徒然なか話

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犬王(道阿弥)

2022-06-06 19:32:12 | 歴史
 今、熊本でも公開されている注目のアニメ映画がある。その名は「犬王」。室町時代、近江猿楽で天女舞の名手と謳われ、将軍足利義満の寵愛を受けた人物である。
 普段はあまりアニメ映画は見ないのだが、この映画の原作となった古川日出男著「平家物語 犬王の巻」を読んでいたので、どう映像化されているのか見てみたい。
 この物語には二人の芸能者が登場する。一人は近江猿楽日吉座の太夫の家に生まれながら、何かに呪われ異形の子として生まれた犬王。もう一人は子供の頃、壇ノ浦の水底で平家の神器に触れ、盲いられた友魚。犬王は親兄弟からも忌み嫌われながらも猿楽の能役者として成長していく。一方の友魚は数々の苦難を乗り越え、琵琶法師として大成していくのだが、この二人が出会うことにより物語は驚くべき展開を見せる。
 犬王の天女舞は世阿弥の能にも大きな影響を与え、今日、能の重要な要素である「幽玄」は犬王の芸風から始まったといわれる。
 犬王の後、近江猿楽は消滅するのだが、近江猿楽敏満寺座が奉仕していた多賀大社の地域住民の皆さんが現在、復元活動を行っておられるようで、多賀大社は僕が彦根時代に住んでいた高宮町に近く、初詣などにも行った馴染み深い神社なので、いつか復元された近江猿楽を見たいと願っている。
※右図は「二曲三体人形図」天女舞の図。世阿弥の能伝書を金春禅竹が写したもの