ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

○○さん

2009-01-20 09:06:05 | 第1紀 生きる
「大将」
「親方」
「マスター」
「店長」
「旦那さん」
「社長」

店にいるとお客様からいろんな呼ばれ方をする。

「大将」 じゃあ、ちょっと和食か寿司屋の感じがする。まさか「裸の・・・」なんて意味じゃないだろう。

「親方」 も同じく寿司屋さんみたい。、あさか相撲部屋の「・・」じゃないだろう。いま時は力士も卒業して親方になるとすごくスリムになっているから。

「マスター」 はいい感じ。あこがれの学生街のスナックの経営者みたいで、ついついグラスを拭いたりしたくなる。相手が女学生やうら若く清楚なOLさんあたりだとなおさらなのだが、だいたいこの呼び方をするのは男も女も中年以上だ。恐らく、今の若い方はこの呼称を持つ主がいる店なんぞには入ったことが無いのだろう。

「店長」  ってのは普通にある。でもワタシにも少しばかり余計なプライドが働いて、どうもしっくりとこない。まあ、わかりやすくていいんだけど。

「旦那さん」  なんて言うのも昔気質かな。いい感じですね。

「社長」  というのは取引先の方。それ以外の方に言われると、頭に「タコ」がつく「・・・」かなと、ついうがってしまう。あまり好きな呼びかけでないことは確か。

たまには。「オーナー」と呼ばれることがある。
従業員にはこう呼ぶように言っている。
だから知り合いはこういう。
言われて楽ちんであるのだから、好きだ。
本来は、自ら働くのではなく、楽隠居みたいなのがあこがれで、カウンターの隅にポツンといて常連さんが来ると声かけて飲む、みたいなのがいいわけである。


小さいころは母方の実家に預けられていた時が長く、同じ名前の歳の近い従兄弟が隣にいたので相性で「・・・」ちゃんと呼ばれていた。
余談だが、今の会社の名前はこれから由来する。
親戚の集まりに行くと、いい歳したワタシもこう呼ばれるのだが、ぜんぜん悪い気はしないのである。

学校に入ると名前で呼ばれる。
最初は「・・・」ちゃんだ。
次に「・・・」くんで、
もう少したつと「・・・」さんも混じる。

社会人になるとやはり名字の「・・・」さんと、名前の「・・・」さんに、年上からは「・・・」くんとなる。
すこしよそよそしい。

そして会社勤めの方々には職名で呼ばれることも多いのだろう。
「主任」
「係長」
「課長」
「次長」
「部長」
「専務」

「主任」とか「チーフ」とかはなんか微笑ましい。
働いている姿、そのものである。

「係長」も以下同文。

「課長」「次長」「部長」となると、その相手により同じ呼びかけでも微妙に感情が混ざるような気がする。
恐れおののいたり、尊敬したり、軽蔑したり、甘えたり、距離を置いたり、時には愛情を交えたり。

それでも人を役職名で呼ぶのだからすごい。

言う人もすごいが、聞く人もすごい。
満足してふんぞりかえっている人もいれば、本当はこんな役職じゃあ無いんだと不満げな方もいらっしゃるだろう。
昇進して、新しい「四股名」をいただくのが、嬉しい方もいれば、恥ずかしい方もいるのだろう。

最初の会社である時から「さん付け」というのが上から指令され、それまでの、さん、くん、役職名、ちゃん、あだ名などから、全てが普遍的な人格である「さん」になった。
こうなると無機質である。

呼び方が変わると、やはりよそよそしさがつきまとう。

これは役職定年制というなんともやるせない制度のせいもあったと思う。
部長がある歳を境に、規定ですからと役職を外され前の部下の下で働く。
まさかあの部長に、明日から「くん」というわけには行かない。

あんなこんなで、みんな「さん」で呼ぼうとなる。
一つの知恵であり、表書きはいいことずくめ、全くその通りであるが、暖かい空気はやはりこれだけで変わってくる。


最初の会社でも、次の会社でもなぜか名前の「・・・」さんで呼ばれることが多かった。
同僚や上司は別として(呼び捨てが多いからね)、女子社員や取引先の方はほとんどが「・・・」さんで、こう呼ばれることがとても好きだった。
だから次の会社で小さな役職がついた時も、できれば「・・・」さんで呼ばれてほしかったが、段階が進むとまわりの目もあって仲のよい職員も役職名をつけて呼ぶようになった。
すこしよそよそしく、そしてすごく残念だった。

いまでも以前の取引先の方が遊びに来ると、「・・・」さんと呼ばれる。
その時のワタシがなにかしら心の中ではにかみ、嬉しく思っていることは相手もまわりの方も、もちろん知らないであろうが。