立ててやればいいのに。「オレは偉い」と言っているのだから、「そうだ」「その通りだ」「あなたは偉い」「あなたが言うまでもない」とお追従を言って、立ててやればいいのに。冷たい。冷たい顔をしている。それを通している。
これはいいことではない。いいことではない。
いいことではないことを、おれはやったのだ。
どうして、「あなたの言う通りだ」と言ってあげられなかったのだろう。偉いとか偉くないとかは、空に浮かぶ風船みたいなものだったのに。
立ててやればいいのに。「オレは偉い」と言っているのだから、「そうだ」「その通りだ」「あなたは偉い」「あなたが言うまでもない」とお追従を言って、立ててやればいいのに。冷たい。冷たい顔をしている。それを通している。
これはいいことではない。いいことではない。
いいことではないことを、おれはやったのだ。
どうして、「あなたの言う通りだ」と言ってあげられなかったのだろう。偉いとか偉くないとかは、空に浮かぶ風船みたいなものだったのに。
あくまでも、手前勝ってである。人を立てない。
せっかく、彼は大手を振って、振り翳して、「オレは偉いんだぞ」「おれはこんなことができるんだぞ」「おれは誰からも尊敬されているんだぞ」と言って、それとなく言ってみせて、やんやの拍手を求めているのに、オレは拍手をしてやらない。人は拍手を惜しまないでいるのに、オレは頑なにしている。口を十文字に結んでいる。ニヤリともしてやらない。
イヤなヤツだろうなあ、さぞかし。オレも偉くないくせに、人が偉ぶると、同調をしてやらない。
失礼失礼失礼。悦に入っている人がいる。悦というのは、どうも一人だけでは成り立たない。回りの拍手喝采を要求する。「どうだ、おれは凄いだろう」「おれは上手いだろう」「おれは賢いだろう」と触れ回る。鳴り物入りで触れ回る。年を取っても、それをしたがる。人前で、悦には入る。見苦しい。
僕は、寛容の精神が希薄なもんだから、白けている。拍手しない。喝采しない。誉め讃えない。こんな男ほどイヤなヤツはいないだろう。目の前で、白々しくして、阻止してかかるんだから。
「話し方のコツ」と題して、コツを心得ていると自認している人が講演をした。華々しく、大袈裟に、堂々と。そのコツのご披露に及んだ。「こうするんだぞ」「こうすれば人に感動を与えられるんだぞ」「これがそのコツだ」などとご披露に及んだ。なるほどなるほどと思った。そう思ったが、拍手をしない。喝采しない。
ひねくれた男がここにいる。笑わそうとしているのに、笑わない。これじゃ、どうしようもないのだ。笑わそうとしているときには、笑ってやるのが慈悲というものだ。それを心得ていない。協力しない。こういう男は実につまらない男だ。非協力的だ。成行を壊してしまう。
4時過ぎに帰宅。鞄を玄関にぽおおんと放り投げて、そのまま畑へ。空豆(こちらでは「トンの豆」と言う)の合間合間の草毟りをした。
肥料をやっているから、それを肥(こ)やしにして草も肥(ふと)っている。根が第一、図太い。深く張っている。それを小手先の鍬に類する器具で、ごそごそ耕して、引き上げる。日暮れまで、これをやった。そりゃ、トンの豆はほっとしただろう。草に埋もれていたんだから。空気も光も雨も、これでよく吸収できるようになったはずだ。
それをしたわたしは、さぞかし、彼らの間では尊ばれただろう。
今日は通称、高齢者大学の受講日。10時から始まります。1クラス80人以上いらっしゃいます。賑やかです。午前中は「いちごさん開発物語」のタイトルの講座です。午後からは何を聞くのかなあ。