昔から日本全国の沼や河川に群生していた芦
「悪し」に通じるのを忌んでヨシと言い替えたり
アシも葦、芦、蘆、葭といろんな漢字で表現されています。
また古書『和漢三才図絵』には「青し」がつづまったものと述べられ、
『日本釈名』には「あしは、はし也。はじめ也。草木のはじめ也」とあるそうです。
嵯峨御流の伝書では「芦一色挿方の伝 (あしいっしきいけかたのでん)」によると
「芦の出生をべんぜば、我朝未開、青海原の時初めて生じ、
次第に変り、遂に大いなる島となり、今の如き尊き御神の国とはなりぬ。・・・
よって御神を尊みてみだりに取扱事なかれ・・・」とあり、
芦はわが国創造に深く関わる植物であるので、粗略に扱ってはならないとされています。
まあ~岸辺に生えているあの草が・・・
確かに近年、芦は自然浄化作用を持ち、
多くの生物の生態系にも重要な役割を担っていることが評価され、
日本の原風景をとりもどすべく芦原復元の事業が行われている地域もあるそうですが、
この芦が華道嵯峨御流においてもっとも格調高い花であり
特に生花では最高の花とされていると知り正直びっくりでした。
(この花を生けたいと思いたってのにわか勉強・・・)
挿け方にも約束事があります。
まず三石を配し、
立姿はできる限り自然に近い姿、横姿は格を守り虚の姿にいけることで虚実等分をはかります。
そして最後に芽出しの姿を配して青海原に初めて生じた景色とします。
さらにはこの花を観賞するにあたっては
「肉眼を去り、心眼をもって無き処に一物生じた意をよくよく考えあるべし・・・」と。
日本人にとって植物がいかに心のよりどころであったか、
またその美意識の高さを改めて再確認しました。
芦の衰退(環境破壊)とともにこうした日本人の心も失われていってしまうのは淋しいことです。
次回のお稽古から私の年の半分ほどの方がおふたりいらっしゃいます。
まずはお花を楽しんでもらいましょう。
そしてそののちには次の世代にも嵯峨御流のお花を、日本の心を、
そして植物を慈しみ自然を尊ぶことの大切さを伝えてほしいと願ってます。
今回生けたものは芦ではなくオギを代用しました。
もっとも格調高い挿花に代用植物を用いることは禁忌ですし、
その挿花の置き方も正式なものではありませんが、
なかなか言葉ではうまく表現できない私ですが
少しでも私が伝えたいと思うところを花を通して感じとって下さったら幸いです。
これは先日加村先生宅にいけたもの
自宅のものとともにどちらも石はもう少し小さいもののほうがいいですね。
庭の柏葉紫陽花も今が盛り、
これも取り合わす花材には悩みました。
この大きな花に負けないだけの花?!
う~ん
結局のところ・・・タカノハススキを配してみました。