ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

令和初のシビレる言葉6

2020-06-04 13:34:00 | 日記
甲斐さんは「九州少年」をお書きになる際
「句読点をいつ、どのタイミングで打てばいいのか?」と悩まれ(笑)
「文章のプロ」…江國香織さん…に相談なさったりした結果
「自分のビートで打てばいいんだ」と納得されたそうですが
作家の村上春樹さんは「文章の書き方は音楽から学んだ」とおっしゃってます

執筆中に流す曲については「難しい音楽はダメ。シンプルなリズムがいい」と
ビーチ・ボーイズの「ディズニー・ガールズ」を挙げられたみたいだけど
それとは別に「書く時に意識するのは、リズム、ハーモニー
フリー・インプロビゼーション(即興演奏)」と話されていて
やはり「自分のビート」でお書きになっているんじゃないかと…?(笑)

中川越さんの著書「すごい言い訳!」によれば…
文豪と呼ばれる方々は、言い訳も文学的らしく(笑)
徳冨蘆花は、不出来な原稿の釈明に…
「如何程しぼりても空肚は矢張空肚にて致し方御さなく…
(考えを絞り出そうとしても心の中にもう何もない)…と書き

泉鏡花は、原稿の催促に対して…
「涼風たたば十四五回も先を進めて其のうちに
一日も早く御おおせのをと存じいろいろ都合あい試み候えども…」
(涼風が吹くようなら他の原稿を14~15回分も書いてしまい
ご依頼の件に着手しようと考えていたのですが…)
…って、要するに「暑くて書けなかった」と開き直ってる訳だけど(笑)

作家の締め切り話を集めた左右社の「〆切本」にも「苦しい言い訳」が並んでいて
高橋源一郎さんは「風邪気味なもんで…」に始まり
「今度はワイフが風邪をひいちゃって…」
「ワイフの祖母が風邪をひいたんで、実家に看病に…」となり(笑)
最後は、猫にまで風邪をひかせておられたらしく(笑)

「そんな虚言を聞かされても、怒って暴れたりしない編集者は
まさに神のような人柄と言えよう」と高橋さん(笑)
その「神のような」編集者の方は、バレバレの言い訳をされても
「とにかく書いて頂かないと!」の一心でいらしたのかなあと…?(苦笑)

でも、SF作家のマイケル・クライトンは…
「常に真実を話さなくちゃならない
なぜなら真実を話せば、あとは相手の問題になる
どんなに言いにくいことでも、思い切って正直に打ち明ければ
その時点で、それはもはや自分の問題ではなく
相手(もしくはみんな)の受け止め方の問題になる」…と言っていて
って、まあ、これは編集者の方に対する言い訳じゃなく(笑)
友人のショーン・コネリーとの会話に登場した言葉みたいですが…

吉村昭さんは「締め切り寸前だとパニックになる」そうで
「早くてすみませんが…」というメモを添えて
かなり早めに原稿をお渡しになる方らしく
担当を希望なさる編集さんが大勢いらっしゃるんじゃないかと…?(笑)

そうそう!お笑い芸人の皆さんにとっては
どんなに苦しい言い訳でも「面白ければOK!」といった面があるようで
上岡龍太郎さんは、お弟子さんのぜんじろうさんが遅刻なさった際に
「スミマセン!寝坊しました!」と謝られたのはお許しにならず
「向かい風が強くて…」とおっしゃった時は「ほな、しゃあないな」とお許しになったんだとか…(笑)
ちなみに、この「向かい風」は、さんまさんもよくお使いになっていたみたいです(笑)

ともあれ、歴史研究者の堀田江理さんは…
「ここ7~8年ほどは、家で執筆する機会が多く
ホームオフィス・ワーカーとしての年季も入って来た
さぞ効率よく働くノウハウを体得したと思われるかも知れないが、実際は正反対だ
日ごと年ごとに、自制心に緩みが出て
仕事を先延ばしにする技にばかり磨きがかかって行く

決して家事好きじゃないのに、締め切りで切羽詰まっている時ほど
やけに熱心に掃除や洗濯を始める自分がいる
不器用ながらも洋裁に手を出し、子供の服を縫う
わざわざ粉からこねて、パンを焼いてみたりもする
結果、ミシンを置いてある仕事部屋には、布切れや糸くずが散らばり
キッチンには粉がまかれ、一周して、振り出しの掃除に戻る

もう逃げられない…と観念したところで、ようやく仕事に頭が向く
『火事場の馬鹿力』なのか?そんな時ほど思いがけぬ着想を得て
行き詰まりを打開できることが多い」
…と、夏休み終盤の自分を見るような気分で読んでしまったんだけど(笑)

「境界線が錯綜しているようでいて、案外自分の中では
『オンとオフ』のバランス制御が出来ているのかも知れない
一見非効率でも、寄り道、回り道は、生み出す作業に必要だと
言い訳半分、開き直る今日この頃…だから先延ばしは止められない」と堀田さん
この「先延ばし」論で、1回分のコラムを埋め尽くされたのも
「火事場の馬鹿力」だったんでしょうか?(笑)

作家・劇作家の本谷有希子さんは、お仕事そのもの以前に
「仕事を選別するのが苦手」でいらっしゃるらしく
「一目でやりたいと思える依頼はいい
一目見て、嫌と思えるものも迷わずに済むぶん、楽である。問題はその中間だ」

1週間に渡って悩まれていた「決断する決め手が、これと言ってない
返事を迫られていた」お仕事をお断りになったものの、思い直され、いざ着手なさると
短時間の内に、一気に書き終えられたそうで
「おぉエライ!と嬉しくなると同時に
この1週間はナンだったのだという悔しさも湧いて来た…大馬鹿者である
仕事にかけた時間より、グズグズしていた時間の方が遥かに長い

『迷ったら引き受けろ』と断言する人もいる
『悩むのが嫌で、来た仕事は全て引き受ける』という知り合いもいる
『何をやらないか…が一番大切』という言葉もある
一体どのスタンスで行くべきか?私はそこでグズグズする
こうなると、もう好きでそうしていると思った方がいっそ幸せである」…と結ばれていて
このコラムの執筆は「やりたい」「嫌」「グズグズ」
どの基準でお選びになったお仕事なのかなあと…?(笑)

かの手塚治虫さんは、ベテランになられてからも、他の漫画家の作品が人気を集めるたびに
「ああ、また若手に追い抜かれたか」と猛烈に悲観し、頭を抱えて転げ回られたり
アシスタントの皆さんに「どうだ?俺の画、この頃どう思う?マンネリか?見飽きたか?
ハッキリ言ってくれ!俺の画はもうおしまいなのか?」などとお訊ねになったり
マネージャーさんに「原稿料は絶対に上げないで下さい!
仕事が来なくなります」とおっしゃったりしたそうです

「発表の場を失うかも知れない」という恐怖や焦りが
膨大な作品を生み出す原動力になったとのことだけど
こんな風に、自分で自分を追い込むみたいにして描かれていたのかと思うと
寝転んで気軽に読んでいたのが申し訳ないような気持ちになってしまう一方で

甲斐さんが「いったん世に出したら、どう受け取ろうと聴き手の勝手」と話されているように
読者がそれぞれ自由に楽しんだ方が、手塚先生も嬉しいんじゃないか?とも思えて
いずれにしろ、表現を形になさる方々には、畏怖の念と共に深く感謝したいと思います
コメント
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