◇広大な地域に広がる自然・文化遺産
2004年7月世界遺産に指定された「紀伊山地の霊場と参詣道」は、三重・和歌
山の両県にまたがる広大な山地に展開する、神社仏閣(高野山、熊野三山など)
とそれをつなぐ参詣道で構成される自然遺産と文化遺産である。
実際行って見れば、それもほんのとば口だけの歩きではあったが、「熊野古道
へ行ってきた」などと気軽に口にするのをはばかるほど熊野三山への道筋は多く、
かつ険しい。今でも実に辺鄙な場所で、熊野詣での庶民はもとより、その昔折々
に足を運んだ代々の天皇を初め貴人賢人にとっては、多分中世以降の街道、
たとえば中山道の「和田峠越え」などに比べても、十分これを凌駕する剣呑な道
であったことは想像に難くない。
この度友人夫婦と連れ立って、伊勢路と熊野・高野山を2泊3日で訪ねるという、
典型的な欲張りツアーにのって、兼ねて想像していた「熊野古道」を訪ねた。
東京駅7時集合というと、まだ薄暗いうちに家を出ることになって、実につらい。
日曜日なのに結構電車の乗客がいた。たまにはこういう時間帯に人々がどんな
動きをしているか見なければ、世の中に遅れをとるのではないか、などと余計な
あせりまで感じてしまった。
◇ 伊勢神宮・内宮
伊勢神宮は内宮には行くが外宮にはなかなか行くことがない。今回も先ずは伊
勢神宮を参拝し、那智勝浦へ向かう。
伊勢神宮は式年遷宮といって、20年に一回すべてが新しく調えられる。次の式
年遷宮は平成25年。既に現在の本宮のすぐ近くで準備が始まっていた。
五十鈴川に近い参道には「おかげ横丁」があって、大いに賑わっていた。
内宮 式年遷宮準備
おかげ横丁 「赤福」健在、大いに賑わう
◇豪快洞窟温泉「忘帰洞」
伊勢神宮参拝の後はひたすらバスで那智勝浦のホテル「浦島」へ。固有名詞
を出すのはいささか憚るが、何せ洞窟温泉というと隠しようがない。
島でもないのに5分ほど連絡船に乗ってホテル玄関前に着岸する。
「忘帰洞」とは、元紀州藩頼倫公が「帰るのを忘れるほどのよき湯」と賞でられ
名づけられた。
大洞窟湯「忘帰洞」は間口25m、奥行き50m、高さ15mで、自然の洞窟だけ
に野趣に富み、太平洋は紀州灘の荒波(丁度海は荒れ模様だった。)が目の
前に砕け、豪快この上ない。湯は白濁し、硫黄臭があり、我が好みの泉質で
ある。
ここでは全部で7つの湯がある。いまひとつの洞窟湯「玄武洞」はやや小ぶ
りではあるが、湯船がまさに海に落ちんとするほど洞窟の際にあり、折からの
荒波が湯船を襲うほどの荒々しさに、洞窟度は「忘帰洞」に優るかもと思った。
ホテル連絡線 勝浦湾の朝
(以上第一日終わり)