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旅しながら淡々と写真を貼る~洞爺湖ウィンザーホテル

2012-06-05 | お出かけ


洞爺湖にあるザ・ウィンザーホテル洞爺湖に行ってまいりました。
この、三年前にG8サミットが行われたことで有名なホテルを訪れるのは二度目です。

サミット直前の冬、夏の間はゴルフ場になっている斜面で、スキーをするためでした。
息子にスキーを初体験させたのですが、このとき、わたしがかつて考えていた
「スキー」という娯楽に対する、
「ゲレンデまでくれば楽しいが、行き帰りやら宿からスキー場までの交通やら、
板やらスキースーツやらの準備やらの非常にめんどうくさいもの」
という思い込みは見事に粉砕されました。

ホテルの部屋から、ホテルで用意してくれた装備に身を包み、ぷらぷらと外に出れば、
洗練された物腰のイケメンコーチが三つ指ついて待っており、
雪上の最初の一歩から危険の無いようにご指導ご鞭撻が入ります。
雪はさらさらのスノーパウダー、たとえ転んでも痛くも痒くもない最高の雪質、
しかも夏場ゴルフ場であるゲレンデは全く危険の無い斜面。
生まれて初めてスキーをはく息子は、全く転ばずに「スキーって、簡単じゃん」

こんなことでいいのか?何の苦労もせず、滑れるようになった(気がしている)なんて。

その昔、車酔いしながらスキー場に連れて行かれ、民宿の重たい布団と寒さに耐え、
ゲレンデに着けば着いたで、スパルタな父親に強制的にスキー・スクール(三浦雄一郎氏主催)
に放り込まれた幼き日のあの記憶。
納得いかん。

「こんな簡単に楽しく、転びもしないで滑れるようになっていいものじゃないっ」
「いいんじゃないの、何も辛い思いをわざわざしなくても滑れるなら」

とTOになだめられながら?コーチに手取り足とりされている息子の横を、
何か割り切れない思いで滑ったものでございます。


今回は、ホテル開業10周年の記念イベントにご招待いただいての再訪です。
美しき6月の北海道で、地元で取れた素材をふんだんに使った美味しい食事を戴き、
ディナーショーとパーティと、ホテルそのものを楽しむ一泊二日。
楽しみにしていたんですよ~!

スキーの時はタクシーでしたが、今回は車を借りました。
勿論運転はわたしです。
新千歳空港から二時間。

 

一本の道をくねくねと登っていくと、ホテルはそこにあります。
サミットのときは、この道はゲートで閉鎖されていたそうです。

 

山頂にあたかも要塞のようにそびえるザ・ウィンザーホテル。

 

エントランスとその近くにあるバンケット(宴会)棟の、おそらく「新郎新婦用特別室」。
息子「あそこ行きたい!」
「ここで結婚式挙げたら行けるよ」

 

チェックインは、フロントではなく、このようなコーナーでしていただきました。
この「特別扱い感」に凡人といたしましては何とも昂揚してしまいます。
ウェルカムドリンクのこのペパーミントのような色は「ホテル・カラー」なんだそうです。



チェックインのとき記念にいただいた「ホテル・ベアー」。
このクマにも、ホテル・カラーがあしらわれています。
窓に置いて下の景色を撮ってみました。
綺麗に晴れていますが、実は、ここにいる間晴れていたのはほんのわずかの間でした。



すぐに濃い霧がホテル全体を包み、あっという間にこんな具合に。
サミットのときも、じつはここは霧の季節でこんな天候続きだったのだそうです。
でも、各国首脳が皆で記念写真を撮る、その一瞬だけ、奇跡のように霧が晴れたのだとか。
うーん、まるで木村中将が指揮した海軍のキスカ島突入の瞬間のようですなあ。
・・・・って、適切な表現ではないかもしれませんが。

お風呂からはこのように外が見えます。

 

ホテルのウェルカム・ケーキと今回の部屋。
ホテルの御好意でグレードアップしていただきました。

 

このホテルは、景気の悪化が始まった頃の開業であったため結構大変だったそうです。
しかし、今回訪れて全体を見た感じでは、一般的にホテルが経営上苦しいときに、
何となく舞台裏が見えるような、例えばアメニティの質を落としたり、テレビがサムスンだったり、
みたいな部分は(結構シビアな目で見ても)無かったように思います。

レディス・セットの中にはシャワーキャップやコットンのほかに、バスソルト、アロマの湿布、
顔用のまゆ玉など、女性には嬉しい気づかいを感じさせる小物がぎっしり詰まっています。

さて、ここでディナータイム。
10周年記念特別メニューでございます。

 

ここに来る途中で北海道名物ホッキ貝などを食べてしまい、
「ホテルのディナーのために控えめにしておこう」と理性を働かせたわたしと違って、
「目の前に出されたものは美味しく頂いてしまう」という習性を持つTOは、
5時半からのディナーのとき全く食欲が湧かず、失礼にもシェフに
「ポーションをできるだけ小さく」などとお願いしていました。

 

しかし、見ていただければわかると思いますが、ほとんどが野菜中心。
(シェフもきっとポーションを小さくしようがなかったでしょう)
しかしまた、この野菜が異常に美味しかったです。

レストランの方が胸を張っておっしゃるには
「契約農場から取れたての新鮮な野菜が届くので、東京の有名レストランで出すような
どんなに新鮮でも一日二日経っている野菜とは全く味が違う」
だそうです。

これは全く、「そういう野菜を食べたことが無ければ理解できない美味しさ」で、
自称「野菜グルメ」のわたしには感激のディナーでした。

デザートのアイスクリームは、見ただけでは分かりませんが、お味は実に「アジア風」。
不思議な香りは「八角」を使っていたからでした。

 

さて、それから本日のメイン・イベント。
実はこの10周年記念プラン、

加山雄三トーク&ライブショー

がついてくるというものです。
加山雄三ねえ。ふーん、ってな感じではあったのですが、何といっても戦後の大スター。
一度は聴いておくのも話のタネになるかもしれないわねえ、くらいの態度で臨みました。

 

ところがなんと、ご招待くださったホテルのとっても偉い方が、ピアノの前、つまり、
最もステージに近い「砂かぶり」に席を取ってくださったのです。

おまけに、四人一組の同席になったお二人というのが、
「何とか君(偉い人)とはKOの同期でしてねえ」
とおっしゃる、見るからに実にゴージャスな雰囲気の初老の御夫婦。
我々は若輩者ゆえ「ははー」とばかりにかしこまってショーを観ることになりました。

それにしても。
よかったですよ~。加山さん。
出て来たとたん、わたしのような奴は心の中で、

「滝司郎大尉だ~!」
「下川大尉だ~!」
「新井記者だ~!」
「広瀬中佐だ~!」

と加山さんの出演した戦争映画の役名が頭にちらついてしまっていたわけですが、
(『太平洋の翼』のときの加山雄三って、それにしても、美しかったですねえ・・・・)
なんと、加山雄三は、本業歌手だったのだ。
もう御歳七五歳とはとても思えないハリのある「加山声」で、次々とヒット曲を歌うわけですが、
全く興味の無いわたしでもほとんどの曲を知っていた、というあたりがさすがの大歌手。
そして、全盛期を知らないわたしはその伝説も知らなかったわけですが、
後から調べると、加山雄三とは実に多才な人らしいですね。

大俳優の息子にして歌手、作曲、作詞、ギターを弾き、ピアノを弾き、絵を描き、
そしてスポーツ万能、最近はゲーマー(笑)としても有名だとのこと。
ついでに、明治の元勲岩倉具視の子孫!

こういう「スター」というのは、もう説得力と魅力の塊りのような存在で、
たとえお腹がかなり出っ張っていて、髪も薄く、もの凄いシークレットブーツを履いていようとも、
ひとたびマイクを握れば皆を否応なく惹きつけてしまうことがよくわかりました。

ショウが始まったときこそ、滝大尉の頃とは随分変わってしまったのねえ、などと、
時の流れの残酷さを思わずにはいられなかったこのわたしも、加山さんが、あの声で歌い、
シナトラそっくりの英語で「オーバー・ザ・レインボウ」や「レット・ミー・トライ・アゲイン」
などと聴かせ、ギターを奏で、ピアノで「エリーゼのために」や「自作のピアノ協奏曲」などを
演奏しているのを聞くうちに、すっかりこの大スターの魅力に幻惑?されていました。

裕次郎の映画を観たときも思いましたが、スターにはスターになるだけの理由があるのだと、
その生ける証左を実際に間近で見て納得したわけです。

だからといってこの日以来ファンになったってわけでもないんですが(笑)

 次の朝。

せっかくアップグレードしていただいた部屋を楽しむために、朝食はルームサービス。

 

見た目は普通のホテルの朝食ですが、全てが素晴らしかったです。
サラダはまさに「採れて三時間以内のもの」。
他のホテルのサラダのように、ドレッシングをかけさせるような野暮なサラダではありません。
ほとんどつけ加えた味が無く、ホテルの方の言う「野菜を苛めない料理法」で、
実にあっさりと食べさせてくれます。

右写真は、はんぺんではなく、いつものように注文したホワイトオムレツ。
いろんなところでホワイトオムレツを頼んできましたが、このように
極限まで泡立てた白身をスフレ状に焼いて作ったオムレツは、初めてです。

そして、大抵のホテルのルームサービスでは「普通」のこのトースト。
トースターを持ってきてくれるので、それで自分の好みに焼いていただくのですが、
信じられないくらい香ばしいパン、コクのあるバター、そしてジャムとキャラメルソース。
掛け値なしに今までのベストのお味でした。
(因みに、朝食としてはお値段もベストクラスでした・・・・・)

チェックアウトは一般は12時。
「もしお時間があれば何時まででも夕方までご滞在ください」
とまで言っていただいていたのですが、残念ながら飛行機の時間があるため、
12時、つまり普通どおりににホテルを後にしました。残念。

たった一泊の滞在でしたが、豊かな自然と美味しい食事、そして大スターのショーと、
実に密度の濃い時間でした。

 

「何かの記念日のときにまた来たいね」
といいつつ、ホテルを後にしました。



ロビーの大理石に見つけた、アンモナイトの化石。