人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

所得再配分の最適化・・・ベーシックインカムの是非

2016-06-19 10:51:00 | 時事/金融危機
 

親戚の結婚式があったり、娘が盲腸で入院したり、はたまた浦安で祭りがあったりと・・・いろいろ忙しく、すっかり更新が滞っておりました。申し訳ありません。

さて、市場は激しい動きをしていますが、日本株の暴落や世界的なバブル崩壊まではまだ時間があるでしょうから、本日はベーシックインカムを取り上げてみます。(自分の勉強用)


■ ベーシックインカムとは・・・ ■

ベーシックインカムの是非を巡りスイスで国民投票が実施されました。結果は過半数の支持を得られずに否決された様です。スイスは「直接民主制」の伝統を残す国家なので、日本ならば「ベーシックインカム法案」が国会に提出され「与党並びに公明党の反対多数で否決」みたいな状況でしょうか・・。「国民投票」という事態で必要以上にクローズアップされた感は在りますが、しかし一方で世界ではベーシックインカムの効果を真剣に検討する気運が高まりつつあります。

■ AIやロボットに仕事を奪われる? ■

スイスのベーシックインカムの賛成派の中には「これからの時代、AIやロボットに仕事を奪われて生活出来なくなるかも知れない」という不安を抱いている人も少なからず居る様です。

確かに金融取引などはかなりの部分でプログラムによる取引が拡大しており、将来的にはAIなどに仕事を奪われる可能性は否定出来ません。製造業も同様で「生産性の向上」の多くが自動化による人件費の削減によって達成されています。

今後、ビックデータの活用などにより、これまで人の経験やセンスなど数値化出来ないと思われていたスキルがコンピューターに置き換えられて行く事も遠い未来では無いはずです。

一部の人間がAIや自動機械を使役して莫大な富を得る一方で、仕事を失い明日の生活もままならない人達も増える・・・そいなSFの様な日常が実はすぐそこまで迫っているのかも知れません。

■ AIやロボットに仕事をさせるという考え方 ■

一見悪夢の様な未来ですが、考え方を180度反転すれば天国の様な未来に代わります。

「AIやロボットに仕事をさせて、その成果を国民が等しく分け合えば仕事をしなくとも生活出来る」・・・ベーシックインカムを実現すればこんな夢の様な未来も実現できると主張する人達も居ます。

「そもそも人は何の為に生きるのか、仕事をする為では無い」と考える人達もベーシックインカムを支持します。

尤も彼らの考える「働かなくて良い世界を実現するベーッシックインカム」は幻想に過ぎません。AIやロボットを使役して利益を出す企業に高額の税金を課さなければ実現しないからです。Aiやロボットを使役する企業は人間の労働力の質を問いませんから、この様な企業は率先して途上国やタックスヘブンに本社や工場を移転するはずです。

結局「怠け者」の妄想するベーシックインカムは「夢物語」でしか有りません。

■ 国家の社会保障を一元化してもベーシックインカムで生活する事は不可能 ■

ベーシックインカムが実現可能か、ちょっと乱暴な計算をしてみます。

現在日本の社会保障費は31.5兆円です。日本の総人口を1億3000万人として単純に割り算すると一人当たり23万8千円となります。月額2万円。

生活保護の月額支給額が8万円、国民年金の基礎年金が6万円ですから月額2万のベーシックインカムでは生活出来ない・・・。家族が4人居れば8万円になりますが、老人世帯は二人暮らしや独居が多い。生活保護を受ける人も一人暮らしが多いでしょう。

ただ、年金会計に関しては厚生年金も国民年金も国家予算と別会計になっていますから、これが全て無くなる訳では無く、年金の独自会計分は現状維持で、税金負担分がベーシックインカムによる追加となるので、高齢者世帯の年金額を現状とそれ程変わらないでしょう。

困るのは生活保護世代です。現状の8万円が2万円になったら飢え死にする人も出るでしょう。

■ ベーシックインカムの本質は「働かざる者食うべからず」では ■

現在生活保護世帯が生活保護を受給する為には「働け無い事」が前提になっています。車や家屋の保有も認められていません。要は、「資産が無い」「仕事も無い」人でなければ生活保護は認められないのです。

一方、ベーシックインカムの本質は「所得補助」制度で、働く事を前提としています。母一人、子供二人の母子家庭世帯で母親の所得が月額15万円の場合、これが21万円になれば生活はずっと楽になります。

反対に現状の生活保護世帯では下手をすると8万円の月額支給額が2万円になるのですから当然働かざるを得なくなります。ベーッシックインカムが導入されれば生活保護受給者の多くが就労を余技なくされ、それでも不足する金額を「新たな生活保障制度」で補う事になるはずです。

■ 行政コストの削減にはならないだろう ■

ベーッシックインカムの最大のメリットは行政コストの削減だと言われています。社会保障の診査や給付に掛る労力は少なくは在りませんから、これが単純化すればコスト削減になるというのがベーッシックインカムを支持の大きな理由になっています。給付設定の恣意性も無くなります。(生活保護の口利きが一部正当の利権となっている事はあまり知られていません)

しかし、上述の様に、実際に生活保護に相当する人達には何等かの補助的な支給が必要な訳で、この点で行政コストが削減できるとは思えません。又、年金制度も継続されるならば、そにれ掛る労力もそれ程削減できるとは思われません。


■ ベーッシックインカムとフラットタックス ■

行政コストの削減という意味においてベーッシックインカムとセットで議論さるフラットタックス。

フラットタックスとは所得税の税率を所得に寄らず一律にするとういう制度で、ロシアなどは所得税は一律13%の個人所得税に一本化されています。この結果ロシアでは税収が増えました。

現在日本は累進課税が実施されており、高額所得者の最高税率は45%です。尤も、高額所得者はあの手この手で節税をしていますから、むしろ税金逃れによってフラットタックス導入よりも少額の税金しか納めていない高額所得者は富裕層は意外に多いのかも知れません。ロシアの成功例はこうした節税を封じた事も原因しています。

一見、メリットの多い様に見えるフラットタックスですが、低額所得者には課税強化となります。年収200万円の人が10%の所得税を納めると税額は20万円になります。

・・・・あれあれ、この金額とベーッシックインカムの金額が似ていますね。実は諸々の控除により日本の最低課税所得は280万円程度です。これに10%の課税をすると28万円の所得税が発生しますが、最初の乱暴な計算の年額24万円のベーッシックインカムでほぼ相殺されます。

■ 高額所得者に有利なフラットタックス導入の為の飴? ■

ロシアの様な国では、高額所得者にあまり高い所得税を課すと、資金はタックスヘブンに流れたり、アングラマネー化する可能性が高い。これらの資金隠しには当然それなりのコストが掛りますから、フラットタックスによる課税額がこれを下回れば、地下に潜っていた所得を炙り出す事が出来るのかも知れません。

一方、日本においては所得捕捉率に根本的な問題が在ります。俗に「クロヨン」と言われる様にサラリーマンの所為は9割、自営業は6割、農業は4割しか補足されないなどと噂されます。実際に儲かっているのに赤字決算にしている自営業者は沢山居ます。

この様に日本の所得捕捉率が低いのは、マイナンバー制度(納税者番号制度)が整備されていなかった事が原因です。今後マイナンバーの普及とその活用で所得捕捉率が高まれば税収は今よりも確実に増えます。

一方で政治に影響力の有る富裕層は必ずや最高税率を下げる事や、或いはフラットタックスの様な制度の導入を求めて来るはずです。(タックスヘブンに資金逃避させたり、国籍を海外に移すなどの手も有りますが・・・)

この時、国民への飴としてベーッシックインカムの導入がセットで検討される可能性が有ります。フラットタックスを導入しても税率のあまり変わらない中間層はベーッシックインカムに賛成する人も多いでしょう。

■ ヘリコプターマネーとしてのベーシックインカム ■

ここまでの考察はベーッシックインカムの財源が従来の社会保障費とほぼ同額と過程して来ました。

しかし、最近俄かに注目を集めている「ヘリコプターマネー」とベーッシックインカムを結び付ける議論も出て来るでしょう。

「政府がお金を刷って国民に配る」というヘリコプターマネーですが、その経路には大きく分けて3っつ有ります。

1) 公共事業を拡大して間接的に国民にお金を配る
2) 補助金や給付金を厚くして、貧しい世帯を中心にお金を配る
3) 全国民に平等に一定額のお金を配る


1)と2)の組み合わせは現在も行われていますが、財源は税収なのでその額には限りがあります。

3)も小渕内閣が「地域振興券」という名で実施しました。15才以下の子供が居る世帯に一律3万円の「商品券」を配り、その財源は国が補償しました。一見、政府通貨の様に思える「地域振興券」ですが財源は税金から捻出されているはずです。(尤も赤字国債で賄ってはいますが)

小渕内閣の地域振興券で景気が回復したかと言えばNOです。地域経済もその後も衰退し続けt下います。一過性のお金を配った所で、一時的な消費が増えるだけですし、間接的に貯蓄が増えるだけです。

そこで、現在議論されているヘリコプターマネーはもっと大規模なものです。しかし、ただでさえ財政赤字の日本で、ヘリコプターマネーを実施すれば赤字が拡大する事は目に見えています。

しかし、現在の様に10年債までがマイナス金利となっている状況では、「国債を発行すれば赤字が減る」という異常な状況が発生します。様は現在の日本ではヘリコプターマネーが実現するのです。

■ テールリスクを拡大するヘリコプターマネー ■

一見「皆ハッピー」に思えるヘリコプターマネー(ベーシックインカム)ですが、この政策によって景気が回復すると長期金利が徐々に上昇を始めます。

金融機関は手持ちの国債に含み損が発生するので、あわてて国債を手放すでしょう。ここにおいて国債の買い手は日銀しか居なくなります。こうなると、どう見ても「財政ファイナンス」となるので、為替市場で円の下落が進行します。エネルギーを始め輸入物価が上昇し、国内物価を押し上げる事で悪いインフレが加速し、どこかでコントロールを失います。

結局、財政規律の緩んだ国家は高率のインフレによって事実上の財政破綻を来し、国民の貯蓄が価値を失う事で、増税せずに「インフレ税」によって国家の債務を帳消しにして来ました。(これは内国債のケースで、アメリカの様に海外が国債の買い手の場合はデフォルトで借金をチャラに出来ます)

結局、フリーランチは無い事を世界の人達は知る事になりますが・・・もし財務省や政府が財政拡大路線に転じたとなれば、それは近い将来に「インフレ税」を徴収する下準備なのかも知れません。


ベーシックインカム制度は設計によっては人々の幸福を達成するかも知れませんが、国債増発による安易な導入は結果的には国民の負担となって私達を不幸にします。

尤も、私達若い世代にとってガラガラポンは、世代間の所得移転を意味するので、貯蓄が沢山有る方意外は心配する必要は無いのかも知れません。

プライマリーディラーを返上した三菱東京UFJ・・・誰の差し金か?

2016-06-10 03:04:00 | 時事/金融危機
 
■ 日銀・財務省に反抗? ■

三菱東京UFJ銀行が日本国債のプライマリーディラーを返上したと話題になっています。かつては日本国債市場で絶大な存在感を発揮した三菱銀行ですが、現在は日本国債の保有を圧縮しているので市場への影響は実際にはほとんどありません。

「マイナス金利に抵抗」といったニアンスの報道が目立ちますが、はたして日銀・財務省にメガバンクと言えども逆らう事が出来るのでしょうか・・・。

陰謀論的にはしっかりと調整された上での行動だと見ています。

■ ヘリコプターマネーーを牽制? ■

ポピュリズムに徹する安倍政権は消費税率引き上げを先送りし、さらには国債発行益が得られるマイナス金利を利用して財政拡大路線に舵を切る可能性が大きい。海外の経済学者らがヘリコプターマネーの導入を示唆している事から、市場も期待を高めています。

確かにアベノミクスがスタートした2012年前半は大規模補正予算の効果が出て景気が一時的に回復しました。補正予算の規模が10兆円程度ならば景気回復の効果が剥落するのは早いのですが、さらに20兆円、30兆円ともなると「偽りの景気回復」の効果も高まって行きます。さすがに景気が回復局面が長期化すると長期金利がこれに反応して金利に上昇圧力が掛ります。

こうなると現在の日本国債のマイナス金利、さらには長期国債の低金利が維持出来なくなります。国債と財政の継続性を重視する財務省とすれば金利に影響を与える様な景気回復は由々しき問題です。金融抑圧政策の維持が困難になるからです。

景気回復の鎮静剤としての「消費税増税」のカードは温存しているものの、やはり財政拡大によるヘリマネ政策は牽制したい所。

一見、日銀を牽制しているかに見える三菱東京UFJ銀行のプライマリーディーラ返上ですが、国債の需給悪化を想起させる事で実は安倍政権を牽制しているのかも知れません。


■ 日本国債の購入の27%が外国人 ■

マイナス金利で日本の金融機関や証券会社は日本国債で利益を出し難い状況になっています。3メガバンクを始めとして日本の金融機関は国債市場から締め出されています。

一方で、日本国債の外国人の購入比率が27%に達したとの報道が示す通り、海外勢は円高進行でマイナス金利でも利益が出せます。

■ 今は良くとも・・・ ■

「日本国債の保有は国内が大半だから海外勢の売り浴びせに耐性がある。」とは三橋氏周辺で以前より主張されていた事ですが、ジワジワと市場での外国人投資家の存在感が拡大しています。

もちろん最大の買い手は日銀ですが・・・海外勢の売り浴びせを日銀が買い支えるなんて状況が発生すると流石に為替市場が反応しそうな予感も。現在の円高が円安に一気に振られると日本株も投げ売りされます。

タイミング的には新興国のバブル崩壊と同時と見ています。「アジア通貨危機」のアジアの中に今度は日本も入るのか・・・?


■ 裏の裏・・・ ■

ところで三菱東京UFJ銀行を動かしたのは誰か?

黒田総裁の政策に反感を持つ日銀プロパーだとも噂されていますが・・・意外にも日本売りを仕掛ける人達とも目的は正反対ながら利害が一致しているのかも知れません。

獅子身中の虫の腹の中にも虫が・・・妄想は止みません・・・。

水郷地帯を行く②・・・「日本一美味しい味醂」と「日本一まずい日本酒」

2016-06-09 06:21:00 | 自転車/マラソン
 

■ 醸造の街 佐原 ■

前回に続き、佐原の街を行きます。

伊能忠敬旧宅から小野川をさらに遡ると古い土蔵群が現れます。





この味のある建物は「与倉屋大土蔵」と呼ばれていますが、かつては醤油蔵だったそうです。昨日も書きましたが、北総の大稲作地帯の真ん中に在り、利根川水運で大消費地の江戸と繋がっていた佐原や神崎は日本酒や味噌、醤油の一大産地でした。往時には佐原だけで酒蔵が35件、醤油蔵が14軒もあったそうです。今では醤油蔵は委託製造(大手の下請け)の1軒を残すのみとなっています。

現在、与倉屋の土蔵はイベントやコンサートの場として利用されている様です。倉の内部は柱を極力排した「小組作り」という構造で、梁が複雑に組み合わされています。ネットに写真が紹介されていたのでお借りします。



■ 小野川沿いは振るい建物の博物館 ■

かつて「お江戸見たけりゃ佐原においで」と言われた「小江戸・佐原」。今でも小野川沿いには江戸時代や明治初期の建物が多く残されています。



こちらは明治元年に建てられた白壁の土蔵。現在はギャラリーとして使われています。



忠敬橋の袂で今も営業を続ける中村屋商店は安政2年(1855年)の建築。荒物屋さんです。



その向かいにある祖老舗蕎麦やの「小堀屋本店」。昆布を練り込んだ真っ黒な「黒切そば」が有名ですが、いつも行列していて入れません。



小堀屋の並びは古い建物が何軒か並んで残っています。



小腹が空いたので、小堀屋の前のジェラート屋さんでちょっと買い食い。



これ何だか分かりますか?何と、「醤油ジェラート」。うっすらと香る醤油の匂いとほのかな塩味がなんとジェラートに良く合います。一度食べる価値はあるかも。

■ 「日本一の味醂」 ■

かつて30軒以上軒を連ねていた佐原の酒造も現在は2軒を残すのみとなっています。その一軒の馬場本店は忠敬橋から100m程県道を進んだ先に在ります。かつて勝海舟が一カ月逗留した事も有るという老舗です。



煉瓦の煙突が時代を感じさせます。蔵の見学は問い合わせとなっているので、予約が必要ですが、敷地内には自由に入る事が出来ます。昔の酒造道具が展示されています。





勝海舟にちなんだ大吟醸酒も有りますが、何と言っても馬場本店で有名なのは「日本一美味しい味醂(みりん)」。

国産もち米100%で昔ながらの製法で作られる味醂は宮内庁御用達で、腕利きの料理人達にも人気の一品。糖類を添加していないので、サラリとした上品な甘さとクセの無い香りが特徴です。お土産に2本買ってリュックに詰めます。



■ 南部杜氏の頭領が醸す大吟醸、「東薫酒造」 ■

馬場本店から数軒先に「東薫酒造」があります。千葉では割とメジャーな酒造で、大吟醸の「叶」は百貨店でも売られる大吟醸の名酒です。東薫酒造は先般、JR東日本の千葉県キャンペーンのポスターにもなっていたのでご記憶の方もいらっしゃるのでは?

コンクリート製の煙突は「東」の字がかろうじて読み取れる状態。



実は東薫酒造さんは酒蔵を予約無しで見せてくれる良心的な酒造さんです。30分に1回程度行っている様ですが、今回は私一人だけ。サイクルジャージでは失礼かと思いました、快くOKしてくれました。

蔵の入り口は「にじり口」になっています。外部の空気をなるべく入れない様にする配慮でしょうか。



蔵の中はヒンヤリと涼しく、薄暗いので慌ててサングラスを外します。巨大な鉄製の醸造タンクが並んでいますが、内部はホーロー引きになっています。これ一本で一升瓶で3700本以上入るそうです。落ちたら文字通り「酒に溺れ」そうです。

説明してくれたのは入社1っか月目の可愛らしい女性社員。カンペを見ながらの初々しい説明でした。(サイクルジャージ姿の怪しいオヤジに御付き合い下さり有難うございます。)



展示室には東薫酒造の数々の種類の日本酒が展示されています。一押しはやはり「大吟醸 叶」。南部杜氏400人を束ねる名杜氏の及川恒男氏の力作です。兵庫県産の山田錦を35%まで磨いて作られる大吟醸は「日本新酒品評会」の金賞を15回受賞しています。

東薫酒造のネットから宣伝文句をお借りします。

「味・香り・すべてにバランスが取れた芸術的な酒。淡麗でまろやか。馥郁(ふくいく)とした香りが口中に広がり、飲む程に吟醸酒の風格が漂う。」





この蓋は「もろみタンク」の上部。この床下に巨大なタンクが並んでいます。作業の安全の為に総床張りとなっています。








床下に並ぶ巨大なもろみタンクですが、その周りをビニールホースがグルグル巻きにされています。これは及川氏が考案したもろみの冷却装置で、ホースの内部に2℃の冷水を通してもろみを冷却します。





こちらはもろみを搾る圧搾機。槽と呼ばれる装置で、この場所は槽場(ふなば) と呼ばれます。古い槽は現在は「叶」を搾る時だけ使用されるそうで、搾り加減で味が変わってしまうので、慎重に作業は進められるとか。



こちらは近代的な圧搾機で、一度の大量のもろみを搾る事が出来ます。



蔵の出入り口近くには「洗い場」があります。ここで洗米をしてからお米を蒸します。精米は精米所で指定の精米歩合にされて納品されるそうです。



蔵を出ると杉玉が飾られています。酒蔵や酒屋さんには無くては無いものですが、実はこの杉玉、新酒を仕込んだ時に毎年新調されるそうで、新しいうちは緑色をしているそうです。最近では蔵全体を空調して年中仕込みが出来る環境を整えた酒造も有りますが、基本的には日本酒の仕込みは冬場。その頃は杉玉も緑色だったのでしょう。



蔵の見学が終ると、お待ちかねの試飲タイムですが・・・自転車なので・・・舐める程度に留めます。「叶」だけは300円と有料ですが、そのお味は・・・「磨き上げられたキレイなお酒」としか私のボキャブラリーでは表現できません。

日本酒ブログで有名な「空太郎」さんも「叶」を飲まれて「日本を代表する大吟醸の一つ」と評価されていますので、きっとチョー美味しい部類に入るのでしょう。

最近では千葉県内のイオンのリカーショップでも見かけますし、高島屋など百貨店も販売している様なので、興味を持たれた方は是非。4合瓶で3800円でネットでも手に入る様です。

私は自転車なので、背中で大吟醸が熱々になる事は避けたい・・・。そこで、ここでしか手に入らないであろう1986年醸造の古酒と、吟醸酒「二人静」の生貯蔵種の小瓶を購入します。ワインの様なほのかな甘口の「二人静」は家内にお土産。

東薫酒造の皆様、色々とありがとうございました。

■ 神崎町も負けてはいません ■

さて、佐原を後にして、利根川の土手の上を走って神崎町に戻ります。行きは追い風、帰りは向かい風10m/s。・・・進みません・・・。

ようやく到着した神崎町。ここには成田の「鍋店(なべたな)」の醸造場が有ります。鍋店は千葉県最大の酒造だと思いますが、「仁雄」と「不動」という二つの銘柄が有名です。



実は今回の目的は鍋店さんでは有りません。その近くに在る「寺田本家」が目的の酒蔵。





寺田本家は25代続く老舗の酒造。先代の24代目当主は娘婿だった様ですが、その頃は大手酒造に樽売りする典型的な地方の小さな酒造の一つだったそうです。日本酒離れが進む中で経営も大変だった様です。

24代目当主はトンカツなどが大好きと言う食生活を送られていた様ですが、病気になって医者に勧められたのが玄米食。これを続ける内にみるみる体が健康になった事から、玄米のお酒が造れないか挑戦します。

ところが、玄米は表面を硬い皮で覆われているので、なかかな酵母菌が内部に入る事が出来ません。玄米を砕いてみたり、古代の酒の様に口に含んで咬んでから吐き出してみたりと試行錯誤を繰り返しますが、いっこうに上手く行きません。

そんなある日、伊勢神宮で出会った手法が「発芽玄米」を使う醸造方。ビールの麦芽も同じ様に発芽させて醸造しますが、これが成功します。出来上がった玄米酒は薄黄色に濁り発泡するもの。それをビン詰めして「むすひ」という名で売り出しました。

その独特の味わいに「日本一まずい日本酒」との評価が付きますが、一方で日本酒通の間で「古代の日本酒はこうだったに違いない。一度は飲むべき酒」との噂が広がったそうです。さらには自然食マニアが注目します。今では日本酒愛好家の間ではちょっとした有名なお酒になってしまいました。

24代目は玄米種の他に鎌倉時代の製法で醸造した「醍醐のしずく」や、無農薬米のお酒「五人娘」など、自然なお酒作りに拘ります。自社栽培の無農薬米のお酒も有る様です。自然食ブームの追い風に乗り、今では千葉県でも有名な酒造の一つになっています。





今回は直販所が閉まっていたので、お隣のスーパーで「むすひ」を購入。これもリュックに詰めます。

佐倉で買ったソラマメ、味醂が二本、日本酒の小瓶が二本、4合瓶が一本・・・・重たい・・・とても自転車で運べる重さでは有りません。ソラマメなんてリュックの外に縛りつけた状態です。

そこで、「下総神崎駅」から輪行で帰る事に。日本酒が温くなる前に家に付きたいので。(本当は向かい風に心が折れただけですが)

そんなこんなで本日の戦利品。



■ つまみに困る玄米酒。 「小アジの南蛮漬」けを合わせてみました ■

ところで、ネット情報によると玄米酒の「むすひ」は、その独特の味わい故につまみに困るとの事。皆さん色々と挑戦されている様ですが、「中華料理が合いそうだ」との情報を信じてみます。

帰宅して汗を流し、お酒を冷蔵庫に入れてから、近くのスーパーで小アジを5パック購入します。頭とワタとセゴイを取って、低温で3回、骨までカリカリになるまでから揚げにして、南蛮酢と野菜の中に熱い内にジュウーーと入れます。

から揚げの時点で骨までカリカリなので、一晩待たずに食べられます。ソラマメも塩茹でして、さあ、試飲タイムです。





家内は一口飲んで・・・「ワ!!何これ、不味い・・・」 予想通りの反応です。

では私も一口・・・「・・・・」

これは凄い。日本酒と言うよりは、出来損ないのマッコリと言った感じ。「腐ったドブロクの上澄み」と表現する方もいらっしゃる様ですが、まさに・・・。

ところが不思議と後を引きます。一口目のインパクトの後、二杯目、三杯目と進むうちに慣れてきて、このお酒の「情報量」の多さに引き込まれて行きます。

実は私は大吟醸の様な「キレイ」なお酒よりも、アミノ酸タップリの「雑味」の有る日本酒が好きです。最近は「旨口」と表現する様ですが、アミノ酸の多いお酒は複雑な味わいがあります。口に含んでから飲み下すまでに様々な味わいがせめぎ合い、どんどん変化しながら喉を下って行きます。

その極致が「むすひ」では無いでしょうか。なんせ精米歩合100%ですから「雑味」の塊の様なお酒です。上品の対極に在る「野性味」に惹かれます。

そして・・・アジの南蛮漬けは良い選択でした。酸味と辛みが良く合います。マッコリにも似た味わいなので、焼き肉にも合いそうです。


■ 作っている所を見ると味わいもひとしお ■

現在の日本には美味しい物が溢れています。百貨店のリカーショップに行けば、日本中の名酒も簡単に手に入りますし、ネットで注文すれば「幻の日本酒」もタイミング次第で購入可能です。

その最たる例が「獺祭ブーム」でしょう。確かに獺祭は美味しいお酒ですが、日本にはそれに匹敵する日本酒は沢山あります。ネットで情報を集めれば、日本全国の美酒も堪能できまます。

だけど、それは何か寂しい・・・・。

「あのお酒は○○で○○で凄い」というネットの情報量は確かに凄いのですが、自分が実際に蔵元に行って、その土地を歩いて、作っている人達とお話する情報量とは雲泥の差が在ります。

確かに千葉は酒作りに向いた土地では有りません。全国区の有名な地酒も有りません。しかし、地元の小さな酒造が、その土地に根付いてひたむきに醸したお酒には独特の味わいが在ります。

もし皆さんの身近にもそんな酒造が或るならば、是非足を運んでみては如何でしょうか。バーチャルでは無い、リアルの楽しみが味わえるかも知れません。

為替のスロットを操作して、乱気流の中をどうにか飛び続ける世界経済

2016-06-08 09:42:00 | 時事/金融危機
 

急激な円高でアクセスが増えていますが・・・・アメリカの景気は景気循環の縮小期に入っているといるのが大方の見方でしょう。これはアメリカにとっては良いとも悪いとも言えず、あまり利上げが急ピッチで進むと、収入低下を補っていた低金利構造が崩れ、アメリカの消費が激減します。

自動車ローンやカードローン、住宅ローンなど低金利で底上げされた消費が腰折れすれば、中間層の購買力が損なわれたアメリカの需要の弱さが改めて浮き彫りになるはずです。

ただ、これが次の危機の引き金となる訳では無く、むしろFRBの利上げペースを緩める事でドル高を抑制し、新興国のバブル崩壊を先延ばしにする効果が世界経済にプラスに働きます。まあ、雇用統計など「本当の数字なの」という疑問はいつでも付きまといますが、為替のスロットを操作して乱気流の中をどうにか高度を維持しながら飛行しているというのが、現在の世界の姿だと妄想しています。