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「信用」とは「ルール」である・・・金融は抽象概念上の幻である

2011-10-12 01:55:00 | 時事/金融危機
 

■ デクシアの救済コストは見かけよりも大きい ■

ギリシャ危機を発端に、ヨーロッパで「信用収縮」の流れが加速しています。

ベルギーの中堅銀行のデクシアが破綻しました。
ベルギー政府が国有化して、危機の連鎖の食い止めに必死です。

ベクシアの買い取り価格は40億ユーロで、
これはベルギーのGDPの1%に過ぎません。
この程度のコストであれば、銀行の国有化に国民は納得しそうです。

しかし、デクシアの資産を厳密に時価評価すると、
国民の負担はこれだけでは済みそうにありません。

「コラム:ベルギー政府のデクシア救済、コストは見かけ以上」・・・ロイター
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPJAPAN-23563320111011

ロイターのコラムは、金融危機が最悪の状態に発展した時
デクシアを救済する為のコストはベルギーのGDPの17%に及ぶと書いています。

中堅銀行1行だけで、この有様ですから、
ソシエテ・ジェネラル(仏)や、ドイツ銀行が破綻の危機に際しても、
国家が救済出来るかどうかは、想像出来るはずです。

■ 「信用収縮」で失われる「信用」とは何か ■

ところで「信用収縮」で失われる「信用」とはいったい何なのでしょう?

「実物経済」は「物々交換」を基本にしますので、理解は容易です。
「実物」といえども「需給ギャップ」が存在しますので、
「交換レート」は絶えず変動します。
しかし、一般的には「レート」は常識の範囲内で変動します。
「貨幣」が介在しない「物々交換」では、富の蓄積は発生し難く、
極端な交換レートは発生し難いと考えられます。

原始的な「貨幣経済」では、貝や石が「貨幣」として用いられました。
「貨幣」は偉大な発明です。
「実物」の交換の間に、抽象的概念である「貨幣」を介在させる事で、
「富」のストックや移動が容易になりました。
例えば春に収穫した野菜を、「貨幣」に変換し、
秋に「魚」と交換する事が出来る様になったのです。

近代において国家と経済レベルが巨大化するに従い、
「貨幣」の存在はさらに重要になります。
「将来的な収益」を確保する為に「資金」を借りるという行為が発生したのです。
「貨幣」という抽象概念化された「富」は銀行に集める事が出来、
銀行は「融資」によって、資金を必要な所に効率的に投資します。

「貨幣」が抽象化を加速する中で、大きな問題が発生しました。
「投資」は「現在の貨幣」で「将来の富」を買うという時間を超越した行為ですが、
将来の富を大きく見積もった場合、現在流通する「貨幣」では不足する事態が発生します。

ニクソン・ショックはある一面において、
金兌換によって発行額が制限されている「貨幣」の限界でした。
当時の新興国である日本やドイツの将来的な成長を達成する資金が
当時のドルの発行額では不足する様になったのです。

そこでニクソンはドルの金兌換制度を廃止します。
金貨や銀貨が「紙幣」になった時点で、
「貨幣」は末に「現実の価値」を喪失したバーチャルな存在でしたが、
金兌換制度がかろうじて「貨幣」に現実を担保していました。
ニクソンショックとは、金兌換停止による「貨幣の完全バーチャル化」とも言えます。

■ 「ルール」こそが「信用」 ■

現在において「貨幣」は未だに「紙幣や硬貨」という「リアル」を残しています。
しかしクレジットカード決済や電子マネーに世界では
「貨幣」は完全にバーチャルな存在にシフトしています。

「バーチャル=仮想現実」とした場合、その世界を成立させる要因は「ルール」です。
コンピューターゲームで世界を確立させるのは、それぞれのゲームの「ルール」です。

二クソンショック後、マネーというバーチャルな存在は「ルール」に支えられて来ました。
その「ルール」を人々は「信用」と呼んだのです。

「ルール」は至って簡単です。

1) 個人で勝手に通貨を発行してはいけない
2) 通貨は中央銀行が発行しなければならない
3) 国家は中央銀行の発行する通貨を借りて、経済を運用しなければならない
4) 国家は中央銀行に利息を払わなければいけない
5) 国家は勝手に「政府通貨」を発行してはいけいない
6) 中央銀行は原則として国債の直接引き受けはしない
7) 中央銀行は通貨を独自の判断で発行し、市場に供給出来る
8) 中央銀行を「金利」によって市場の通貨供給量をコントロール出来る
9) 中央銀行に「通貨」が戻る際には「利息」が付いていくる
10) 利息は何処へ行くのだろう・・・当然中央銀行の株主か?

これが現在の「通貨のルール」です。

この「ルール」を逸脱しない限り、「経済というゲーム」は継続します。
ところが誰かが「ルール」を破ったのです。
ルールを破ったのは「各国の中央銀行」でした。


■ 必要以上に通貨を供給した中央銀行 ■

アメリカで現在起きている事は、「住宅バブルの崩壊」です。
住宅バブルは、グリーンスパン前FRB議長が、バブルを放置した事に端を発します。
アメリカの中央銀行が経済の実態以上に「通貨供給量を増やした」結果がリーマンショックです。
必要以上に供給された通貨は、「バブル」を生み出します。
そして「バブル」は中央銀行の金利引き上げによって、まさに泡と消えます。

ヨーロッパでも金融改革と東西融和の後に、投資が活発化して通貨供給量が増えました。
ヨーロッパもリーマンショック以前はバブル状態だったのです。

日本は欧米諸国のバブルの実験台の役割を果たしました。

経済の「ルール」を無視して供給された「過剰な通貨」は
「通貨システム」というバーチャル世界のルールを逸脱した存在です。

■ シャドーバンキングという新たなバーチャル ■

さらい世界経済は「シャドーバンキング」という新たな「ルール」をプラグインしました。
経済の拡大が無ければ「通貨システム」というバーチャルは崩壊するので、
無理やり見せかけの経済成長で資金需要を膨張させてゆきます。

ところが、シャドーバンキングは単なるプラグインの新ルールですから、
「通貨制度」というルールの土台が揺らいだらら、機能しなくなります。

■ 中央銀行の国債直接引き受けは「ルール違反」か? ■

本日の「株式日記」さんが紹介されている高橋洋一氏の記事は非常に興味深いものがあります。

「今年度(2011年)は30兆までは日銀に国債を直接引き受けさせることが
できるんだけど、今年は日銀の直接引き受けは12兆になってしまっている。」


「世界一やさしい「増税なしの」復興財源捻出方法 ―― 18兆円の「日銀埋蔵金」とは何か? 高橋洋一」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111011-00000301-synodos-soci

1) 財務省は依然から日銀に国債を直接引き受けさせている
2) その額は年額30兆円である
3) 毎年償還期限を迎える国債が30兆円ある。
4) 償還された国債は、基本的にはロールオーバーされる
5) 本年度は日銀は12兆円しか国債を直接購入していない
6) 残り18兆円の引き受けで、増税無くして復興予算を捻出できる。
7) 日銀はこの直接引き受けを「黙っている」

リーマンショック後、世界の中央銀行は大規模な国債の直接引き受けをしています。

「中央銀行の国債直接引き受けは、通貨制度の信用を毀損し、国債価格の暴落に繋がる」
という世間の認識は、「通貨制度のルール」を確認する行為です。

ところがリーマンショック後はこのルールが大幅に緩和されています。
しかし、リーマンショックで国家の財政が悪化したので、
各国は国債発行によって財政赤字醜く膨れ上がらせました。

現在のギリシャ/ユーロ危機の本質は、国債の信用危機です。
各国が現在の通貨システムのルールを守らなかったので、
「国債」と「通貨」の信用が脅かされているのです。

■ 「ルール」を作るのも、守るのも、破るのも金融資本家達 ■

ユーロ危機やドル危機の本質は、
「ルール」を作った者達が、自ら「ルールを破り」
さらには「ルールを破った事を自ら糾弾している」だけの事です。


だから私の目には、金融危機は金融資本家達の自作自演にしか見えませ。
一方、高橋洋一氏の様な観点に立てば、日銀の国債直接引き受けをしても、
日本国債の信用は破綻する事は無い・・・と、なります。

「リフレ論者」の論点を極論するばらば、
「ルール」を破ってもバーチャルなルールだから大丈夫
となります。

一方「反リフレ論」がどう考えるかと言えば、
「ルール」を破れば、ロスチャイルドを初め金融資本家達が制裁を加えるであろう
となります。

■ 「ルール」とは変更されるもの ■

ニクソンショック以降のバーチャルな通貨システムは既に破綻しています。
しかし、それは「現行のルール」の上での話です。

「ルール」自体を変えてしまえば、「信用不安」は発生しないのかも知れません。

いずれにしても、国家債務をルールに則って処理したら、
先進国は今後20年も30年もの停滞期に沈むかも知れません。

そんな、悠長な事を彼らは好まないでしょうから、
当然「ルール」は変更されるものと思われます。

しかしその一方で、ルール変更には誰もが納得する理由が必要です。
私はそれこそが、今後発生する世界的な金融危機なのだと思います。

「金融危機」は回避すべきものでは無く、発生させられているのだと考えるならば
年末に掛けての金融のメルトダウンは不可避ではないでしょうか?