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ヘリ着艦とEOD〜MINEX・掃海隊機雷戦訓練@伊勢湾

2016-02-14 | 自衛隊

「いずしま」から掃海母艦「ぶんご」への移乗の後、
「いずしま」の出航を見送りました。
移乗してすぐ、メディアは甲板を臨む「袖」のようなところに案内され、
今からヘリの着艦を見ていただきます、と言われました。



甲板上は危険であるうえダウンウォッシュをまともに受けるので、
作業する乗員たちもここで待機しています。

黄色と黒のダイヤ柄の格好をしているのはLSO、管制官で、
ヘリ着艦の時にパイロットに指示を出します。



ここにヘリを拘束するためのチェーンが二組、並べて置いてありました。




交代するヘリのパイロットもここで待機しています。



ヘリが進入してきました。
ほとんど凪とはいえ、甲板が傾いているのがお分かりでしょうか。



写真では分かりにくいですが、ダウンウォッシュの起こす水煙が
ここからも確認できます。



この時点で、甲板上はヘリの猛烈なダウンウォッシュに見舞われました。



その凄まじさは、自然の暴風がコンスタントな強さで吹いてくる感じです。
ぼーっと立っていたら飛ばされてしまいそうなくらいで、わたしは
日よけに被っていた帽子を飛ばされて落としました。
とにかく、これまで体験したことのないような強烈な風力を感じました。



前回の大きなうねりを伴う日向灘の着艦も難なく行うことのできる
海自ヘリパイロットにとっては、今日のようなコンディションでの降着は
目をつぶってもできるイージーモードなのかもしれません。



陸自のヘリの降着を見ていても、必ず後輪から着地しています。
掃海母艦上への着艦は、海面と平行に降りていった場合、
甲板の傾きまではヘリパイには見えないので、この写真のように
まずどちらかの車輪がタッチすることが多いのではと思われます。

自衛隊でもヘリの着艦にはベアトラップという拘束装置が使われますが、
この訓練のように甲板から離発艦を繰り返すような場合は普通に甲板に降ります。



着艦すると、すぐに甲板に機体を拘束する作業が始まります。
先ほど床に並べて置いてあったワイヤをまず甲板に固定。



甲板にワイヤを置き、その先端をまずヘリに装着します。


 
前に1箇所、後ろに2箇所ヘリに固定します。
ここからは分かりにくいですが、作業にあたる隊員は
強烈なダウンウォッシュの中、透明のゴーグルを装着して行っています。



ワイヤが撓まぬようにピンと張って・・。



反対側でも一人が同じ作業を行っています。



ワイヤの先を取り付ける甲板上のフックはここにあるらしい。

 

拘束作業終了。



作業終了して引き上げてくる隊員は、やはり頭を下げて歩いてきます。
これは本能的なものなのでしょうかねえ。

今まで写真だけ見て、「頭を上げても下げても変わりないのに、なぜ」
と漠然と思ってきたのですが、自分が実際にダウンウォッシュの強烈な風を体験すると、
どうしてもローターの下を歩く時にこんな姿勢になってしまうのがよくわかりました。

何しろ、音も強烈ですし、恐怖感はかなりのものです。
慣れている自衛官でもこうなってしまうのも無理はないと思います。



さて、拘束による甲板への固定が終わり、人が引き上げました。

 

パイロットとコパイの姿が確認できます。
機体番号29のこのMCHは、実はもうすぐ退役することが決まっていて、
最後に花を持たせるためにこの訓練に参加したということを
士官食堂で昼食を頂いた時に幕僚が教えてくれました。

もうすぐ転勤になるから掃海隊訓練の最後に「お立ち台に乗せてもらう」
という「いずしま」の乗員がいたように、海上自衛隊という組織は
こういう粋な「情実采配」が行われるらしいことがわかりました。

おそらく29番機がメディアの写真に撮られる機会もこれが最後でしょう。 



ヘリのクルーがドアを開けて甲板に降り立つと、
ヘリ後部から水中処分員が降りてきました。



今さっき、わたしたちが見学した訓練の参加者に違いありません。
彼らの腰には色とりどりの金属環が下げられていますが、
これがファストロープのときにカラビナと接続する器具だと思われます。

クルーは機内からコードを持って降りてきましたが、これは何でしょう。

 

降りてきたのは全部で8名、つまり4組のEODたちです。
ヘルメットは白と黒2色があるようです。



すごい迫力。
今訓練を終えてきたばかりの男たちには、殺気に近いオーラが漂い、
その退路で待ち受けるカメラを一顧だにしない様子にも、
ストイックな「海の男」の近寄りがたい凄みがあふれています。



水中処分員の平均年齢は年々上がっていっているそうです。
確かにこの隊列を見ても、ベテランが多いように見受けられます。

ところで、彼らが隊伍を組んで(自衛隊はいかなるときでも整列行進)
「花道」を引き上げてくる様子を、メディアの一団は待ち構えて、
このように(ちなみにわたしは最前列ではありません)写真を撮りましたが、
彼らが通れるように空けてあった部分に、ずずいずいと出て行く人がいました。

そう、我らが亀爺その人でした。

彼らの引き上げる様子を真正面から撮りたかったのでしょう。
そして、すぐさま「そこどいてください」と甲板係に叱られました。

あとでミカさんが

「あれは絶対にプロじゃない。プロだったらあんな空気読まない動きはしない」

ときっぱり言い切っていましたが、わたしもこのときそう思いました。



EODの一団が引き上げたあと、それと入れ替わるように
カーキ色の軍団が一列になって歩いていきます。



ヘリのクルーも一挙に総入れ替えを行う模様です。
実はこの隊列のひとりを女性と見間違い、あとから

「もしかしたらヘリのクルーに女性隊員はいますか?」

と幕僚たちに聞いてみたところ、わざわざ電話をかけてしかるべきところに聞いてくれました。

「女性クルーはいないそうです」

単に華奢な体型をしているだけの人だったのか・・・。



実はわたしは「いずしま」に乗艦する前に同行の広報隊員に耳打ちされていました。

「ぶんご乗艦後、司令官と一緒に昼食を召し上がっていただきます」

なんてこった!っていうか、やったー!
そのことを嬉々としてミカさんに言ったところ、

「電話でそのこと、もうお伝えしたじゃないですかー」

と呆れられてしまいました。
そ、そういえばそんなことを聞いた気がしてきたな(; ̄ー ̄A 
その直後、例のおじさんが誰だろうという話で盛り上がってしまったため、
すっかり「司令官とお食事」の部分が記憶から抜け落ちていたのでした。

ヘリ着艦を見学した後、行程表には

体験喫食

と書かれているところの昼食時間となり、わたしたちは
報道陣とは違うルートを「ぶんご」士官に案内されてついていくことになりました。
その途中目撃したのが、EODたちの任務を終えた後のほっとしたひととき。




さっき引き上げてきたときとは打って変わって和やかな雰囲気が漂います。
「ウェットスーツ」と「ドライスーツ」の違いを教えていただいたのですが、
背中のジッパーを外して中に見える服を見る限り全く濡れていないので、
これはドライスーツってことみたいですね。



左側にミカさんのカメラが見えていますが、こういうときの
EODの素顔を撮るのも彼女のカメラマンとしての重要なテーマです。


さて、彼女がひとしきり写真を撮り、わたしたちは案内されて
いよいよ司令官とのお食事のため艦内に入って行きました。



続く。