しんぶん赤旗 きょうの潮流
「ひいては、わが国そのものの崩壊にもつながりかねない」。東京電力福島第1原発事故をめぐり旧経営陣に13兆円を超える損害賠償を命じた株主代表訴訟の東京地裁判決は、原発事故の異質な危険性をそう表現しました
▼東電の原子力部門の元副社長について判決は次のように批判しています。津波対策が義務づけられる科学的信頼性のある知見を得ながら、「対策を先送りした」のは「著しく不合理であって許されるものではない」
▼対策を取れば「重大事故に至ることを避けられた可能性が十分にあった」のだから当然の指摘です。原告側代理人の弁護士が「二度と事故を起こしてはいけないという裁判長の怒り」が込められた判決だと強調していたのもうなずけます
▼判決は速やかに実施できる対策として、他の原発でも採用されていた、建屋や重要機器の部屋の浸水を防ぐ水密化を詳しく検討し「容易に着想し実施し得た」と。国の責任を免罪した原発避難者訴訟の最高裁判決が当時の対策として防潮堤だけに限定したのと大違いです
▼東電の姿勢にも言及しています。自ら得た津波計算結果の情報を規制当局に明らかにしないとか、現状維持のため有識者の意見のうち都合の悪い部分をいかにして無視ないし顕在化しないように腐心していたと
▼判決は「安全意識や責任感が根本的に欠如していたもの」と非難しました。支払いを命じられた巨額の損害賠償は被害の甚大さを反映したものです。原発からの撤退しかないことを改めて示しています。