読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』

2019年09月19日 | 読書

◇ 『ロビンソン・クルーソー』(原題:ROBINSON CRUSOE)

            著者:ダニエル・デフォー(Daniel Defoe)(刊行300年記念新訳)
            訳者:鈴木 恵   2019.8 新潮社 刊(新潮文庫)

 
    

  
最初に読んだのは70年近く前のことではっきり言って内容はよく覚えていない。あるいは
『ロビンソン漂流記』だったかもしれない。

 出版されたのは1719年のこと。300年前のことである。古典ともいえる作品であるが、冒険
小説の走りであろうか。

  ロビンソン・クルーソーはイギリスの北部ハルという地で生まれた。二人の兄は戦死や行方不
明で、父は末っ子のクルーソーには法律家などになって真っ当な生活をしてもらいたかった。
しかしクルーソーは小さい頃から家を出て遠い国々に旅することを夢見て、中庸の生活が幸せ
をもたらすのだ、家を飛び出して冒険などするなという父の言葉を聞き一時は感じ入ったが、何
日かしてすぐに海への憧れが頭を持ち上げた。
 
 ついに18歳のある日家を飛び出したクルーソーは、友人である船長の息子の誘いでロンドン
へ旅立つ。船は暴風に出会い沈没してしまう。近くを通った船に救助され、ヤーマスという港
に着いたクルーソーは、二度と海に出まいと思ったが、航海への憧れは止み難く、またもや船に
乗る。船長は親切で、数学や航海術を教えてくれた。小さな交易収益も得て、さらなる飛躍をと
願った矢先、トルコの海賊船に襲われてしまう。しかもクルーソーは海賊船長の奴隷におちる。

 そして2年経った。だが機を見るに敏なクルーソーは同じく奴隷のムーア人の少年とともにボ
ートを盗み遁走し、はるか南のヴェルデ岬を目指した。途中岸に近づきムーア人から水や食物を
分けてもらうなどしているうちにブラジルの船に出会い、又も親切な船長に拾われ事業の便宜も
図ってもらった。ブラジルで耕地を増やし、たばこや砂糖キビの栽培などで豊かな生活を獲得し
た。
 4年経った。またもや遠い国を放浪するという悪い癖が出てニグロ奴隷の売買に手を出すとい
う話にのって船出する。

 しかし悪いことはできないもので船は暴風に遭遇し、クルーソーは一人無人島に打ち上げられ
る。九死に一生を得たわけであるが、幸い船にはパン、小麦粉、干し肉などの食料や衣類、大工
道具、銃、弾薬、帆布、ラム酒、
などおよそ今後の生活に役立つ品々が残っていて、これらを使
工夫しながら島での新しい生活を始めることになった。雨風をしのぐ小屋は作った。崖に食糧
庫なども掘った。ただ話し相手がいないことはつらい。

 島の中央部には草原があってブドウやメロン、レモンやなど果物があり、快適な土地なので小
屋を作って時々滞在する。稲や麦も栽培した。山羊や鳥、海亀などがいて食料には困らない。
 丸太でカヌーも作った。遠洋には向かないので本格ボートにも手を出した。時間だけはたっぷ
りある。
丘に登ってみても、助けてくれそうな船の姿は見えない。

 15年経ったある日、浜辺に蛮人の足跡を見てけ愕然とする。それは人喰い人らが生贄の獲物を
引き連れて来た足跡で、その後チャンスをとらえて獲物の一人を救い(フライデーと名付ける)
従者とした。なんとフライデーは1・2年で英語も覚えてクルーソーは長年渇望していた対話を
楽しむことになった。
 フライデーに聞くとこの島はトリニダート島の南に位置することが分かった。

 漂着から26年。また島に獲物の西洋人を連れた蛮人がやってきた。クルーソーらは銃器を駆使
し3人を助ける。
 今度は大きな船舶の船員がボートを使ってやってきた。謀反を起こした船員が船長らを捨てに
島にやってきたのだ。クルーソーらは巧みな戦術で謀反人らを逮捕し、船長らを助けた。謀反人
らは島に残し、船舶を取り戻して祖国を目指す。島にいたのは28年と2か月19日だった。

 祖国英国の帰ったクルーソーは、ブラジルの農地などを処分し、世話になった関係者に十分な
お礼をしてもまだ多額の資産が残った。リスボン経由ブラジルを訪ねるクルーソーはその途次懐
かしい島を訪れる。 

  この作品で作者が一番言いたかったのは何だろうか。漂着してから20年位経ち、島でのそれな
りに安定した生活の中にあって、クルーソーの念頭を去来するのは神の存在であった。
 歳若い頃は信じてもいなかった神。一人孤島に生かされているのは神の恩寵と悟る。船に残さ
れた書物の中にあった聖書を読み、神と対話する次第にかなりのページを割いている。また従者
となったフライデーには自分なりに神の恩寵などを解説している。
 クルーソーにとっては、父の忠告に従わなかったことへの反省もあるし、課せられた厳しい試
練に神のご加護と恩寵を願うような
信仰心の芽生えが大きな収穫だったのではないだろうか。と
いうことは無人島での苦闘と再起を通して神の恩寵を悟る姿を示すのが狙いだったのかもしれな
い。

<完訳>ロビンソン・クルーソー』から参照した島の位置関係、詳細図が載っていてずいぶ
ん助けになる。


                                 (以上この項終わり)

 

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