◇『料理人』(原題:Cooking up a Stro
m)
著者:エマ・ホリー
訳者:山崎 久美子 2002.6 光文社 刊
舞台はアメリカ・マサチュセッツ州ケープコッド。
アビゲイル・コーツ(アビー)という簡易レストランのオーナーとストーム・デュプレというロサンゼル
スから流 れついた青年シェフ。この二人が主要登場人物である。
さてストームは心から満足できる料理を作ることを別にすれば、女が官能の深みに目覚めることを助けてや
ることこそ、自分の才能、使命だとさえ思っているというプレーボーイだった。だから彼をシェフとして雇っ
たアビーは間もなくストームの虜になって彼なくば日も夜も明けない状態に陥る。
幸いストームは料理の腕が良く、ストームを雇ってから店は大繁盛、二階を改築するプラン迄持ち上がった。
小説タイトルは「料理人」であるが、登場する料理といえば極細パスタの生フィンネルソース和え、クラムチ
ャウダー、ペカンプディングなどどうということもないものばかり。結局はストーリーで読ませる本かと思っ
たら、なんとも辟易するばかりの過激な描写が続くエロティカ小説(英語圏ではこうしたジャンルがあるらし
い)だった。
アビーの友人でありウェイトレスのマリッサ、リチャードというアビーの義兄、アビーの元彼ジャック、その
友人ホレスとアイヴァン。登場人物は多くはないがいずれもアビーとストームを軸にしたセックスフレンドであ
る。
ストームには多額の借金を背負っているアビーのレストランを買い取って自分の店にする魂胆だった。しかし
シングルマザーの母とDVの継父の下で育ち、人と深く交わらない方が生きていく上に有利だと思ってきたスト
ームも性格が素直で心優しいアビーと付き合っているうちにいつしか心から愛するようになっていた。
結局アビーに届いた負債の一括返還を求める書類がきっかけになってストームはアビーに結婚を申し込む。債
務償還資金ははストームが出して、レストランの共同経営者になった。エピローグがいい。
(以上この項終わり)
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