これは芝桜。庭先の。
植えてからもう三年が経過している。
咲き続けている。
小さい小さい花。
小さい小さい花だけど、それで十分華やかだ。
これは芝桜。庭先の。
植えてからもう三年が経過している。
咲き続けている。
小さい小さい花。
小さい小さい花だけど、それで十分華やかだ。
純白の撫子の花。鉢植えを玄関先に置いてた。
それが草丈をすんすん伸ばして、咲いたよ。
でもなんだかひっそりとしている。
いるかいないか分からないようにしている。
10
今日は雨になるらしい。もうそろそろか。空も沈黙を通している。
畑に行って野良仕事に精を出して、寂しさを忘れているわけにもいかなくなる。
朝顔の種を買ってきている。
雨の降り込まないベランダに腰を据えて、思いの軸を切り替えて、浅緑色のよろこびの、種蒔きをしようか。
9
あの人がぴったりわたしに寄り添っていてくれるまでは寂しい。
わたしのコノハナサクヤヒメが、わたしに隙間なくぴったり寄り添ってくれるまでは、寂しい。
寂しいわたしの、そのもう一つの、裏側の寂しい半分になってくれる人なんて、しかし、何処を探しても何処にもいるまい。
8
寂しい。
どうしようもなく寂しい。
二月が三月になっても、三月が四月になっても。
梅が咲いて桃が咲いて桜が咲いても。
7
時が過ぎていく。この老人が、過ぎて行くまでを不安でいる。
だもんで、「半分は半分ぽっち」「所詮は所詮よ」などと嘯(うそぶ)いている。
じゃ、半分でいられる覚悟ができているかというと、それもそうではない。
しきりにしきりに寂しがる。百人分千人分万人分を寂しがる。
6
地球の向こう半分へでも行ってしまうのか。
行きはしないで止まって、明日になれば明日の大空として広がっているのだろうが。
時が過ぎる。何も待たずに時が過ぎていく。しきりにしきりに。
5
半分だけでも行くのか。残り半分が追いつくのを待たずして先へ行くのか。
暮れた空の行く先は何処なのか?
わたしが向かう行き先は何処なのか?
4
大空は、あんなに広く広がっているから、まさか、半分ぽっちなんかではないのだろうが、この老人の寂しい目からすればやっぱり半分で、残り半分を何処かにふっと置き忘れてきて、後ろを振り返ってそれを探しているようにも思える。日暮れの空。
3
お饅頭を割ると半分になる。
半分ずつを、仲良く頬張って食べるとおいしいものだ。
そういうことだってあるから、半分のいいところもあるのだけど。