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日本のオケのコンサート

2014-05-10 10:25:08 | 詠里庵・新着案内
に行きました。一ヶ月近く前の話ですが。

 東京交響楽団の定期演奏会はこのたび音楽監督に就任するジョナサン・ノットの指揮で就任披露演奏会として行われました。曲は武満徹の「セレモニアルー秋の歌-」(約10分)とマーラーの交響曲第9番(1時間20分強)の2曲。前売り案内の通り休憩なしで演奏されました。
 1曲目の「セレモニアル」の笙の独奏は初演のときと同じく宮田まゆみ。この曲は小澤征爾指揮サイトウ・キネン・フェスティバルのオープニング曲として1992作曲され、同年初演されました。冒頭、無音の静寂に笙の音が1音、また1音、ゆったりと重なって行き、密集したトーンクラスターが形づくられます。それを引き継ぐオーケストラの響きが全く違和感なく自然に繋がり、ノヴェンバー・ステップスより一層和洋が融けこんでいると思いました。ノットのしなやかな指揮棒はそれを見事に引き出し、東京交響楽団は十分に応えていました。やがて重なる弦中心の和声と管の彩りは、次の演目のマーラーを予感させるものでした。納得の行くこのプログラミングは、日本のオーケストラの音楽監督となるノットの並々ならぬ意欲を感じさせるものでした。
 そしてマーラーの第九。このところマーラーの交響曲のCDをたて続けに出しているノットの就任披露です。新聞紙より大きく見えた武満の楽譜を指揮台もろとも外して完全暗譜。前の曲のときにも増して、剛体であるはずの指揮棒が軟体動物のようにくねります。チェコフィルの音源で聴いていたこの曲が、まるで別の曲とまでは言いませんが、随分違って聞こえました。興味深いのは、楽器配置がいわゆる対向配置でした。手前左に第1バイオリン、右に第2バイオリン、少し奥の中央左にチェロ、右にヴィオラ、コントラバスは最左、最右にハープ2台、奥全体に木管、さらに奥右よりに金管、一番奥に打楽器。マーラーの指定でティンパニは2人。こうすると弦のステレオ感もさることながら、この曲は第1と第2バイオリンが対位法的局面が多いのでその空間分離効果も抜群。1階の後ろ間際で聴いたにもかかわらず、ステレオ感が楽しめました。なおこの配置は1曲目の武満のときから同じで、配置換えしませんでした。(配置換えするなら休憩が必要だったでしょう。)
 第1楽章は田園風景を歩むようなニ長調の楽想がやさしくふくよかに演奏されました。第2楽章はもっさりしたレントラーがときにスケルツァンドになります。速い第3楽章はかなりの迫力。最後のせき込みは指揮者によくオケが付いていったという感じ。そして最終楽章はあの暖かい、変ニ長調の弦楽合奏です。最後は至福のうちに死を迎える。この演奏を聴き終わって、この第4楽章のために第1~3楽章がお膳立てしたように思いました。音が消えた後の長い長い沈黙もまだ音楽のうちです。その「沈黙の終止」のあと、これも長い拍手。もちろんこのあとありきたりのアンコールで雰囲気を変えてしまうわけには行かない。長い長い拍手が自然に収まるままに演奏会は終わりました。

ジョナサン・ノット。また聴きに行きましょう。
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