■ のどかなデモ ■
海外の報道では伝えられているウォールストリートへのデモ行進。
700名の逮捕者を出したというから、
どのくらい、「荒れた」のかと思ったら、
何と牧歌的な光景だろう。
http://www.youtube.com/watch?v=fockzr7rXys&feature=player_embedded#!
警官隊との揉みあいはおろか、
投石も火炎瓶も破壊行為も無く、
淡々とデモ隊が行進し、おとなしく逮捕されています。
当然、発砲も無し。
イギリスの若者の怒りに比べれば、
アメリカの危機は未だ入り口といった所でしょうか。
■ 現状維持を願う米国民 ■
求職を諦めた人をも含めたアメリカの広義の失業率は、
20%に迫ろうとしていますが、
まだ、生活保障もフードスタンプも支給されている間は、
国民は、将来に不安を抱きながらも、現状維持を望みます。
今アメリカで進行しているのは、
日本の失われた10年(20年)の入り口部分です。
今までアメリカは貧富の差こそあれ、
プチバブルとその崩壊を10年周期くらいで繰り返していました。
それ故にアメリカ人は今回の危機を甘く見ています。
5年もすれば景気は上向くと、楽観しています。
週間ダイアモンドの特集が現在のアメリカの姿を良く伝えています。
http://diamond.jp/articles/-/14244
人々が2年間も職を失いながらも、
まだ希望を捨てていない事が良く分かります。
しかし、この記事から読み取れるのは、
日本と同様に、労働市場の変化が単なる景気循環では無いという事実です。
■ 戻る事の無い変化 ■
建設業の衰退や、新聞業の衰退など、
一過性の景気循環では無く、産業の成立基盤自体が変化している事から、
まだ日本人もアメリカ人も目を逸らせています。
「建設業は内需産業だからいつかは復活する」誰もがそう思います。
しかし、ヨーロッパでは、新しい建築が建たない時代が長く続きました。
建築家達は「アン・ビルト・アーキテクチャー」と呼ばれ、
「決して建設される事の無い建物の設計」をする存在でした。
東西融合と金融改革によってヨーロッパでも建築ブームが起きましたが、
それまでの20年間くらいは、ヨーロッパにおいて新しい建築物は殆ど建たなかったのです。
ヨーロッパの各国は日本に先んじて、少子化を経験しています。
1970年代から80年代のヨーロッパの年齢別人口構成は、
少子高年化を反映する釣鐘型でした。(小学校か中学の教科書に載っていました。)
昨今のヨーロッパの復活は、釣鐘型の年齢別人口構成が緩和された結果とも言えます。
この時代はヨーロッパは「過去の栄光の国」の扱いを受けています。
投資の資金は、投資効率の良い(利率の高い)アメリカに日本に集まります。
当然これらの国々では新しいビルが次々に建設され、
新しいハイウェイが延び続け、各地に空港が作られました。
現在の投資はBRICSを始めとする新興国に向っていますので、
相対的に日本やアメリカの建設業を衰退します。
しかし、つい最近まではこれらの国々が
自前で高層建築を設計建設する技術は無かったので、
欧米や日本の設計事務所や建設会社は、
海外で様々な物件設計や建築を受注してきました。
ところが、新興国の建築の技術も時と共に向上します。
海外に留学し、欧米の設計会社や建設会社で技術を習得した、
優秀な人材が自国で仕事を始める様になっています。
現在、日本の設計事務所も建設会社も、
海外から撤退を余儀なくされています。
新興国の為替レートは低いので、円高の環境下では、
設計コストも建設コストも低く抑えられ、赤字をたれ流してしまうのです。
さらには、建築の入札で、コストの安い韓国や中国の建築会社などが落札します。
そうすると、日本のゼネコンは設計図だけを安く提供する事になり、
利潤を確保する為の施工を行う事が出来ません。
中国などは建築作業員まで自前で用意してゆきますから、
現地で発生するはずの雇用までも手に入れてしまいます。
かくして、国内の不景気から、海外に進出した
日本の大手設計事務所もゼネコンも
海外からの撤退を余儀なくされています。
もし金融危機が再発すれば、コストの制約はさらに大きくなり、
日本や欧米のゼネコンは新興国市場から完全撤退するでしょう。
(確かに、韓国のゼネコンの建設した橋が落ちたり、
新築ビルが傾いたりする事故?が無い訳ではありません。
しかし、新興国における韓国や中国やインドの建設会社の躍進には目を見張ります)
■ 内需産業と言えども、安心出来ない ■
この様に、内需産業と思われていた建設業でさえ、
海外投資の活発化によって、
日本国内の建築物件の減少という問題に直面します。
新聞業や印刷業は、ペーパーレス化によって衰退は確定しています。
一旦電子化された情報は、地球の裏と表など関係ありません。
■ 過度のグローバリゼーションに耐えられない世界 ■
グローバリゼーションはアメリカを始め先進国が
後進国の富を奪うシステムとしてスタートしました。
しかし労働市場という意味においては、
先進国の労働市場は、新興国に奪われ続けています。
国家という枠組みを重視するならば、
第二次世界大戦直前の様に、
先進国はブロック経済によって自国の利益の流出を留めたいはずです。
■ 越境する資本にとっては、国家など問題外 ■
しかし、第二次世界大戦当時と激変している事があります。
それは、資本の越境が当たり前になったという事です。
最早、コカコーラもマクドナルドはアメリカの企業とは言えません。
フォルクスワーゲンもドイツの企業とは言い難くなっています。
その市場も、従業員も、生産設備も、既に世界に散らばっています。
便宜的にアメリカやドイツに本社を置いていますが、
合理的に考えれば、法人税の安いシンガポールに本社を置いても問題はありません。
既に、世界の大企業の前に国境という概念は無く、
但し、中国の様な特殊な企業環境の国に進出する時だけ、
国家という枠組みが依然として立ちはだかるだけです。
■ 世界的金融危機は意図して引き起こされる ■
金融資本家に目を移すならば、
シャドーバンキング(影の銀行システム)による利益の拡大が崩壊しています。
一見、彼らはやがて訪れる金融危機によって、
滅び去る存在の様に見えます。
しかし、歴史は繰り返します。
1920年のアメリカの大恐慌は、
新興国アメリカで勃興した土着の新興企業の株を、
ロックフェラーとロスチャイルドが買い占める事で終焉を見ました。
ウォール街の株式バブルは、
手元資金の10倍を融資するというコールローンを
一気に引き揚げた事で発生しました。
一夜にしてローンの返済を迫られた投資家達が、
二束三文で株を現金化したのです。
破格の値段になった株券を、
ロックフェラーとロスチャイルドが買い漁り、
アメリカの新興企業は、この2大財閥に統合されてしまいました。
今回の世界的な金融危機は、きっと同じ事を新興国で引き起こすでしょう。
日本ではバブル崩壊の時に、
韓国ではアジア通貨危機の際に、
国内企業が欧米の軍門に下っています。
■ 次の機軸通貨体制さえ確立すれば、ドルには拘らない ■
国際金融資本は既に国境を超越した存在です。
ですから、アメリカの未来に拘りま持ちません。
現在アメリカが重要な位置を占めるのは、
ドルが機軸通貨だからであって、
ドルに変わる機軸通過体系が確立されるのであれば、
国際金融資本家達は全く拘りを持たないでしょう。
ドルは民間金融機関であるFRBの銀行債権である事から、
ドルが崩壊してもアメリカ政府がその責任を負う事はありません。
始めから、そういう性質をドルは持たされているのです。
そしてドルの崩壊は、世界の負債が一気にチャラにされる事を意味します。
まさに現代の徳政令の様ですが、
この役割はドルでしか果たせません。
■ 崩壊する連邦政府 ■
ドルの次のアメリカの通貨(アメロ?)は既に準備されているでしょう。
ロシアのメドベージェフ大統領がG20に出席した際に、
ポケットからコインを取り出して、
「これがアメロ硬貨だよ」と記者団にトボケテ見せた程に、
既に規制の事実なのだと思います。
ドルが崩壊した時に、米国政府が国民に、
「ドルはFRBの債権だが、アメロはアメリカ連邦政府が保証する通貨だ」
と発表すれば、アメリカ国民は我先にドルとアメロを交換するでしょう。
それでも国民がドルに拘るならば、
アメリカ国民は、手に手に銃を取って暴動を起こします。
そうすれば連邦政府は崩壊します・・・。
しかしドルがアメロに成る時点で、
連邦政府の対外負債は帳消しにされるでしょうから、
寄らば大樹の陰とばかりに、連邦の崩壊は意外と起こらないかも知れません。
■ 平和な時代がやって来る ■
ドルの終焉が比較的平穏に行われ、
各国政府が米国連邦政府の責任を必要以上に追及しなければ、
世界は比較的速やかに新しい通貨体制に移行できるかも知れません。
そう考えると、ドルの終焉によって国家の負債が霧と消える、
アメリカは結構美味しいポジションに居るかも知れません。
尤も、他国がアメリカを許さないならば、
さっさと連邦を解体してしまえば良いのです。
アメリカは国家に匹敵する巨大な州の集合体ですから、
北米連合政府でも立ち会げて、
過去の負債など切り捨ててしまっても、
経済力から言って、充分に新しい国家として機能します。
ソ連が崩壊さたら、ロシアが出来ていた・・・そんな感じかも知れません。
・・・デモのニュースから、随分脱線してしまいました・・。