陸上で同じく陸上にいる戦車や兵員を捜索する場合はどうかと言うと、戦車等の車両は電波を反射しますが、地形地物(建物)も反射するので、レーダーで捜索しようとしても、反射波ばかりで何が何だかわからない状態になります。

陸上にいる戦車や兵員を探す場合、最も簡単で確実なのは「見に行く」ことです。そのために、斥候、偵察機やドローンを使用しますが、もう一つ有効な手立てがあります。それは敵の通信を傍受したり、発信源を標定(位置を突き止める)する電子戦です。

傍受や位置標定は敵の電波を受信して情報を得るまでですが、さらに踏み込んで電波妨害を行う場合もあります。

パレードに登場する高射特科部隊の短SAMは電波誘導なので、誘導電波を妨害(同じ特性の偽の電波を送信する)するとミサイルはどれが本当の誘導電波かわからなくなり、照準を外すことが出来ます。

戦いの最終的な決着を付けるには、今後も「戦車で撃ち合う」ことや「歩兵が突撃する」ことは必要でしょうが、電子戦によって、より早く正確に敵の位置や意図を知り、味方の航空機の安全を確保するために敵の防空網を無力化することが出来るようになるというのが「クロスドメイン」の考え方です。

近接航空支援(支援戦闘機による攻撃で敵の地上兵力を沈黙させること)を行う場合、敵の高射特科部隊(防空網)が待ち構えていることはほぼ確実です。

電波妨害を受けることは想定内なので、防御側もそれをかわすために複数の周波数を持っていて、妨害があれば、直ちに周波数を変えてかわしますが、より確実に味方の支援戦闘機の安全を確保しつつ近接航空支援を成功させるために考えられたのがEA-6B ProwlerやEF-18 Growler等の電子戦機です。

これらの航空機は敵防空網が使用する電波を受信、発信源を標定しながら、電波妨害を行うことが出来、なおかつ、敵の使用する電波に対してホーミングする対輻射ミサイル(Anti Radiation Missile)を発射し、発信源(=対空ミサイルの誘導用レーダー)を破壊出来ます。

ここまで揃えられれば「撃ち合ったり突撃する前に勝敗が決まる」が実現するので、年末の公表される次の中期防衛力整備計画に機体しています。
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