◇ 『刑事の血筋』著者:三羽省吾 2018.2 小学館 刊
発行所キャプションでは本邦初の警察家族小説!とする。曾祖父(ひいおじいさん)
から三代にわたる警察一家にまつわる小説ではあるが、読み終えてみれば亡くなった
父親が残した捜査ノートを手掛かりに、二人の息子が組織のしがらみに抗しながら事
件の真相に迫るという、ありきたりの警察小説ではないか。
佐々木譲に『警官の血』という類似の作品がある。
著者にとって警察小説は初めてではないかと思うが、結構警察という特殊社会の雰囲
気を捉えている作品ではないだろうか。
警察庁勤務のキャリアの兄と所轄刑事のノンキャリの弟。これまで決して仲が良いわ
けではなかったが、かつて刑事だった父がある殺人事件の捜査に係わり、暴力団に捜査
情報を流したという噂の真偽を探り、父の汚名を雪ぐために二人で協力し合い調査を進
める。ことの真相を突きとめはしたものの、警察組織と暴力団との癒着の問題にどう始
末をつけるのかに悩むというストーリー。
長年警官高岡敬一郎の妻として二人の息子を育てた春江、兄剣の妻志緒里と娘の恵梨
香、剣の部下小谷野、弟守の妻美子、守の相棒久隅、亡父敬一郎の同僚越川・奥寺等々
関係者は何人もいるが、小さいころからそりが合わなかった兄弟二人が、父親が係わっ
た最後の事件の真相調査に取り組む中で、次第にわだかまりが解けていく過程がほほえ
ましい。
(以上この項終わり)