アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

自分の命は自分以外のことに使われると良い…

2010年07月09日 | Weblog
「私のいのちは、もともと与えられたものだから自分以外のことにこのいのちを使われればよいと思うようになり、私の人生感はすっかり変わりました」この一文に接し、少なからず衝撃を受けました。
 日頃から、「自分が一番大切、自分の命を他人のために使われてなるものか」という了見でしたから。180度違う考え方があることに正直驚いたわけです。

 自分以外のことに自分の命を使われるとはどんなケースが考えられるか?
1 自爆テロ。戦闘機ごと、敵の軍艦へ突っ込んでいった旧日本軍の戦闘機…このようなことをするのは日本人だけだろうと思っておりましたが、違いました。テロリストは、「自爆」します。「自爆用の人員募集」に列が出来ている。
2 身代わり。「オレの命を差し出す。その代わり、他の人質を解放してくれ!」これは、ヒーローになります。死んでヒーローになってもしょうがないとも思うが…。
3 生涯を、自分以外のことに捧げる。「定年退職したから、遊び放題ランドだーい!」という人は、当然自分のことに自分の命を使っています。

 冒頭の一文、書いた人はたびたび御登場をいただいている、日野原重明先生。日野原先生が、どのような場面で、「自分のいのちは自分以外のことに使われればよい」と思うようになったか?
 40年前、よど号ハイジャック事件(共産主義者同盟赤軍派が起こした日本航空機ハイジャック事件)がありました。この、よど号に日野原先生が乗っていた。羽田から福岡へ行くはずが、金浦国際空港(ソウル)へ行ってしまった。この時日野原先生は、59歳。犯行グループが「この飛行機は我々がハイジャックした」と言ったが、なにしろ日本初のハイジャック事件のため、「ハイジャック」という言葉の意味を知らない乗客が殆ど。この時の逸話の一つ…日野原先生は、「ハイ!」と手を挙げ、「ハイジャックとは飛行機を乗っ取って乗客を人質にすることです」と、日本人乗客のために説明した…。
 三晩四日飛行機の中に閉じこめられ、北朝鮮へ行かなければ飛行機を爆破すると犯人グループに言われ…。この状況下であれば、「いのち」を考えますよ。先が見えないだけならいざ知らず、いつ命がなくなるかわからない。そんな状況が、1日、2日、3日と続いていく…。
 そんな中で、「いのちは、もともと与えられたものだから、自分以外のことにこのいのちをつかわれればよい」と思うようになった。
 
 この事件、金浦から平壌へ向かう際、乗客全員の身代わりとして、当時の運輸政務次官の山村新治郎さんが乗り込んだ。「男、山村新治郎」として、国民の心に残っている名前です。山村さんは、18年前、自宅で娘さんに殺害されてしまいました。一時は、身代わりで、「自分以外の人を助けるために命を捧げようとした」山村さん。なんとも気の毒な命の使い方になってしまいました。
 犯人グループ9人のうち、3人が北朝鮮で不審な死を遂げています。この3人の命の使い方…?理想郷を作ろうと、北朝鮮へ行ったんですよね?

 日野原先生は、98歳の現役医師。スケジュールは数年先まで一杯という。
100歳になってからの予定を入れるとは!「自分の命は自分以外のことに使う」という人生観。私の人生観…まだ、自分の命を自分のために使おうとしておりますが…。