昭和初期から戦後間もない頃までの20年弱、新宿角筈に存在し、軽演劇やレビューで一世を風靡した「ムーランルージュ新宿座」の記録映画「ムーランルージュの青春」が公開される。この劇場からは、その後、映画、テレビ、演劇などで活躍することになる望月優子、水島道太郎、武智豊子、左卜全、由利徹、三崎千恵子、森繁久彌ら、そうそうたる顔ぶれを輩出している。また、この劇場は明日待子などのアイドルを生み出したことでも知られている。まさに「会いに行けるアイドル」の元祖だ。僕は、かつてそういう劇場があったことは随分前から知っていたが、特に興味を持ったのは、「評伝 海達公子(規工川祐輔著)」を読んでからだ。この中で海達公子が昭和7年に、大牟田に巡業に来たムーランルージュの舞台を観に行ったという記述がある。そしてその舞台は公子に少なからぬ影響を与えたことが記されている。僕はこの事を確かめるべく、開催月日や開催場所、出演者などが載っていそうな資料を調べてみたことがある。残念ながらこれまでのところ確認できる資料は発見できていない。問い合わせをした大牟田のある団体の方の話では、昭和7年といえば、大牟田は炭鉱景気で栄えていた頃で、劇場もたしか三つくらいあったはずだ、と言っておられた。今回、「ムーランルージュ新宿座」に再びスポットライトが当ったことにより、何か新たな事実がわかるかもしれない。また、この記録映画「ムーランルージュの青春」を熊本でも電気館さんあたりがやってくれないかと期待しているところだ。