◇ 『殺し屋 最後の仕事』(原題:HIT AND RUN)
著者:ローレンス・ブロック(Lawrence Block)
訳者:田口 俊樹 2011.10 二見書房 刊
久しぶりに面白い本を読んだ。
いつものように夜中に目が覚めて、なかなか眠れないので、いっそのことと1時間ほど
この本を読んでいるうちに、面白くてまた眠れなくなったほどだ。
ローレンス・ブロックはこれまで何冊も読んでいる。登場人物の対話のセリフ回しがすっ
きりとしていて、かつ独特のエスプリが効いていて面白い。
ジョン・ポール・ケラーは殺し屋。ドット(ドロシー)というケラーより年上の女性が請負
の元締めで、依頼人との契約をつないでいる。親父さんと呼ぶじいさんも仕事を請け負
っていたが耄碌して亡くなって、今はケラー一人が殺しを引き受けている。
(殺し屋ケラー・シリーズの1冊)
ある殺しの仕事でターゲットを確認しているうちにオハイオ州知事が殺された。そして
あろうことかTVにはケラーの顔写真が写った。指名手配犯人として。
「俺のことはアルと呼んでくれ」としか知らない依頼人に嵌められたのだと悟ったケラー
はひたすら逃げる。
ペンシルベニア州のある町でケリーはドットの家が全焼し女性の焼死体が発見された
という記事を読む。「俺のことはアルと…」の仕業であることは明らかである。ケラーは警
察と元依頼人と双方から狙われることになった。
NYからテネシーへ、そしてミシシッピーに。ある日の夕暮れにニューオーリンズの公園
で連続殺人犯に襲われている女性を助ける。殺人犯を得意技の「頸折り」で犯人は死ん
だ。
助けられた女性ジュリアは病床の父と住む家に命の恩人ケラーを住まわせる。
流浪の生活から逃れたケラーは、身分を変え建築業の手伝いをしながら次第に地域に
溶け込んでいく。
ところがある日かつてケラーが切手収集に熱中していたことを聞いていたジョナサンが
持ってきた切手収集家向け週刊誌にいわくありげな広告を見つける。暗号化された公式
を解いたケラーが電話をした先から聞こえて来たのは、なんと死んだはずのトッドの声。
ケラーが嵌められたことで身の危険を察したトッドは、殺し屋家業のすべての痕跡を消し、
身代わりの死体まで作ってアリゾナ州フラッグスタッフに身を潜めたのだという。
再会した二人は「俺のことはアルと呼んでくれ」への復讐を誓いあう。
この先の復讐劇はどうってことのない展開をするのであるが解説は割愛。
久々のエンターテイメント小説に満足。
(以上この項終わり)