春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕
北原白秋
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この歌を教えられて、北原白秋が大好きになった。高校一年生の国語の授業だった。激しく揺さぶられた。
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それでなくてさへわたしは悲しいのだ、泣き顔をしているのだ。夕日があかあかとあかあかと、真っ赤に泣いて、草原を落ちて、沈んで行く。
そこへ春の鳥が鳴く。鳴くとわたしは恋しい人を思い出してしまう。小鳥が好きだった恋人は、しかし、いまはもういない。
それを察して、春の鳥ゆ、どうか泣かないでくれ。お願いだから泣かないでくれ。
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この歌の観賞を、大塚先生が、わたしたちがこころの底へ降りて行くまで丁寧に、なさった。わたしたちはじわりじわり泣き出した。
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なそは禁止の係、結び。
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北原白秋は耽美主義の歌を好んだ。これは若い頃の作品。第一歌集の霧の花におさめられている。