読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

今野敏の『隠蔽捜査2-果断』を読む

2013年01月09日 | 読書

◇『果断』―隠蔽捜査シリーズ2- 著者: 今野 敏  2007.4 新潮社 刊

   

  今野敏が吉川英治文学新人賞をとった「隠蔽捜査シリーズ」第二弾の作品。この作品で第21回山本周
 五郎賞、第61回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞した。

  主人公は竜崎伸也。家族は妻と子供(息子・娘)二人。東大法学部を出て警察官僚になったキャリアである。
 警察庁長官官房総務課長というポストについてエリートコースの乗っていたが、息子の薬物使用という不祥
 事で所轄の大森署に左遷された。
  大森署の職員は、独特の価値観を持ち変人と陰口をきかれているキャリア署長の扱いに戸惑うばかりで
 ある。

  そんな大森署管内に拳銃を持った3人組が逃走中で緊急配備。2人は本庁のチームが逮捕したものの、
 拳銃を持った1人がいまだ逃走中という事件を抱え込む。
  ところが緊急配備の最中に小料理屋でのけんか騒ぎ通報があったが、この逃走犯が小料理屋の主人夫
 婦を人質に立こもっているとのとんでもない事態に発展した。
  竜崎は現場に飛び指揮を執る。銃砲所持の犯人とあってSIT(捜査一課特殊班)とSAT(警視庁警備局
 特殊急襲部隊)が出動した。SITは犯人との交渉を優先させることを、SATは強襲を主張する。さて竜崎は
 どう決断するのか。
  結局室内で4度の発砲があったためSATに出動・発砲の指示を出す。そして犯人はSATに撃たれ死亡
 することになるのだが…。

  人質をとって立てこもった犯人が発砲しこれをSATが射殺したにもかかわらず、犯人の拳銃には弾が残っ
 ていなかったことから新聞などが行き過ぎと指弾、竜崎は監察官の呼び出しを受ける破目に。
  大森署には戸高という職人肌の刑事がいて、立てこもりの状況と発砲の様子に不審な点が多いことを主
 張していた。竜崎の指示で弾道検査をした結果意外な事実が浮かび上がった。

  妻の病気入院、息子の大学進学、娘の就活など私事でも頭が痛いことが多い。警察庁同期で小学校の
 同級生であった伊丹はいまや刑事部長。そんな逆境にあって果敢に事件に取り組み持ち前の反骨と正義
 感でことに当たる竜崎は、キャリア警察官僚らしくないキャラクターで、つい応援したくなる人物である。

 『隠蔽捜査シリーズ』はその後パート3(『疑心』2009.3)、パート4(『転迷』2011.9)、伊丹刑事部長を主
 人公にした番外編・短編集(『初陣』2010.5)がある。

 (以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする