「手を抜く」……肩から血が吹き出る
「抜く手も見せず」……超高速クロール
「抜群」……群れを抜きとる
「抜刀術」……他人の刀を抜き取る術
「海抜」……海を抜く
「水抜き」……脱水過程
「腸抜き」……胃と肝臓は残す
「力が抜ける」……アンパンマン
「ガス抜き」……油田の安全対策
「間抜け」……間がないくらい緊迫している
「垢抜ける」……抜ける前は垢まみれ
「油抜き」……わざわざ油で揚げてから油を抜く二度手間のこと
「足を抜く」……ぬかるみでの歩行
「腰が抜ける」……手品で上半身と下半身が分かれる
「戦い抜く」……戦いを抜く
「掘り抜き井戸」……地球の反対側まで通じている井戸
【ただいま読書中】『暗殺者(上)』ロバート・ラドラム 著、 山本光伸 訳、 新潮文庫、1983年(2002年29刷)、629円(税別)
嵐の海で発見された漂流者は、銃創を負い、記憶を失っていました。地中海のイル・ド・ポルト・ノアールの飲んだくれ医師に命を救われた「彼」は、自分が何者であるかを探し始めます。整形された顔、視力が問題ないのにコンタクトレンズを使った痕、鍛えられた体、無意識に繰り出される格闘技、熟練の域の銃器さばき……体に埋め込まれたデータからたどり着いたチューリヒで、彼は自分の名前が「ボーン」であることと、莫大な財産を持っていることを知ります。そして、自分が命を狙われていることも。
殺し屋に次々襲われ、ボーンはホテルで女性経済学者のマリーを人質にとって逃走します。その道中、さらに何度も襲われ、体には怪我が増えていきます。マリーは死ぬような思いを何度もしますが、その途中でドンデンが。マリーはボーンに奇妙な感情的共感を抱くようになり、ボーンと一緒に彼の(失われた)過去を探る気になってしまったのです。心理学実験で生命に危険がある状況で出会うと恋に落ちやすいというのがあると聞いたことがありますが、それなのか、あるいはストックホルム症候群なのか、ともかく二人は恋に落ちてしまいます。
頭に残っていた衝動に従い、ボーンは次の目的地を目指します。パリ。そこでボーンは次のキーワードに出会います。国際的テロリストの「カルロス」。カルロスがボーンの死体に巨額の賞金をかけていたのです。なぜ? さらにカルロスは、マリーのかつての恋人を処刑します。
ボーンは自分の記憶を探り、一つの仮説を得ます。自分はカルロスを裏切った“兵隊”で、だから命を執拗に狙われているのだ、と。
CIAや国会議員も参加した秘密委員会では、「カイン」という暗殺者が話題になっていました。ベトナム戦争で“鍛えられ”た暗殺のプロで、ベトナム戦争後は世界各地で暗殺を請け負っていました。委員会では、ボーンこそカインだと結論づけます。
なぜかマリーが殺人犯として公開手配されてしまいます。追い詰められるボーンとマリー。しかしマリーは、この手配そのものが、誰か(あるいは、何か)からの二人へのメッセージだと読み解きます。
まだ携帯電話が普及せず街角に監視カメラもなく、電報が健在の時代の物語です。現在の社会を舞台にするとしたら、著者は相当手を入れないといけないでしょうね。私は「物語」と同時に「時代」を楽しめましたが、“昔”を知らない読者は、本書をそのまま楽しめるのかな? 私はちょっと不安を感じました。