人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

封殺される科学・・・犠牲を強要する社会

2011-10-02 08:50:00 | 福島原発事故
 
■ はじめに、おことわり申し上げます ■ 

このブログは色々と不謹慎な事を書いていますので、
本日はちょっと過激な文書を書こうと思います。

私が福島原発周辺の方達に冷淡と受け止められると不本意なのですが、
現在日本を覆う、「同質化の空気」を吹き払わない限り、
福島は不幸の大地であり続けなければならないという、
逆説的な発想で読んでいただければ幸いです。

■ 同質化を強要し、そして同質に安心する日本人 ■


放射線で一番問題なのは、今回も明らかの様に議論が成り立たない事です。

1(mSv/年)まで危険と言うLNT仮説がもし正しいとしても
その様な低線量域での被爆の危険性は、冷静に判断すれば携帯電話の使用による発癌性と似たり寄ったりの確率で、喫煙による発癌よりも充分に低い事は科学的事実です。

これを社会的損失という概念で考えれば、タバコによる社会的損失は、現在の福島の被爆による損失よりも100倍以上重大であると言えます。

ところが世間では、タバコは嗜好品、放射線は一方的な被害と区別します。
合理的に考えれば、自己責任で癌になるタバコの被害は補償されませんが、放射線による被害は補償されませすから、個人的にはタバコによる害は損失しか生まないのですが、この事を指摘すると「個人の勝手だろう」と逆切れされます。

放射線の被害をことさら強調する人達は、「妊婦や子供を守る」と強調しますが、彼らの価値基準は非常に個人的な利害に立脚しているので、時間が経て、実害が自分達に及ばなければ、放射線に対する興味を失います。(但し、恐怖だけは心の底に残ります。)


今回非常に興味深いのは、アメリカ、フランス、ドイツの人々の方が、放射線に対して徹底的な恐怖を抱いている事です。彼らは個人の対応としては、原発事故直後の日本から逃げ出しました。

しかし一方で社会的には原子力の存在を認めています。(ドイツは別として)。
フランス人は国家のレベルとしては原子力を認めながらも、個人のレベルとしては放射線を恐怖します。これは、個人と社会という尺度が確立しているので起こる現象です。

国家として原子力は不可欠だが、個人としては事故が起きれば自分の安全は最優先するのでうす。これは、狩猟民族的な思考です。集団で獲物を狩るリスクは犯すが、生命の保証は個人で守るしかないという考え方です。

ところが、日本人は土地に縛られた農耕民族ですから、厄災はどこからとも無く訪れて、しばらくして去ってゆくものです。そのリスクは土地が動かないものである以上、回避できるものでは無く、集団が等しくリスクを負う事になります。

社会が進化を遂げ、ムラレベルの集団は国家レベルに成長しましたが、日本人の価値基準は未だにムラを基準にしています。

福島という限定的地域で発生した厄災を、全国民の共通に痛みにしなければ、気がす済まないのです。だから、大した事の無い汚染レベルを測定しては、自分達も等しく危険に曝されている事に、恐怖しながらも、一種の安心を覚えます。

この対応は地震直後の自粛ムードにも明確に現れていました。

本来は震災の影響が無い地域では、消費を推奨して経済を活性化する事が求められえるのですが、全国的自粛ムードで、サービス業を中心に不必要な損失が拡大しました。

この様に「合理的判断」は「裏切り」と断罪される社会においては、原子力や放射線に対する多角的議論は封殺され、「安全」を主張する学者達は、「魔女狩り」さながらの扱いを受けます。

ここには「科学」は存在せず、あるのは「同一の苦しみ」を強要する「ムラ社会の不問律」です。

ですから現在の日本において、「放射線の論争」は成立し得ず、一方的弾劾と言う恐怖のみが支配します。それは、社会や国家には不必要な除染や、不必要な避難という損失を生み出しますが、社会は「皆で苦労する」という安心感を得る為に、その矛盾に目を閉じます。

これこそが、「福島の悲劇」を助長するのではないでしょうか?



オバマ・フィーバーを覚えていますか?・・・オバマの再選は絶望的

2011-10-02 01:08:00 | 時事/金融危機





来年はアメリカの大統領選挙です。

現在確実に分かっている事は、「オバマの再選は無い」という事。
米民主党内では「大統領をバイデンに変えたい」とまで言われるオバマ大統領。

ところで皆さんは「オバマ・フィーバー」を覚えていらっしゃるでしょうか?

ブッシュが進めたテロとの戦争に辟易としていたアメリカにとって、
リーマンショック後の経済危機に恐れおののくアメリカにとって、
颯爽と登場した黒人大統領候補は、ヒーローの様に見えました。

彼の素晴らしいスピーチは、日本でも発売され、
オバマ・フィーバーに世界を沸きました。

「この若い大統領は世界を変えてくれる。」
誰もがそう期待していました。

さて、大統領の任期も後1年半となりました。
来年はアメリカの大統領戦の年になります。
再選の期待されない大統領は、今年の後半からレイムダック状態になります。

今後、オバマの打ち出す政策は「空手形」扱いを受けます。
オバマは高額所得者の増税と、
大規模な公共投資による雇用回復策を打ち出しました。

これはオバマ就任当初のグリーン・ニューディールを思い出させます。
グリーン・ニューディールは大した雇用を生み出しませんでした。
それどころか、市場原理は冷酷で、
エコビジネスで躍進が期待されたアメリカとドイツの太陽電池産業は、
コストの安い中国製に駆逐され、衰退しています。

結局、市場原理を無視した公共投資では、
景気を浮揚させられない事は明白です。

「人力でGO」では、オバマ就任前から、オバマ大統領に懐疑的でした。
演説は上手だけれども、アメリカは演説では回復しない事が当時から明確だったからです。


人は騙され易いものです。
危機に際しては、「希望」を求めます。


水面下で経済危機は相当危険な状態になっています。
「九月危機は訪れなかった」と人々は胸をなでおろしています。
しかし、8月、9月で世界経済の退潮は明確になりました。

1年後に振り返った時、危機がいつから始まったのかが明確になるでしょう。

「世界経済の末路」は既に確定しています。
それは回避不能です。

「世界がオバマに寄せた希望」を振り返ると、
危機に際しては「希望」こそが判断を鈍らせる事に気付くでしょう。

「危機回避」にはネガティブ・シンキングこそが重要です。
ポジティブは、経済成長時の思考です。

・・・・ウワァー、日曜の朝から、思い切りネガティブだぁーーーー!!


「人力でGO」の過去記事から、
オバマ氏の軌跡を振り返りながら、
「希望」の本質を振り返ってみたいと思います。



2009年1月23日   オバマ就任後



■オバマ大統領にくびったけの日本人■

日本人って本当にハヤリモノに弱いですよね。
アメリカ大統領の就任式を、日本人が夜も遅くまで見ているなんて
初めての事ではないでしょうか。
それだけ、オバマにスター性があるという事なのでしょう。
確かにあの演説は素晴らしい。
声といい、間といい、表情といい、スピーチの国の大統領だなと思います。

ビル・クリントンも格好良かったですが、
オバマはちょっとハリウッド・スターみたいな雰囲気ですよね。
と言うか、黒人大統領ってハリウッド映画では見掛けたりするので、
どうしてもその印象がかぶってしまうのかもしれません。

でも、逆に作られた虚像のような気もして少し心配にもなります。
例えば、ホワイトハウスのホームページのムービーを見ると
これは明らかに演出過剰・・・・。

■民主主義は陳腐化する■

民主主義は最初こそ高い理念を掲げますが、
時間が経てば、利権の奪い合いに終始するのはどこの国でも同じです。
結局、選挙に真剣になるのは、失うもののある「持てる人」で、
失うものすら無い人は選挙にすら行かない。
政治家は「持てる」人の代弁者でしか無い事は洋の東西を問わず一緒です。

アメリカは大統領戦が直接選挙に近い方式なので、
それでも国民は「我々の大統領」という意識が強く、
大統領選挙はそれこそ国を挙げてのお祭りです。
でも、昨日のTVを見ていても分かる様に、
単なるイベントに過ぎないのです。

良く、日本人とアメリカ人の政治意識の差が話題になりますが、
マスコミが発達して先に政治がエンタテーメント化しのは彼の国です。
選挙に広告代理店が動員され、TVスポットが流され、
討論会が視聴率をかせぐ・・・。

結局TV受けの良い候補者が勝ち残る。
印象的な容姿、印象的な経歴、印象的な言葉。
ワンワード・ポリテイクスと言えば小泉元首相を思い出しますが、
「Yes we can」にしても「Change」にしてもその最たるものと言えます。
結局、政治ショーに浮かれる国民の耳にはキーワードしか届かない。

■オバマの政策でアメリカ経済は復活するのか■

アメリカ経済の絶対絶命の危機で華々しく登場したオバマですが、
彼の政策で瀕死のアメリカは復活するのでしょうか?

「グリーン・ニューディール政策」と言えば聞こえは良いですが、
結局、大型公共投資意外の何者でもありません。
では、その財源はどうするのでしょう?
国債のさらなる乱発以外に方法がありません。

そもそも「ニューディール政策」はルーズベルトの時代も失敗しています。
社会の教科書では、ニューディール政策によって恐慌を脱したとありますが、
大型公共投資は一時的な雇用は生み出しましたが、
それによって作られたダムや道路の経済効果が現れるには時間が掛かります。

世界大恐慌の時にアメリカ経済を救ったのは、ヨーロッパで勃発した戦争です。
この時、日本も戦争によって、経済が復活しました。

そもそも公共投資は民間の投資に比べて非常に非効率です。
まして、インフラの整った先進国での投資効果の低さは
日本の現状を見ても明らかです。
そして、環境分野は再生産性に乏しいので、尤も非効率的な投資です。

■二酸化炭素による温暖化という世紀のウソのツケ■

民主党はクリントン時代からゴアが環境問題にご執心です。
ダイオキシン問題もWHOを巻き込んで、
環境ホルモンという得体の知れない恐怖としてさんざん宣伝されました。

日本でもダイオキシンは大問題となり、
旧型の焼却炉が、新型の焼却炉に入れ替えられました。
しかし、実は日本のプラントメーカーは殆ど新型炉を受注出来ませんでした。
高温消却型の新型炉の納入実績が無かったからです。
日本で導入された新型炉は殆どヨーロッパとアメリカ製でした。

しかし実際のダイオキシンの毒性は低く、
発がん性も、たばこのタールに比較しても低い事が明らかになっています。
環境ホルモンも、自然界の軟体動物や魚類の性転換は一般的な事柄です。
ですから、かつて程ダイオキシンを問題視する人は少なくなっています。
http://www.org-chem.org/yuuki/chemical/dioxin.html

二酸化炭素問題も全く同じ構造をしいます。
無害なものの危機を煽って、ある程度ビジネスをしたら、ウヤムヤにしてしまう。
そもそも、二酸化炭素が原因で温暖化するのでは無く、
温暖化するから、海中から二酸化炭素が気化して二酸化炭素が増えるのです。
原因と結果を逆転させて危機を煽っているだけです。

温暖化の主原因は太陽活動の周期ですから、
太陽をどうにかしないと、ヒマラヤやグリーランドの氷河は溶け続けます。
しかし、かつて地球は氷河に覆われていた時期があるのです。
ライチョウは日本が氷河に覆われた時期は、そこら中に生息していましたが、
氷河の後退(温暖化)で、住処を高山へと追われたのです。

逆に縄文時代は現在よりも2℃気温が高く、海水面も6mも高かったのです。
実際、群馬県まで海が入り込んでいました。
平安時代も現代より温暖で、霞ヶ浦は海だったから「浦」と呼ばれるのです。

このような地球と太陽のダイナミックな変動を
グリンニューディール政策で止められるとは思えません。
というか、科学的にナンセンスです・・。
「来るべき石油の枯渇に備えて」と言う方が、正直で目的も手法も明確化します。

効果が無い事に投資するのですから、
「グリーン・ニューディール政策」の効果は期待できません。

■市場は冷静■

市場はこういった欺瞞に対して非常に冷静です。
オバマ就任当日にダウ平均は332ドルも下落し、ドルも下がっています。

オバマ就任までは期待値でどうにか保っていた株式市場も、
オバマに経済回復の決定打が無い事は(戦争以外に)分かっていますから、
当然、オバマ人気が最高潮に達した時に「売り」と判断します。

今後はシティーバンクの破綻やビッグ3の破綻が秒読み段階に入りますから、
オバマ・マジックは一瞬にして醒めてしまいます。
そして、オバマに根拠の無い期待を抱いていたアメリカ人は
一気に現実に引き戻されます。

この時にオバマは今の様な求心力を保てるでしょうか?
彼が求心力を保つ唯一の方法は、
国民にお金をばら撒き続ける事です。
そしてその事は、アメリカ国債を日本と中国が買い支え続ける事を意味します。
今の日本の経済情況ではたしてそれが可能でしょうか・・・。

結局、アメリカ経済の回復なくして、日本経済の回復は見込めず、
日本経済の回復無くして、アメリカ経済の救済はならず・・・
日本はオバマと一連托生である事を知って、日本人はオバマに熱狂するのでしょうか?





2009年2月26日   オバマの一般教書演説


■ハリウッドの国の大統領■

オバマ大統領の施政方針演説を新聞で読みましたが、
なかなか立派なものでした。

短期利益追求のアメリカという国の自己批判と、自己責任への言及。
経済復活から長期的成長の為の教育や産業分野への投資、
医療制度改革。
無駄な財政のきりつめ
国際協調体制への移行・・・。
そして最後はサウスカロライナの女の子の手紙で涙をさそう。

最後が江戸時代の偉人の話になれば、
日本の歴代首相も同じような演説ですが、
さすがはハリウッドの国の大統領。
言葉の選び方が上手い。
文字で呼んでも、こみ上げてくるテンションを感じます。
アカデミー主演男優賞と最優秀脚本賞をあげたい。

■市井の話にしてみると分かり易い■

気高い言葉とパフォーマンスに彩られた施政方針演説を
日本の下町に置き換えたら、こんな感じでしょうか?

いやーまいったよ。
ついつい調子こいて金をパァーと使っちゃったけど、
やっぱり儲かる話には裏があらぁー。
そりゃ、儲けたやつもいるよ・・・。でも大体みんな大損だよ。
しょうがねぇ、後は「お上」だけが頼りだよ。
お金をパァーとばら撒いてもらってさ。

あとはあれだ、日本とか中国とかさ、カドの白い家に連れ込んでョ、
「車買わねーぞ」「いじめは許さねーぞ」ってちょっと脅せば
結構金出してくれるんじゃない?
省エネ技術なんてのも、タダでくれるさ。

まあ、ウチラノ商売なん結局は駄目だけど、
太陽電池だとかキレイ事言ってりゃぁ、結構みんなコロって騙されるもんよ。

それより頭が痛いのは、うちのバアサンの病気だよ。
金掛かるったらありゃしない。
このままいったら、バアサンがくたばる前に、こっちがくたばっちまうよ。

それにウチのガキときたら、全くしょうもねぇ・・。
勉強はしない、学校は行かない、おまけに途中で止めちまう。
これじゃろくな仕事ねぇから、お荷物だよ。

なんだ、世の中には60億円をパァーと人にやっちまうような
奇特なジイサンもいるみてぇだけどよぉ・・。

それに、このサウスカロライナの女の子は偉いねぇ・・。
大統領に手紙書いたってよ。
でも、切手ぐらい自分で買えないのかねぇ。

まあ、どうでもいいけど、
ウチは大丈夫だよ。
今までだって、爺さんの頃からこうやってやってきたんだからさ。

いざとなったら、バァァーと祭りだ!!
今度だぁ、ペルシャ湾あたりで、どっかぁぁんと派手にョ。
それでだめなら、金なんて踏み倒しゃぁいいんだよ。
だって、ねーものは払えねぇだろ。


・・・ン!?
そんな事言ってないって!?

それにしても今回のオバマの演説、
根拠の無い展望を外して読むと、
いかにアメリカという国が無茶苦茶か、自分から露呈していて笑えます。
その国に付き従う我が国はもっと悲しいですが・・・。


2010年1月25日     オバマ就任1年




■ 就任1年のオバマ大統領 ■

オバマ大統領が就任してから1年が経ちました。



1) 金融危機で瀕死の状態の銀行は、復活して最高益を上げました。

2) アメリカの負債は急拡大しています。

3) 失業率は10%を越え、実質的には22%とも言われています。

4) グリーン・ニューディールは掛け声だけ、
   温暖化対策も掛け声だけ

5) アフガンに増派が決まりました。

6) 骨抜きの国民皆保健制度の成立も危ぶまれています。


オバマ大統領は、大銀行に莫大なプレゼントを与え、
そのお金を将来的に国民に請求しています。

さて、大統領は誰の味方なのでしょう?
オバマが銀行家の大統領と呼ばれる所以です。

■ イメージ先行の大統領 ■

民主党政権である事を強調する様に
国民皆保健制度の導入を目指していますが、
民間保険会社や共和党の巻き戻しで
その内容は大きく後退しています。

一方、金融政策や外交、軍事においては
ブッシュ政権からの継続性が強く現れています。

「初の黒人大統領」を守りたいという
マイノリティーの潜在的な願望を巧みに利用して、
ブッシュでは国民が納得できなかったであろう政策を
実行しているのが、オバマ大統領です。

その間、核廃絶や多国間交渉主義など
国際的にもアピールする方向性を提示していますが、
これはアメリカが単独覇権を維持出来なくなった事の裏返しです。

求職を諦めた者や、アルバイトで糊口を凌ぐ者を含めれば、
アメリカの失業率は実質22%に達すると言われています。
本来ならば、マイノリティーを中心に「暴動」が発生しそうな状況です。


■ 投資銀行の復活 ■

オバマは、銀行の自己勘定取引を規制しようとしています。
国民はこの法案が通れば、多少溜飲を下すでしょうが、
この法案は裏でボルガー元FRB議長が入れ知恵しているようです。

一見、金融機関の収益を圧迫しそうな法案ですが、
ゴールドマンなどは、元の投資銀行に戻れば良いだけです。
商業銀行各社も投資銀行部門を分離するでしょう・・・。

・・・あれ、結局金融危機以前の状態に戻るだけです。

商業銀行の看板を下ろせば、
ゴールドマンなどは誰はばかる事無く、
レバレッジを効かせた取引を継続する事が出来ます。

商業銀行に転身した理由は公的支援が目的ですから、
その必要性が無くなれば、元の投資銀行に戻るだけです。

現状の商業銀行では規制も厳しく、
ゴールドマンなど旧投資銀行は、
元の投資銀行に戻りたいはずです。

しかし、公的資金を受けた身としては
自ら「投資銀行に戻りたい」とは言えません。
それは、国民が許しません。

ですから政府が「自己勘定取引規制」を強要し、
それに違反して商業銀行の資格を剥奪されるか、
あるいは、仕方なく投資銀行に戻るというポーズを取りたいはずです。

オバマの大統領は、銀行の為に働く大統領なのです。

■ 銀行ロンダリング ■

メリルリンチなど、商業銀行に買収された銀行は、
分離の際に、商業銀行側に不良債権を手土産に残して行くかもしれません。
実体経済が回復不能なまでに痛んでいるアメリカで、
商業銀行の大幅な収益の回復は望めません。
まして、グラス・スティーガル法的なオバマの銀行規制が適用されれば、
商業銀行の経営環境は急激に悪化します。

儲かる投資銀行部門を「グット・バンク」に、
儲からない商業銀行を「バット・バンク」にして
銀行ロンダリングの様な行為が行われないとも限りません。

残った商業銀行は、人々の貯金を預かっていますから、
やはり「大きすぎて潰せない」ままです。
ここで、さらに預金保護の名目で、
新たな資金注入が行われるかもしれません。

なぜなら、オバマ大統領は「銀行の味方」なのですから。


■ ボルガーと高金利政策 ■

存在感を表してきたボルガーは
レーガン時代のFRB議長です。

当時彼は高金利政策を実施し、
高金利を求めて、アメリカに資金が流れ込み、
高金利の米国債を日本の銀行なども買い込みました。

一方、ドル高が進行し輸出産業は衰退して行きます。
そこでプラザ合意によって、
日本やドイツが為替介入を行い、
ドル安に誘導して行きました。

■ 高金利政策とドル安誘導 ■

古典的な経済学では、金利の上昇はインフレを抑制します。
これは、資金の流れが国内に限定している場合のみ有効です。

現在の世界は、為替市場によって
国と国との間で自由に資金が流動します。

金融危機以降の各国の低金利政策が、
国内の需要に結び付かず、
キャリートレードによって金融機関を利する結果をもたらすのも
国境を越えた資金流動が原因です。

従来、インフレを抑制するはずの高金利政策ですが、
現在においえは、金利に飢えた海外資金を誘導し、
国内の通貨流通量が極端に落ち込む事はありません。

プラザ合意後は、ドルが安くなった事で
ジャパンマネーがアメリカの資産を買いまくり、
流入した資金がアメリカ復活のきっかけを作りました。

一方、その後の行き過ぎ歌ドル安を
是正する為の為替介入の為に買われたドルは
アメリカ国債を買い支える事となります。

■ 日本のバブルの崩壊 ■

アメリカ経済が復活する頃、
日本ではバブルの崩壊が発生します。

かつてアメリカを買い漁った日本企業は
アメリカの資産を手放してゆきます。
この後アメリカは、ITバブル、金融バブルに突入します。

■ アメリカの出口戦略 ■

ボルガーの登場は、アメリカの出口戦略が近い事を予感させます。
はたして、今回の高金利政策は成功するでしょうか?

現在のアメリカで金利が上昇すれば、
住宅ローンやクレジットのデフォルトが多発します。
商用不動産市場も完全に崩壊します。

自動車産業を始め弱体化した製造業や、
不況にあえぐシリコンバレーも、
資金調達コストの上昇に耐えられないでしょう。

それでも、マネーゲームの資金はアメリカに向かいます。
長期的には安全な投資では無い、アメリカ国債も
高利に釣られた資金が引き寄せられてきます。

■ 儲かるのは銀行だけ ■

金融崩壊で、タダでばら撒かれたドルに、
オバマ政権は、今度は金利をプレゼントしようとしています。

しかし、アメリカの実体経済は高金利に耐えられません。
儲かるのは銀行で、苦しむのは国民です。

アメリカ国債も、かつての日本のような従順な買い手は存在しません。
一時のアメリカ国債バブルが過ぎれば、
大きな負債のみがアメリカ国民を襲います。

その後に訪れるのは、世界をリセットする為の戦争でしょうか・・・。
流されるのは、アメリカの若い兵士の血と、
遠い国の無辜の民の血です。


・・・オバマ大統領は、あくまでも「銀行の味方」です。



2010年4月25日





■ 単純に比較すると ■

世界一醜いと言われる日本の国債と、AAA格付けのアメリカ国債を比べてみました。
国債の発行残高と、年金などの負担を含めた政府残高の両方を比較してみます。


<日本国債>         <日本の借金(政府債務残高)>
発行残高   650兆円     債務残高   1103兆円
一人当たり  511万円     一人当たり  868万円
GDP比     185 %
10年物利率  1.4 %

<アメリカ国債>       <アメリカの借金(政府債務残高)>
発行残高   1000兆円    債務残高   5500兆円
一人当たり  312万円    一人当たり  1762万円
GDP比     80 %
10年物利率  4.0 %

赤ん坊から老人まで含めた日本人一人当たりの借金(政府債務)868万円も驚異的ですが、アメリカの1762万円も返済可能な金額とは思えません。事実、アメリカの会計検査院は2007年にブッシュ政権に対して「アメリカの国債は既に返済可能でない」と勧告していますが、その後もアメリカ国債の発行は加速度的に増加しています。

http://www.im-sendai.jp/archives/2008/10/post_285.html

さらに日本の国債は96%が国内で消化されています。国民の貯蓄が国債で運用されている限り、海外のヘッジファンドに売り浴びせられる危険はありません。一方アメリカ国債はその多くを海外の資金でファイナンスしています。危機が高まれば一気に売り浴びせられます。

アメリカ国債は格付けこそAAAですが、既にジャンク債状態です。

■ 日本の保有するアメリカ国債 ■

日本が保有するアメリカ国債は100兆円と言われています。ところが実際には700兆円保有すているというウワサもあります。日本とアメリカの関係を考えた場合、100兆円という政府発表額は、最小の金額と考えた方が無難かもしれません。

アメリカの財政危機が肥大化する中で、「アメリカ国債を売却しろ」という声も高まって来ました。しかしこれは不可能な事です。日本がアメリカの属国だから不可能なのでは無く、日本の所有するアメリカ国債は、アメリカの金庫の中にあるから、物理的にアメリカの承諾無くして市場に流通させられないのです

仮に中国が米国債を大量売却して米国債危機になても、日本は米国債を売り抜ける事は出来ません。日本はみすみす100兆円(700兆円)の損失を被る事になります。

■ 元の切り上げ ■

4月8日、ガイトナー財務長官がわざわざ中国まで出向いたそうです。元の切り上げについて話合われたのでしょう。

アメリカ国内では元の切り上げ圧力が高まっていますが、製造業が空洞化しているアメリカにおいて、元の切り上げは経済の回復には繋がりません。

むしろ、ドルを買い支えている元が切りあがれば、ドルあらゆる通貨に対して下落する可能性が高くなります。多くの物資を輸入に頼るアメリカで、ドルの下落はインフレに直結します。これはアメリカ経済にとって致命的です。

■ 元切り上げの本気度 ■

中国はプライドの高い国ですから、アメリカの圧力に屈して元を切り上げる事には抵抗があります。さらにプラザ合意後の日本の惨状を見ていますから、容易に元の大幅な切り上げには応じないでしょう。(小幅な切り上げはありますが)

結局、元切り上げの大合唱は、中国に「元を切り上げないで下さい」と懇願している様にも見えます。

一方、中国はドルが危険となれば、独自判断で元のドルぺックを外す事は躊躇しないでしょう。同時に米国債の大量売却も行われます。この時点でドルはThe END です。アメリカの好むと好まざるとに係わらず、ドルの命綱は中国に握られています。

■ 借金をチャラにする方法 ■

日本にしてもアメリカにしても、借金はチャラにしたものです。国家による借金の減らし方には3つの方法があります。

1) 増税によって返済する
2) インフレによって借金を減額する
3) デフォルトによって借金をチャラにする

アメリカ国債は既に債務不履行の状態です。ですから増税による国債に返済はアメリカ国民の生活を破綻させる為、選択肢には入りません。

デフォルトは、国家の信用を損なうので、その後の国債のファイナンスが不可能になります。さらに機軸通貨としてのドルの立場も失います。これは最悪の事態まで避けたいはずです。

それではインフレはどうかと言えば、10%や20%のインフレでは焼け石に水です。債務を1/10にする為には1000%のインフレが必要です。これでは国民生活が破綻してしまします。かつてのワイマールがこの方法を用いました。結果は皆さんご存知かと思います。

アメリカ国債を取り巻く状況は、まさに八方塞がりです。

■ アメロという核爆弾 ■

かねてから、アメリカはメキシコとカナダを統合した北米共通通貨「アメロ」を発行すると囁かれていました。

アメロ発行に際しては、旧ドルは1:10のレートで交換され、アメロは金兌換制によってその価値が担保されるというウワサです。当初、アメロの導入時期は2010年とされてきました。

アメリカ国内の交換レートと、国外の交換レートに差を設ければ、国内のインフレを抑制しながら、借金を1/10に圧縮できるという荒業も可能です。さらに、アメロを金兌換とする事で、ドル危機によってペーパーマネーが世界的に信用を失う中で、アメロが国際決済通貨としての地位を獲得する可能性も大です。

これはアメリカにとっては良いこと尽くめです。

■ 金は誰が持っているのか ■

ここで問題になるのは、アメリカが金を保有しているかどうかです。アメロを発行した所で、単なるペーパーマネーでは誰も見向きもしません。

一説によればアメリカの保有する金は、先物市場の空売り用に貸し出され、金庫にはタングステンに金メッキした偽者のインゴットが積みあがっているという話も聞かれます。

一方、IMFが手持ちの金を中国やインドに売却するなど、新興国の金の備蓄量が増えています。通貨危機に対してある程度の備えをしている様に見えます。

さらに、田中宇氏によれば、市場に出回る金はペーパー金(証書)で、実際に金に交換しようとした場合は、実物の金が大幅に不足するとの事です。先物市場などは100倍のペーパー金が流通している様です。JPモルガンが主役となって、金の空売りを仕掛け金相場を抑制している事がGATAの主張によって明らかになっています。

金相場の抑制は、ドルの延命に繋がります。金相場が跳ね上がれば、一気にドル離れが加速するでしょう。

いずれにしても、アメリカ政府が金を保有していなければアメロは機能しません。

■ オバマに握られた破滅のスイッチ ■

アメロについては様々な憶測が飛び交っています。4月20日に発行される新100ドル紙幣がアメロでは無いか・・そんなウワサもあります。

財政状態だけを注視すると、アメリカという国家は既に「継続可能」な状態を逸しています。それだけを考えれば、オバマがいつアメロを発行しても不思議では無い状態です。

「大国アメリカが国際社会に対して、そんな事を単独でするはずが無い」と思い込むのは危険です。現にニクソンショックは一人の大統領が世界経済の根幹を成す通貨制度を根底から覆してしまいました・・・それも何の予告も無しに・・・。


世界の命運は、オバマが握る「アメロのスイッチ」に委ねられているのかも知れません。

■ 世界同時インフレ ■

デフレの時代にインフレの話は笑われてしまいそうですが、各国の財政状態を鑑みれば、世界各国がインフレの誘惑に晒されているはずです。

金融資本家達は、国家を謝金漬けにする事で、現在は存在しないお金を、国家の借金として一時的に現出させ、それを金などの価値の減らない資産に交換します。国家の借金が継続不能な状態になればインフレが訪れ金を始めとする資源価格は暴騰し、彼らは無から有を得る事が出来ます。

さて、私達の預金は、年金は大丈夫でしょうか?現物の金しか信用出来ない時代の足音が聞こえています