【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

くりいむレモン

2019-08-25 06:59:57 | Weblog

 エッチなビデオを連想した人、あなたはエッチですね。ここでの「くりいむレモン」は、日本帝国陸軍が昭和五年にパン食を取り入れたときに「嘗物(ジャムなどパンにつけるもの)」の一つとして提供した「牛乳クリームにレモン果汁を混ぜたもの」のことです。(しかしエッチなビデオに言及できる私は……)

【ただいま読書中】『クレタ島救出作戦(海の異端児エバラードシリーズ(5)』アレグザンダー・フラートン 著、 高岬沙世 訳、 光人社、1989年、1500円(税別)

 前巻ではナチスドイツのノルウェー侵攻が扱われましたが、今回ニックがいるのは地中海東部。ギリシアに侵攻したイタリア軍やドイツ軍によって連合軍はクレタ島に撤退しようとしています。アフリカでは戦争が燃えさかり、マルタではシチリアから空襲が連日、そしてエーゲ海でニックの駆逐戦隊は大忙しです。しかしニックの駆逐艦には防空のための機銃がついていません。ノルウェーでニックは「制空権がなければ、陸軍も海軍も敵機にやられ放題」という教訓を得ましたが、その教訓をロンドンには伝え損なった(あるいは、伝えたが無視された)ようです。そういえば日本でも、大和や武蔵を一度実戦に投入した後になって、大慌てで副砲塔などを撤去して対空機銃を後付けしましたっけ。「海軍は海軍とだけ戦うもの」という強い思い込みを持った「エラい人」はどこの国にもいたようです。
 ニックを悩ませる家族の問題は、今回は義弟(もしかしたら息子)のジャック・エバラードです。彼が乗っているのは最新鋭の巡洋艦で、これにはさすがに高角砲が搭載されています。もっともこれも、副砲を撤去した後への後付けですが。ジャックの船が護衛する船団には、ギリシアから退去した人々が乗っています。襲ってくるのは、メッサーシュミット、それから、ユンカース87の大編隊。ユンカース87は「シュトゥーカ」の愛称で有名な急降下爆撃機です。第二次大戦初期には、連合軍には「恐怖」の代名詞。襲ってきたのを撃退しても撃退しても、さっさとそばの基地に戻って燃料補給と新しい爆弾装着をしてまたすぐに艦隊上空に戻ってきます。
 クレタ島沖にいるニックの艦からは、シュトゥーカの基地があるスカルパント島も視認できます。すると枢軸軍の次の目標は、クレタ島。というか、クレタ島の西にドイツ軍がすでに上陸した、との情報が。連合軍(主力は英国陸軍ですが、オーストラリア軍も混ざっています)はクレタ島からも撤退を始めます。ニックは駆逐艦戦隊の指揮官を拝命、撤退作戦の指揮を執りますが、そこでとんでもないアイデアが降臨。
 これまでニックは、窮地に陥るたびに勲章ものの殊勲をあげていましたが、同時に、良くて叱責悪ければ軍法会議もののチョンボもしてきました。さて、今回も殊勲の匂いがぷんぷんするのですが、同時に今度もなにかチョンボをやらかすのではないか、という不安も高まります。
 だから「異端児」なのでしょうけれどね。