「あしあと」残り3篇のあらすじ

2014年08月22日 | 健康・病気

「影」
アパレルメーカーの業界では中堅クラスの株式会社サンロード三代目の社長高原毅は、
2人の妾を囲っていた祖父、妻に存在を認めさせた愛人に銀座のクラブを持たせていた父を、
反面教師としたためか、女道楽などには目もくれない堅物で通っていた。
そんなふうだった高原に周囲が世話を焼いて、降るほどの縁談が持ち込まれた。
しかし、彼はつぎつぎにはねつけつづけた。
そんな高原も老舗旅館の娘の由起子という人の見合い写真を見て、即座にこの人だといった。
2人にはなかなか子どもが生まれなかったが、3年めにして由起子は身籠った。
生まれた子どもは美保子と名付けられた。
美保子が小学校に入った頃、由起子は陶芸教室に通い始めた。
そこで知り合ったオーストラリア人の英会話教室の教師と不倫の関係になってしまい、離婚ということになった。
それ以後、62歳で不慮の死を迎えるまで高原は再婚しなかった。
高原は一般女性への根深い不信と憎悪にとらわれつづけているようすだった。
そこから生まれてくるものと思われる頑迷と偏屈ぶりは、一粒種となった美保子の育て方の上にも、如実に現れた。
ここまではほんの導入部です。
このあと小説はとんでもない展開になります。

「封印」
棚田で草取りをしていた杉本茂夫と長男の嫁の房子の上を、3機のグラマン戦闘機が飛んできた。
茂夫の女房米子は2歳になる孫の面倒を家で見ていた。
米子は腎臓がわるく、脚にむくみが出ると野良仕事を休むようになっていた。
長男の稔は兵隊に取られていた。
3機のグラマンはそろって急角度に機首を下げてあっというまに機銃掃射がはじまった。
銃弾が空気を切り裂く音の中で、青々と伸びている稲の葉がちぎれて舞った。
茂夫と房子は畦のすぐ脇の雑木山の中に逃げ込んだ。
雑木の根方にうずくまった房子に茂夫も肩を並べてうずくまった。
機銃掃射はやまなかった。
木の幹のはじける音と、枝が撃ちとばされる気配が間近でつづいた。
茂夫が房子の肩を引き寄せて、背中におおいかぶさった。
おまえは真一の母親だから、おれが弾丸(たま)よけになる、と茂夫が房子の耳元で叫んだ。
房子はお父さんと叫び返して、茂夫の腕をつかんだ。
銃撃は終わった。グラマンは飛び去っていった。
そのあと、実直な農夫の茂夫と貞淑で純朴な女だった房子は、とりかえしのつかないことをしてしまう。
あとひと月余りで、日本がその戦争に敗れることになるというときのことだった。
房子は妊娠してしまった。
そして、長男の稔が復員してきた。

「あしあと」
何人もの男につぎからつぎへと目がくらんだせいで、
行方の知れない筏で漂流するようにして、本州の西側から東側まで流れついた女の話。

せっかくなので「あしあと」の短編全部のあらすじを書いてみました。
あらすじといっても全部ではありません。
小説を読んでいくととんでもない展開が待っています。

コメント
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