「能狂言の本屋さん 檜書店」さんのFacebookを見ていたら、「謡曲を読む愉しみ ‐花のほかには松ばかり‐」という新刊が紹介されていた。「花のほかには松ばかり」とは何の台詞だったっけ?と思いながら、ググってみると、能「道成寺」の前シテ・白拍子の台詞であることが分かった。検索したサイトの中にokkoyaさんという方の「読書百篇」というブログがあった。大正から昭和前期の作家、夢野久作のことが書いてあった。なんと夢野久作は喜多流の能楽師でもあったという。夢野久作の名前は幼い頃からよく知っていた。なぜなら祖母がよく「夢の久作のごたる話」という表現を使っていたからだ。途方もないホラ話のような意味合いだったと思う。随分後になってそんな名前の作家がいることを知った。夢野は福岡出身なので、やはり子供の頃からよく聞いていた「夢の久作」をペンネームにしたらしい。彼の作品を手に取ってみたこともあったが、その怪奇性みたいなものが肌に合わなかった。今回、能楽師だったことを知ってあらためて「青空文庫」で彼の作品リストを調べてみた。「能ぎらい/能好き/能という名前」という随筆があった。面白い。僕がこれまで能について感じて来たことをすべて書いてある。最近で一番の発見だった。
※写真は「道成寺」から、蛇体に変身した女が柱に巻き付く「柱巻き」の場面
※写真は「道成寺」から、蛇体に変身した女が柱に巻き付く「柱巻き」の場面