知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

競争関係のない者を共同不法行為者として不競法2条1項14号違反の共同不法行為が成立するか

2011-03-21 15:53:43 | 不正競争防止法
事件番号 平成21(ネ)10043
事件名 損害賠償請求控訴事件
裁判年月日 平成23年03月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 その他
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

3 控訴人と被控訴人SNKとの競争関係が生じた時期について
 不競法2条1項14号の「競争関係」とは,現実に競争関係にある場合に限られず,将来現実化する関係で足りると解されるところ,前記前提となる事実経過記載の事実によれば,被控訴人SNKは平成13年8月1日以降,パチスロに関する事業を行っていたと認めることができるし,また,被控訴人SNK自身,本件書籍1の出版当時,パチンコ・パチスロ業界での事業展開を準備していたと主張している。
 そうすると,本件書籍1及び2が出版された平成15年4月10日及び同年9月10日当時において,被控訴人SNKがパチスロ遊技機の販売を行っていなかったとしても,競争関係が将来現実化する関係があったと認められるから,パチスロ遊技機の製造販売を業とする控訴人と競争関係にあったと認めるのが相当である。
・・・

5 被控訴人らと鹿砦社による外形的共同不法行為の成否について(被控訴人ら及び控訴人との間に競争関係のない鹿砦社を共同不法行為者として,不競法2条1項14号違反の共同不法行為が成立するか
 前記のとおり,被控訴人らは本件書籍1に記載された事実を流布し,被控訴人SNKは本件書籍2~4に記載された事実を流布したものである。
 そして,鹿砦社は出版社であり控訴人とは競争関係にはないが,被控訴人SNKと控訴人が競争関係にあることは前記のとおりであり,被控訴人サミーと控訴人が競争関係にあることは当事者間に争いがない以上,鹿砦社に不競法違反が成立しなくとも,虚偽か否かは後記で判断するところではあるが,外形行為の観点からみれば,被控訴人ら各自の行為において不競法2条1項14号該当要件を満たす以上,この点においては所定の「不正競争」に該当し,他の要件を充足する場合には同法4条による損害賠償義務の成立は免れないものというべきである。被控訴人ら指摘の最高昭和43年4月23日第三小法廷判決・民集第22巻4号964頁は,共同行為者の加害行為について不法行為者が賠償の責めに任ずべき損害の範囲について判断しているものであって,本件に適切でない。

(原審)
平成21年04月27日 東京地方裁判所 平成19(ワ)19202
裁判長裁判官 清水節


イ 幇助者は,法律上,共同行為者とみなされる(民法719条2項)ものの,被告らが共同行為者とみなされるのは,あくまで出版行為を行った鹿砦社の行為についてであって,同社の当該行為は,不競法違反とは評価され得ないものであることは,前記のとおりである。
 そして,共同不法行為が成立するためには,各行為者の行為が当該不法行為の成立要件を満たしていることが必要であると解されるところ(最高裁昭和39年(オ)第902号同43年4月23日第三小法廷判決・民集22巻4号964頁参照),出版行為の主体である鹿砦社に不競法違反が成立しない以上,被告らは,不競法違反とはならない鹿砦社の出版行為の共同行為者とみなされるにすぎないから,不競法違反の共同不法行為は成立しないと解すべきこととなる。

最新の画像もっと見る