即興詩 「おらあ おんなの人を 恋しがる」 薬王華蔵
おらあ、男だで。しょうもない男だけど、男だで。おんなの人を恋しがる。おんなの人を恋しがらないでいられたら、楽だろうにね。恋しがって恋しがって恋しがる。
そんなに恋しがって恋しがって恋しがるようなおんなの人が、いるものか。いなくてもいいんだ。恋しがってさえいればいいのだ。そういうおんなの人がいるということを、単に夢見ているだけで、いいんだ。
おんなの人はやさしい。とろとろやさしい。おっぱいを差しだしてくれる。
じゃ、それはおんなの人じゃなくて、おっかさんじゃないか。そうかもしれない。おっかさんに抱かれていると、すやすやと眠りにつけた。
なあんだ、だったら、おんなの人じゃないのじゃないか。すやすやと眠りに就きたいだけじゃないか。おんなの人は眠り薬なんかじゃない。眠り薬なんかじゃない。
生き生きとして生きている人がおんなの人なんだ。林檎のように、シャボン玉のように、はち切れて生きている人がおんなの人なんだ。