第二音楽室、読了 2010-11-15 | 読書【読了】 佐藤多佳子「第二音楽室」(文藝春秋)を読了。 小学生、中学生、高校生の4人の女子を主人公に 4つの音楽というよりは演奏(play)に関する物語。 佐藤多佳子らしさが出るお話ばかりで、 表題「第二音楽室」とラストの「裸樹」が良かったです。 どちらも平凡な主人公が一目置いた非凡な誰かに惹かれながらも成長するお話です。 収録作はどれも、昨年までに発表されたものばかりで、 来月刊行予定の中篇「聖夜」に併せての出版なのでこうなったのでしょう。 季節的にもぴったりな感じの「聖夜」も非常に楽しみです。
ピスタチオ、読了 2010-10-24 | 読書【読了】 梨木香歩「ピスタチオ」(筑摩書房)を読了。 舞台をアフリカにということで嫌な予感をしながら読み進め、 渡り鳥の記述がたくさん出てくるあたりで、 エッセイ「渡りの足跡」のことを思い出し、 「水辺にて」(ちくま文庫)の文庫本あとがきの内容を思い、 やっぱりダメかと思ってしまった。 具体的に何がダメなのかはいくつかあるのですが、 今の私の感覚に合わない。 仕方ないのです、服だって何年も着れるわけでもないし、 ずーと同じ小説家の本を追い続ける方が、おかしいわけだし。 ここ最近のもののにおいというか文体というか、 何かがどこかで根本的に違うのです。 今の私には、この物語ははっきり言ってダ○クです。 肯定的に受け止めたいとは思うのですが、う~ん。 イメージを越えて欲しい 既存の、あるいは未知の、イメージを越えて欲しいのです。 その勢いが欲しいのです。 たぶん、それは批判的とか否定的とかそういう事ではなくて、 今の私自身が求めているモノが 本の中の物語にないからなのかもしれません。
哲学者とオオカミ、読了 2010-10-17 | 読書【読了】 今年、イチ押しのマーク・ローランズ「哲学者とオオカミ」(白水社)を読了。 オオカミとの生活という御伽噺のようで、 生を感じる現実の中の物語。 内なるサルとの闘い、葛藤。 時間を認識するとは、瞬間を生きること。 特に最後の2章を興味深く読んだ。 途中、間延びするところもあるけど、なかなか読ませてくれます。 犬好きにもお薦めの一冊です。
ときめきに死す、読了 2010-10-03 | 読書【読了】 丸山健二「ときめきに死す」(文春文庫)、読了。 何だかよく分からない所がおもしろいと言われると、 本当にそうなのかと疑ってしまう。 アルペン・ツーリングのラストに吹いてしまった。 まあそうだろうね本音は…。 ついで「丸山健二自選中篇集」(文藝春秋)を借りてくる。 (1991年刊、800ページで4000円。お布施か何かだろうなたぶん) 少しずつ読んでいくしかないです。 並行して、多和田葉子「ゴットハルト鉄道」(講談社)を読む。 こちらは何だかモチーフだけでお腹いっぱい。 表題作のみで十分かも。 ずっと本棚に入らない本が80冊ほど溢れています。 先月60冊買ったのでもう買いません、今年は。 うーん、完全に消化不良気味です。 新刊書店だけで過ごします残り3ヶ月は。
身の上話、読了 2010-08-19 | 読書【読了】 佐藤正午「身の上話」(光文社)を読了。 中々、図書館で借りれなかった一冊で、漸く読めました。 いや~、やられました、流石、佐藤正午。 本当にノンストップで、こんだけ読ませてくれるんだから、もう素敵過ぎ。 前々作、前作、「5」、「アンダーリポート」とは異なり、 今回は、暗黒面であります、つまり、救いがない。まあ、それがいんだけどね。 内容はネタバレになるからあんまり触れられないけど、 タイトル通りの身の上話ですが、 途中から変容(音楽なら転調)していく当たりは最高!! 今回は、文字のイメージではなく、 食べ始めたメロンの裏側は気付いたらスイカになっていたという感じ。 (意味不明ですが…) こういう小説が、何年かに一回は読めるのだから、 寡黙な作家でいいんです、この方の場合は。
ふたりの距離の概算、読了 2010-07-04 | 読書【読了】 古典部シリーズ第5作、米澤穂信「ふたりの距離の概算」(角川書店)を読了。 ソフトではなくハードカヴァーなのが気にくわないですが、 (表紙も何だかシリーズで統一して欲しい気がします) 内容はいつものビターな青春モノといったところです。 今回は【歩行祭】という有り触れた題材です。 謎かけは簡単だった、かもです。 (タイトルとキャラの名前で、何となくバレてる) うーん、異性キャラ(大日向友子)しか出てこないので、 次回は同姓キャラに期待。 ただ、4者の関係を他から視点を与えるという意味で布石となる一冊です。
渡りの足跡、読了 2010-05-04 | 読書【読了】 梨木香歩「渡りの足跡」(新潮社)を読了。 装丁がきれい過ぎるので分かってはいたのですが、内容にはがっかり…。 こちら側の期待が大き過ぎるのです。 本業は作家なのだから、その作家の描く小説を読まなければ評価しようがないのです。 エッセイの内容も見切り発車な感じがして、私には苦しかったです。 むしろ、「渡り鳥」という内容よりもエッセイを書くことにこだわることが 作家の本質をぶれさせている気がします。 とはいえ、この本を書きたかったと言われればそれまでで、 こちらの求めるものと作家の思いは違っていて、当然なのですが…。 枢密なお付き合いは、ここ数年の作品からは遠のいてきたので仕方ありません。 うーん、好きな作家が好きだった作家になるのには慣れていますが、 ちょっと、これは悲しいぞ。
FT157、白い女神 2010-04-04 | 読書【読了】 いい事もあるもので、 ジェイン・ヨーレン「白い女神」(ハヤカワFT文庫)を漸くゲットしました。 光のジェンナと闇の妹スカーダの物語。 神話、伝説、歌、物語の4拍子。 1989年発行(日本版1991年12月刊行)。 探し続けて10年越えて、漸く、ようやく見つけることができました。 実際には古本屋でニアミスが二度あったので、三度目の正直というところなのですが、 感慨深いものがあります。 光と闇の姉妹は何度か、遭遇しているのですが(といっても三度くらいですが…)、 続編の白い女神の方は中々お目にかかれず、諦めていました。 たぶん、発行部数も少ないけど、売れていないからなのか、大変少なくて困っていました。 それがふらりと立ち寄った新古書店にあるではないですか。 3月~4月の引越しシーズンには、やはりたくさんの古本の移動があるようで、 チェックにいかないと、ダメです。 じっくりと読ん返していきたいです(ほとんど忘れているので…)。 ------------------------------------------------------------------------------------ 2時間半後、読了。 いやー、久々の大団円でした。 設定のおもしろさは前巻「光と闇の姉妹」で語られ、 物語の意味するところ、その行く末はこの第2巻で語れます。 第1巻では、スカーダ登場シーンが、 第2巻では、中盤からクライマックスに向けての流れが非常に苛酷。 第2巻では、主人公ジェンナもいいけど、司祭ぺトラが一押しのキャラです。 こういうファンタジーもの、他にもないかなーと思ってしまいます。 「十二国記」以外にもないかな…。
井伏と太宰、読了 2010-02-28 | 読書【読了】 加藤典洋「井伏と太宰 ふたつの戦後」(講談社)を読了。 井伏鱒二と太宰治の関係は、師弟関係というところであるが、 色々と込み入った事情があるのは有名な話です。 まあ、その関係にちょっと違った角度から光を当て、 自論を重ねるように展開したのがこの一冊の評論である。 と言えば、聞こえがいいですが、ある程度の事実に基いた推論であり、 どこまでこの通りであるかは、あまり問題ではないのかもしれない。 とはいえ、私としては、 太宰治「人間失格」と三島由紀夫「仮面の告白」の関連性や 井伏鱒二「薬屋の雛女房」と太宰治「姥捨」の同時性など、 何だか、知らない情報に対して興味津々です。 この本に準ずるものとしては、言及されている、 猪瀬直樹「ピカレスク 太宰治伝」(文春文庫)の他に、 井伏鱒二「太宰治」(筑摩書房)、 津島美知子「回想の太宰治」(講談社文芸文庫)、 太田治子「明るい方へ 父・太宰治と母・太田静子」(朝日新聞出版)、 などを読んでみないと、とは思っているのですが、中々進まず。 太宰ブームも3月の映画でピークを迎えるのかと思うと、 一年が早くて、泣きそうです。
真昼の暗黒、読了 2010-02-24 | 読書【読了】 アーサー・ケストラー「真昼の暗黒」(岩波文庫)と 東直子「水銀灯が消えるまで」(集英社文庫)を読了。 前者はタイトル通りの納得のオチでした。 キングの「グリーン・マイル」以来の監獄小説のおもしろさを知りました。 後者は、穂村弘との共著も多数ある歌人の初小説です。 不思議な余韻の残るお話でした。 歌人の書く小説とはどんなものだろうか、という思いで読んでいたので、 そこまで当てが外れたものではなく、これまた納得の一冊でした。 他の作品も読んでみたいなと思いました。 最近、ものすごく忙しくて寝不足だったので、少々体調不良。 読書も思ったほど進まず、消化不良気味です。 次は、葬送の記が収録されている幸田文「父・こんなこと」(新潮文庫)の予定。 小沼丹「黒いハンカチ」(創元推理文庫)も併読中。 小説ばかり飽きてきた感があるので、新書に逃げる可能性もあります。