ぱそらぼ (ぱぁと1)

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心の逃亡

2009年11月17日 | 命の生き方
英国人女性死体遺棄事件で市橋容疑者が2年半ぶりに逮捕されました。自宅から素足で飛び出したまま、ふっつりとその行方は知れませんでした。事件が急展開し始めたのは、よく似た男が整形手術を受けたとの通報と、その際の写真が公表されてからでした。しかし逮捕後も、取調べには応じず、食事にも一切手を出していないそうです。

恐らくは彼が女性の殺人にも関与しているものと誰もが想像しています。多分、その事実から一番遠いところに身を置こうとしているのが彼本人です。自分のしてしまったこと自体が大き過ぎて、自分で背負いきれないのが本音のところではないでしょうか。その数日間を消しゴムで消したくて、実際に頭の中からそれを消し去って、2年半を過ごしました。

消し去ると言うことは、そのことを悔やむことも、身悶えて嗚咽することもなく、ただなかったことにする…という真理です。そして逮捕されて尚、彼はまだ「心の逃亡」を続けているようです。警察に対してでなく、自分自身に対して、それを認めたら、振り返ったら、すべてが崩れ去るからです。

数少ない発言が報じられています。「自分は医者になれなかった」といった趣旨を口にしたと言います。両親が医者であり、(当然医者になることを期待されたにもかかわらず)彼は医者にはなれなかったらしいのですが、自分から積極的にそう吹聴すること自体に、彼の闇があります。劣等感にさいなまれている人には2通りのパターンがあります。1つは、事実を避けようとするタイプ。出来ないのに出来る振りをする、気にしているのに気になど留めぬ素振りを見せます。もう一方が、出来ないことを自虐的に言ってみせるタイプ。周囲が嫌気がさすほどに、殊更ダメだと言って見せる心理が働くようです。どちらが闇が深いかというと、私は後者だと思っています。パソコン講座に関わっていると、思うように習得できない自分と向き合わざるを得ない場合が少なからずあります。その際、必要以上に自分自身を傷つける発言をされる方には要注意なのです。本当は心が葛藤を繰り返しているのに、切って捨てるかのような発言で、自分の心に刃を立てて辛うじてプライドを守るという微妙な心理には、根気良く根気良く語りかけるしか、打つ手がありません。こちらがめげそうになりながらも、繰り返し繰り返し語りかけると、ある一瞬に、心に手が届く時があります。

自分を高めること、自分を諌めること、自分をいとおしむこと、自分の頭を垂れること。幼い頃に教えておかねばならないことのように思います。


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