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徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

ホテル・カリフォルニアと日航機長

2020-06-15 21:43:17 | 友人・知人
 20代の頃、会社の担当者会議でよく東京に出張した。日帰りも多かったが、会議が2日以上におよぶ時は六本木にあった会社の寮に泊まった。
 ある時の出張の帰り、離陸を待つ機内でイヤホンから聞こえる音楽を聴いていた。それは昨夜、同僚たちと行った六本木のクラブでイーグルスのコピーバンドが演奏していた「ホテル・カリフォルニア」だった。少し遅れて隣にダンディな紳士が座った。この紳士、普通の人と様子が違っていた。離陸する時、頭を傾げてじっと聞き耳を立てていた。僕は気にしない素振りをしていた。飛行機が上空に上がって安定飛行に入った時、その紳士が突然話しかけてきた。「いや、私もね、この飛行機を操縦するもんですからね、離陸と着陸は気になるんですよ」そうですかと答えた僕に「今日の機長は上手いですよ」と続けた。それからしばらく、お互いの出身や会社のことなどを語り合った。すると共通の知人がいることがわかった。それは、僕の家の近くのMさんという老舗のお米屋さんだった。ちょっとコワモテのご主人は僕よりひと回り以上も上の高校の先輩だった。高校卒業後、防衛大学に進み、航空自衛隊に入ったらしいと聞いていた。僕が大学を卒業し、熊本に帰ってきた時、Mさんはすでに自衛隊は退職し、家業の米屋の主人におさまっていた。実はその紳士の航空自衛隊時代の操縦訓練の教官がMさんだったらしい。紳士は「Mさんは私にとって神様のような方です!」と言う。そして「Mさんは凄い腕を持ったパイロットでした!」。飛行機が熊本空港に近づき、着陸態勢に入ると紳士は再び聞き耳を立てた。着陸した時、「ほら、上手いでしょ」と言った。空港での別れ際、紳士は「Mさんにくれぐれもよろしく!」と言い残して颯爽と去って行った。後日、そのことをMさんに報告したのはもちろんである。聞くところによるとその紳士はJALのB777の機長として名を馳せ、パイロット引退後はJALの重役になったらしい。