徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

遠い日の大浜の風景

2011-02-24 19:46:30 | 文芸
    「川口」
    ときわの穂が
     夕風になびいてゐる川口へ来た
    あびてゐるみんなの声をとほして
     高々と帆をあげる音
    吹きとばされさうになつた
     帽子をおさへた
    沖の光にかもめが飛んだ

 これは「赤い鳥」の昭和3年12月号に載った海達公子の詩である。彼女が尋常高等小学校6年の時の作品で、僕は彼女の作品の中でも最も好きな詩の一つだ。これには理由があって、実はこの詩に描かれた情景は僕の原風景といってもいいのである。彼女が行ったという川口というのは、実はどこの川の川口なのかはさだかではない。しかし、僕が幼い頃、夏を過ごした母の実家がある玉名の大浜。この菊池川川口一帯には、この詩に描かれた情景そのままがあった。そして公子も女学校時代、親友とともに大浜までの菊池川下りを楽しんでいる。
(注)
 ・ときわ・・・ときわすすき。すすきに似ているが夏に咲くイネ科の植物。
 ・あびてゐる・・・水浴びをしている。


旧川口辺りから新大浜橋を望む