「書を捨てよ 町へ出よう」と言ったのは寺山修司。
ワタシの高校時代は、「書を見に 町へ出よう」と毎日、少し外れた学校からてくてく歩いて街中の本屋へ行っっていた。
今も同じで、「ちょいと夜回りする」と言っては、大通の酔い客状況や他のお店の入り具合を見に行く「ついで」に本屋による。
もっとも、その本屋に長居して本業に戻るのを忘れるときがあるのが痛いのだが。
まあ、それはそれとして冒頭の寺山の言葉はある意味で核心をついているのであって、少しばかり「マーケティング」というつかみ所の無い世界に足を踏み入れていたとき、やはり迷ったら店を見よ、お客様のかごの中を見よというのが、ワタシの数少ない信念であった。
このマーケティングとやらで幅を利かしている「奴ら」は、まあその世界の本なんかを熟読して、なにやらわからぬ横文字を並べて煙に巻くのがうまいのだが、でも原点はその消費時点にあると思うのだ。
前置きは長いのだが、ようするに一昨日、そういう都合のいいごたくを並べて取引先と話題の店巡りをしたのであった。
例によって、メニューの詳細や感想は素性が割れているワタシには書けないし、書かない。
あくまでもその店に滞在したときの心模様を少しばかり披露したい。
一店目のテーマは、「駅前立地」と「串焼き」であって、ちょいと気になるお店へ予約をして出かけた。
行く途中の呑み屋さんは、給料日前日の24日だというのに、どの店もけっこう入っている。
なるほど、噂通り、「駅前」が最近はいいんだな。
早い時間からお客様が入るってのも聞いた通りである。
そして目当ての店、二回へ階段を上る。
へえ~、オッッシャレ~。
焼鳥屋っていう普通に持っていた概念とは少し違う内装。
皿も洒落ているし、少し草食系のヤワな男性アルバイトも、音量を押さえたBGMのJAZZもなかなかマッチングしている。
カウンターはあるものの、ちょいとおじさん方が気楽にっていうよりは、オッサレなカップルにでも似合いそうなお飾り的ポジションである。
まあ、しかるにほどほどに混んでいる店内にいるのは、ほとんど男性。
しかも、ネクタイを「最初から」はじしている、ぱりっとしたワイシャツを着込んだ公務員風、銀行員風、保険屋さん風、場所柄、JRやJTなどの大手企業のホワイトカラー風なお客様が多い。
いいね~。
飲みなれているわいな。
串は18センチかな? 普通の焼鳥屋さんより長く、身もぎっちりと詰めているから180円の値段を高く感じさせない。
焼き方も余計な炭を出さない、まるでオーブンでも併用したような焼き方で、身のしっとり感も残している。
手羽系統に力を入れているのか、なかなか裁き方もいい。
残席も全て予約で、なかなか繁盛店だ。
軽く6本を食べ、また路を帰る。
覗きながら行くのだが、あいかわらず駅前の店は混み合っている。
2番予約で取り逃したあの店もいい感じの入りようである。
開運橋を抜けると、しかしいつもの元気のない大通。
次の店のテーマは「ホルモン」。
しかし「馬」のホルモン。
その通りの名の店に上がる。
松園店の常連である寿司屋の紹介だ。
一度行ってみてご覧と言われ気にはなっていた。
その馬のホルモン、「ばっちょう」がうまい。
以外であった。
以前、扱った国内物もそうであったが、概してたいそう臭く、その処理にはほどほどまいった記憶がある。
ところが味噌味ベースのスープに浮かぶ、そのしこしこっとしたいい食感のホルモンはすごく上品に感じ、臭いは全くない。
寿司屋のおすすめで、一つの収穫。
馬刺しとつまみで頼んだ玉子焼きは、まあまあ平凡であったし、少しお高い値付けの「麦焼酎」もさらっとした量でした。
そう言えば、さっきの焼鳥屋のほうは、ちょいと高めの値付けのビールが、中ジョッキというよりは「中と小の中間レベル」の量であった。
愕然!!
ビールのみにはちょいとつらい。
昨年の値上げがきいているのは、どこしも同じであるから、いたしかたない。
ワタシもまねすればいいが、そうもいかない事情=飲んべえ気質がある。
ここで店から常連客二組来店の連絡が入り、戻る。
ありがたい。
給料日前、24日の来店組数の半分は常連数組とその方のおすすめでいらしゃった高校の後輩。
最後に、これも高校の同級生の部下たちが、「上司に領収書切って来いと言われて来ました」なんて、うれしい。
そういえば、こんな店もあった。
しばらく前の話である。
新規開店のお店。
開店三日目。
へえ~、綺麗な内装にしたね~。
従業員もいっぱい。
なんて、席に通され、ただいまおしぼりをと言われてから10分以上。
ドリンクをオーダーして10分以上、限りなく、以上。
とりあえずのキムチに10分以上。
まあ、我慢しきれず催促したのだが。
それから「一気に」焼肉が来るまで14~5分。
食べ終わって、気を長くして待った、ファーストオーダーの冷麺がそれから20分。
こそりと覗いた厨房は4名。
フロアもそれくらい。
まあ、こんなもんだな、開店当初だから。
我が身を省みてもそんなもんだった気が、「しないでもない」。
それに、郊外の大型店など、いまでも週末はこんなもんで平気な顔をしているし。
・・・・などと。
ただただ、なぜか直接的に「甘い」、冷麺についてきたカクテキの後味に閉口しながら店を去った。
これも本場の味かもしれないと自分に言い聞かせながら、やはり飲食と言うのは個人的趣向の違いで成り立つものと確信する。
ウチにはウチの味が気に入った人しか来ないし、だからリピート率をそんなに気にしないで来たわけだしネ。
他とは違う薄味のモミダレやツケダレに戸惑う人の方が多く、「甘いタレ」はないのと何度か聞かれながら、それがウチの主義ですとお断りしてきたわけで、お子様連れやそれまでの焼肉屋の味になれた人にはとても受け入れられなかったかもしれない。
その「受け入れられなさ」を素直に心に刻みながら、それでも変えないできた訳だ。
まあ、いいさ。
そんなや、こんなやを考えながら、だからいつもついつい自分と比較しちゃいながら、相手も認めるかわりに自分も正当づけてしまう、楽な生き方をしている訳です。
あ~あ、視察研究もこのように「つらい」んだよ。
相方さん、理解してネ!!