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読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

レイモンド・チャンドラーの『湖中の女』

2018年12月11日 | 読書

◇ 『湖中の女』(原題:THE LADY IN THE LAKE)
              作者:レイモンド・チャンドラー(Raymond Chandler)
              訳者:清水 俊二 1986年10月 早川書房 刊

  
  ハードボイルド・ミステリーの巨匠レイモンドチャンドラーの長編7作品の一つ。
 1943年、5年前にに書いた短編(『湖中の女』)をもとにして書いたといわれている。
 本書は翻訳者清水俊二が初めて手掛けたチャンドラーの作品の邦訳(1959.7)である。

   チャンドラーは独特の表現があって面白い。
 例えば、「大いに喜ぶにちがいない。頭のてっぺんから足の爪先まですっとするだろう」
 (p226)
 ただこのようにまわりくどい言いかたもしている。
 「私はあんたに、あんたの心臓を引っ張り出して私の目の前で搾り上げて見せてくれと
 頼んだわけじゃないが、それを止めもしなかった。私がいま見たことよりもっと多くの
 ことがあるのならべつだが、そうでないかぎり、キングズリー夫人があんたを口説いた
 ことを知る必要はないんだ」(p62)

  一方、LAのベイシティ署の警部ウェバーが荒廃しきった街を説明するシーンがあって、
 これほどまでにアメリカの恥部をあからさまに言い切ったチャンドラーに驚く。
  「我々を悪党と心得ている連中がいるんだ。誰かがかみさんを殺したと思うと私に電
 話をかけてきてこういうんだ。『警部さん、表の部屋でちょっとした殺人があって、
 ごたごたしている。使い道のない紙っ切れが500枚、ここにあるんだけどね』そこで私
 がいうんだ、『わかった。そのままにしておきなさい。私が毛布を持ってすぐ行くよ』
 「それほどひどくはないな」と、私はいった。(p259)

  ある日マーロウは化粧品会社の社長デレイス・キングズリーから妻クリスを探して欲し
 いとの依頼を受け、湖水べりにある別荘に出かけ、近くの管理人チェスと家出したと思わ
 れていた彼の妻の水死体を発見する。この派生的な事件が、行方不明となっているキンバ
 リーの妻の失踪と深くかかわっているらしいことを知ったマーロウは関係者を調べまわる。
 そしてクリスと付き合っていた男レイバリーの死体が発見された。その上やっと探し出し
 たクリスが目の前で何者かに殺されてしまい自分も頭を殴られて昏倒する。

  事件の真相と犯人は最終章でマーロウが解き明かすのであるが、私は最初キングズリー
 の秘書アドリエンヌ・フロムセットが事件でかなり重要な位置にいると読んでいたが、当
 てが外れた。真犯人はおおよそ見当はついていたが途中経過はけっこうむつかしかった。
  そして、なぜキングズリーが、結婚までしようと思っていた秘書フロムセットがいなが
 ら、どうしようもなくだらしがなく、浪費家で、尻軽女である妻のクリスタルに、こうま
 で執着して探し出そうとしていたのか、不可解さが残った。

                              (以上この項終わり)