どこ吹く風

旅のことを主に書く。

思い出の地は何処

2005年09月18日 07時44分22秒 | 旅-台湾
 母の調子は良くない、出発前日まで点滴をしたが回復までには至らず気分も晴れないようだ。今回の旅は自前のツアーなので全て融通が利くので万一の場合でも何とかなるだろう。また出発前に伯母が歩けないとの駄々を捏ねた事もあり車椅子を持参している、万全とまではいかないが備えもある程度はできている、みんなは意気揚々としている、出発だ~。

 まず台北駅の付近へ行く、この辺りだ、あの角のビルの・・・とかつての我が家のあった付近をあれこれ詮索している。何故か下車せずに素通りした。案内の謝さんは流暢というても良い日本語で説明している、「あれが戦前から続いている林田桶店です。」と桶屋を指す。母と伯父伯母はうなずいている、「そこは戦前の○○小学校で今は・・・」姉たちが通っていた学校のようだ。台湾の学校は3mほどの塀に囲まれているので2・3階の教室が見えるだけ、昔そのままでは無いようだ。

 このように戦前の記憶のある人は懐かしむように、また古いことを思い出すようにその頃の事を勝手に話し始める。共通したものではなく自分だけの想いを勝手に話して同意を求めたりしている。心の中はタイムスリップして目の前の風景を透かしてあの頃の姿が目の前に現れているのだろう。

 育った地では食えず、外地で何とか食いつないだ私たちの父母、頑張って自分の土地を手に入れ農園を軌道に乗せ始めた伯父夫婦、三人の姉たちは年齢に応じた量の思い出、それぞれが自分を振り返っている。

 私は全部で指折り数えても片手ほどの出来事しか覚えていない、それも土地・場所とは関係の無いことばかりなので大雑把な空気だけを味わう。
昔の総督府の前を中正祈念堂へ行く、衛兵の交代式の時間が近いので観ることにした。広いので念のために車椅子を下ろす、母と伯母は階段があるので下で待つと言う、エレベーターがあるのは下りるときに気づいた。見物が終わり下へ行くと気分が悪いはずの母が車椅子の伯母を押している姿があった、昔のことを思い出したら身体も元気になったようだ、年寄り二人、それも車椅子を押している姿をみて皆で大笑いした、元気を取り戻してよかった。

 中正祈念堂は戦前の錬兵場のあったところだと伯父がいう、母も伯母もそうだそうだと頷く。総督府とか駅の所在地から記憶を辿ったのだろう。二胡の音が聞こえる、戦前もこのような風景があったかどうか知らないが、引き上げてから51年たった半日足らずの時間で遠くなった若い頃を引き戻したようだ。

 次に川向こうの伯父の住んでいた処へ向かう。
前回伯父が住んでいたのは萬華と書いたが、改めて地図を見ると台北から橋を渡ったところだったので板橋市か永和市のようだ。どの橋を渡ったのか定かではないがたぶん中正橋だろう、その橋を渡り直ぐ左に曲がり数百メートル行った所で、「この辺りだ」と伯父が言う。

 近づいたようだ・・・

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