Luna's “ Life Is Beautiful ”

その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

教育基本法「改正」 与党協議会の内容

2006年11月30日 | 一般
今週に入って、毎日新聞では教育基本法についての詳細な記事は見ません。毎日新聞にとっては「新教育基本法」は成立しているのです。11月26日付朝刊には、次のような記事がありました。

--------------------------

教育基本法改正案 今国会、成立へ

安倍政権が最重要法案と位置づける教育基本法改正案は、今国会中に成立することが確実となった。12月15日までの国会会期内の成立が濃厚だが、野党は政府のタウンミーティングの「やらせ質問」問題などで攻勢を強めており、集中審議などを通じて実態解明を迫る可能性もある。

その場合でも政府・与党は会期を小幅延長してでも成立させる方針だ。教育基本法は1947年の施行以来、初めて改正される。

改正案は、先の通常国会を含めて衆院で106時間審議され、今月16日の衆院本会議で野党4党が欠席するなか、与党の賛成多数で可決され衆院を通過。17日に参院で審議入りし、22日には野党も審議復帰した。参院では「公聴会を含め70~75時間」(参院自民党幹部)がメドとされる。

すでに参院教育基本法特別委員会で12時間を消化。政府・与党は「27日から1週間ごとに26時間審議すれば採決の要件を満たす」(同)として12月上旬の成立を狙う。

--------------------------

「公聴会を含め70~75時間、審議すれば採決要件を満たす」ので「1週間に26時間審議すればいい」、すでに「12時間を消化している」のだそうです。ではどのような審議が行われているのでしょうか。元中央教育審議会臨時委員によるこのような報告があります。市川昭午さんという方で国立大学財務・経営センター名誉教授といった肩書きの人です。市川教授は、与党協議会に参考人として出席されました。審議内容の実態を明らかにする貴重な証言です。これはぜひ知っていただきたいのです。

--------------------------

中央教育審議会答申(2003年3月20日)以後3年近くにわたって難航を続けていた自民党と公明党による与党協議会は2006年4月13日に最終報告をまとめた。政府は4月28日に報告をほとんどそのまま改正法案として閣議決定し、第164回国会に上程した。それを受けた衆議院は35名からなる特別委員会を設置、5月11日から6月15日にかけて委員会を計13回開催した。

審議は秋の臨時国会に持ち越されたものの、成立する可能性は高いと考えられる。というのも何しろ超党派の議員連盟である教育基本法改正促進委員会のメンバーが、衆議院248名、参議院130名といずれも過半数を超えるなど、改正派の議員が圧倒的多数を占めているからである。

委員会の審議時間は約49時間50分にも及んだが、その割には実りのある議論は乏しかった。

その理由の第一は本気で討議しようという空気が薄かったことである。私は参考人として呼ばれたが、自民党と民主党の委員から、貴方は改正不要論だから質問しないと宣告された。これでは何のための参考人なのか。そもそも自分と意見を違にする者とは議論しないというのでは国会は何のためにあるのか。考え込まざるを得なかった。

第二は教育基本法の改正とは直接関係のない議論、まったく関係のない議論が多かったことである。これは中教審の審議も同様であったが、教育の議論となると、とかく自分の教育哲学と学習体験を語る人が多いからである。

第三は同じ内容の質問と答弁が繰り返されたことである。これは民主党だけでなく自民党の中でも意見が分かれているためである。

改正派の委員は、占領軍による押し付け、社会規範の欠如、法文の不備、日本国憲法と同様に原理自体が問題などといったことを改正が必要とされる理由としたが、現行法にどのような具体的な不都合があるのかについて明確な説明はほとんどなかった。またそうした改正理由はいずれも政府が採りうるものではなかった。というのも、それは政府がこれまで嘘をついてきたことになるか、50年にわたる自民党政権の責任を問うことになるからである。したがって、中教審答申と同じく、政府の公式見解は時代対応論以外にはありえない。しかしそれは「これは時代の流れだ、ひと言でいえばそうなる」(文部科学大臣答弁、5月26日)といった漠然としたものでしかなかった。

改正案文で議論が集中したのは、
① 政府案第2条の愛国心教育、
② 第15条の宗教教育、
③ 第16条の教育行政権限の条項だった。
この三つに共通するのは、国家権力と個人の思想信条の自由との抵触が問題とされている点である。そのいずれに関しても政府は国民の内面に踏み込む意図などは毛頭ない旨を答弁していた。それ自体は結構なことであるが、そういう説明を聞けば聞くほど、なぜ改正が必要なのか、ますます分からなくなる

政府が、国民の反応や憲法との抵触を怖れて改正の意図を率直に述べなかったのか、そうでなければ今回は法案の内容よりも改正そのものに意味があると判断しているか、そのいずれかであろう。



市川昭午(いちかわしょうご)・記、06年8月 「なぜ変える? 教育基本法」より

--------------------------

やはりまともな議論は尽くされていませんでしたね。町村元外相は「審議は十分尽くされてきた」といっていましたが、その内容と言うのは以上の通りです。「改正ありき」の審議だったわけですね。安倍さんが執拗に主張する改正理由はみな、「自民党政権の責任問題になるもの」です。それを回避するために「時代は変わった」と言われるのです。また、「国民の内面に踏み込む意図がない」のであればどうして「社会規範」を盛り込んだ道徳律となるのか、またそういう意図がないならなぜあえて改正しなければならないのか。

みなさんはどうお感じになったでしょうか。市川参考人は、「政府が、国民の反応や憲法との抵触を怖れて改正の意図を率直に述べなかったのか、そうでなければ今回は法案の内容よりも改正そのものに意味があると判断しているか、そのいずれかであろう」と推測されています。みなさんはどちらに思えますか。

すでに共謀罪の議論が上ってきているのですが…。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする