あれは,あれで良いのかなPART2

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当たり前田のクラッカー

2005年11月14日 21時47分38秒 | メディア論
東武鉄道において,運転席に子供(家族)を乗せていたことを理由に運転士が懲戒解雇となる旨報道発表したところ,それに対して「厳しすぎる」等の苦情の電話やメールが殺到しているとのことです。

そもそも報道する内容か?

最近の大手企業はコンプライアンスの観点から,社員を懲戒解雇にする場合,一応記者発表するという取り決めになっている場合が多く,今回もその一環として東武鉄道が発表したものと思われます。
ただ,それに対する一般の方の反応はともかく,マスコミの報道についてもかなり過剰になっているのではないかと思わざるを得ません。なぜなら,懲戒解雇処分自体,どこの会社でもある話ですし,おそらく日本全国からすれば,毎日1件以上は発生しうるものだからです。

ところで,今回の件についてですが,まだ正式な処分発表前であること,当該社員のプライバシーを配慮すべき事項であること,個人的には前記のとおりニュースとして取り上げる案件ではないと考えていることから,特にコメントはしません。
ただ,一般論としていろいろ考える上で,次のことを皆様に質問したいと思います。

懲戒解雇とするか否かの基準って何でしょうか?

おそらく,この答えは「規則違反行為があり,かつ解雇することが当たり前と考える事情がある場合」ということになるでしょう。

では,「当たり前の事情」とは何でしょうか?

次の実例や想定事例を踏まえて,懲戒解雇になるかどうか考えてみてください(前提として,すべて服務規則に違反しているとする。)。
1 運転席に自分の子供を乗せたが,日常からタクシー代わりに子供を乗せていた場合。
2 運転席に自分の子供を乗せたところ,子供が操作盤をいたずらしたために,事故が発生した場合。
3 運転席に運転士の友人(成人)を乗せていたが,静かに座っていた場合。
4 運転席に運転士の友人(成人)を乗せていたが,電車オタクであることを理由にその友人から料金を徴収していた場合。
5 電車が車庫にある状態で,会社に無断で運転席に近所の子供達(ボランティアで運転士がサーカーチームのコーチをやっている少年団の子供達)を乗せてあげて,自由研究の一環として,鉄道の仕組みや安全に対する取り組みなどを説明していた場合。
6 運転士が運転中に携帯メールを操作していた場合(実例)
7 運転士が運転中に居眠りをしていた場合(実例)
8 運転士がうっかりミスを1か月に3回以上繰り返していた場合(実例)
9 運転士が私生活で自動車の酒気帯び運転をして警察に検挙された場合(実例)
10 運転士が酒気帯び運転(二日酔い)で電車を運転した場合(実例)
11 運転士が運転中急病になったため,免許のない車掌が一時的に運転を行って運転士が控える駅まで運行を行った場合
12 運転士が運転席でヘッドホンステレオを聴きながら運転していた場合(実例)

以上の項目については,いずれも服務規程に違反するため,懲戒解雇の対象となり得ますが,果たしてこの中のどれが懲戒解雇となりうると考えますか?

ちょっと意地悪な質問でしたので,答えを先にいえば,「これだけの事情じゃどれも懲戒解雇となるか否か分からない」というのが正解です。懲戒処分は,明確に行為が規定されている場合を除いて,服務規程違反を基準としつつ,これまでの勤務態度や違反の内容などを踏まえて判断しているからです。
ちなみに,上記の「実例」については,懲戒解雇となったものと,停職,謹慎処分や口頭注意で済んだものなど様々です。また,同じことをやっていたが違う処分になったという実例もあります。

以上のことから何が言いたいのかというと,「当たり前のこと」を考える上では,単にタイトルだけ(表面だけ)を見ても判断できない,ということです。さまざまな事情を踏まえてこそ,初めて「当たり前のこと」が判断できるわけです。
そして,それは,100人中100人全員が同じ判断をするとは限りません。「当たり前のこと」とは,実は「独りよがりの結論」である場合も意外と多いのです。

これらを踏まえて,それでも東武鉄道に対して抗議や賞賛のメールや電話をしたい方はしてください。また,マスコミの報道についても,どこまで深くつっこんでいるのか,あるいは単なる感情論なのかを十分に見抜いて自分なりの考えを持ってください。

繰り返しますが,私としては,この件は「報道するに値しない事件である」と考えますので,今回の記事は一般論である,という前提で書いています。

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