徒然なか話

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不思議な高浜虚子の句

2022-07-25 21:35:55 | 文芸
 昨日のブログ記事「オシロイバナ(白粉花)」で取り上げた高浜虚子の俳句

  おしろいを つければ湯女や 五加木(ウコギ)つむ

 という句は不思議な句で、いくつか「??」となるところがある。
 まず、「おしろい」は「白粉」そのものなのか「オシロイバナ」のことなのかハッキリしない。例句集などでは「オシロイバナ」を秋の季語とする句に分類されている。ところが下五の「五加木(ウコギ)」は春の山菜であり季語でもある。つまり「季重なり」となるのだが、虚子が自らの俳句論を著した「俳句とはどんなものか」のなかで「季重なり」はあまり気にする必要はない、てなことを述べている。そのことよりも「オシロイバナ」が咲く秋と「ウコギ」をつむ春のどっちの季節の句なのだろうか。謎である。
 湯女(ゆな)は中世から温泉宿などで始まったらしいが、アカすりや髪すきのサービスをする女性が、今日いうところの風俗産業化し、さらに私娼化して御上の規制を受けるようになるというおきまりの経過をたどる。虚子がおしろいをつけた湯女を見たのは明治・大正・昭和のいずれかの時代だが、ふるさと松山の道後温泉だったのかそれともどこか別の温泉地だったのだろうか。
※右の絵は「千と千尋の神隠し」に登場する湯女