【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

危ないと感じないこと

2019-08-04 07:26:37 | Weblog

 年を取ると車の運転中に「おっと、今の自分の運転は危なかったぞ」と感じることが増えて、がっかりします。だけどよく考えてみると、「危ない」と感じるだけまだマシで、これが本当に危ない運転をしていながら危ないと感じなくなったら、これは本当に危ない事態になっている、と言えます。
 ということは、現在でも「危なくない」と思っている運転が本当に安全な運転なのかどうか、再チェックをきちんとする必要がありそうです。本当は若いときからその癖をつけておくべきだったのですが。

【ただいま読書中】『横浜駅SF』柞刈湯葉 著、 KADOKAWA、2016年、1200円(税別)

 長篇ですが、各章のタイトルが、「時計仕掛けのスイカ」「構内二万営業キロ」「アンドロイドは電化路線の夢を見るか?」「あるいは駅でいっぱいの海」「増築主の掟」「改札器官」。いやもう、有名SF作品のもじりばかり並んでいて、目次を見るだけで私はしばらく笑えました(元は「時計仕掛けのオレンジ」「海底二万マイル」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」「あるいは牡蠣でいっぱいの海」「造物主の掟」「虐殺器官」で間違いないでしょう)。ところが本書のタイトルが、謎。「横浜駅SF」って、何?
 読んで驚きます。「冬戦争」のあと、横浜駅が自律的に拡張と増殖を繰り返して、本州ほとんどを覆ってしまった未来(北海道と九州はかろうじてその侵入を防いでいます)、エキソトで横浜駅からの廃棄物に頼って生きている三浦半島の小さな村からエキナカに潜り込んだ少年ヒロトの冒険物語なのです。なるほど「横浜駅」で「SF」だわ。
 反横浜駅の活動をしている「キセル同盟」のメンバーにヒロトは5日間有効の「18キップ」をもらい、それでキセル同盟のリーダーを救出することを頼まれます。エキナカは、自動改札(駅の中での破壊活動や暴力行為を取り締まる自動機械)と駅員(エキナカの人間から構成された自警団のようなもの)で“秩序"が保たれていて、それにうっかり違反したらとんでもないことになります。エキナカの掟がわからず冷や冷やしながら移動するヒロトは「北の工作員(JR北日本の調査アンドロイド)」ネップシャマイに出くわし、甲府に有力な手がかりがあることを知ります。さて、スイカ(体内埋め込み式の自動認証・決済装置)を持たないヒロトはどうやってそこまで行ったらよいでしょう?(鉄道を使う? 「駅」の中には、エスカレーターかエレベーターくらいしか機械的な移動手段はないのです)
 だけど行けちゃうんですよね。その手段は、ナイショです。興味のある人は、読んで下さい。
 さて、キセル同盟のリーダー(天才的なハッカー)に出会えた(救出する必要はなかった)ヒロトは、つぎに「すべての答えがある」と教わった「横浜駅42番出口」に向かいます。甲府から100kmほど西、日本アルプスのど真ん中に位置しているようです。
 さて、ここで舞台は変わります。「横浜駅」は、関門海峡を越えようと触手を伸ばし続けていましたが、JR福岡に撃退され続けていました。四国へは瀬戸大橋を伝って侵入に成功。四国は大混乱から無政府状態になっています(そもそもすでに「日本政府」は存在しないのですが)。JR福岡の社員トシルは冒険を求めて四国に渡り、そこで北の工作員ハイクンテレケを修理したのが緣で一緒に旅をすることになります。(ちなみに彼が携行する電気ポンプ銃は最新式のN700系。ここでもわはははは、です)
 ネップシャマイもハイクンテレケも幼児体型のアンドロイドですが(それには合理的な理由が示されます)、ネップシャマイは銃撃されて電光掲示板だけが生き残り、ハイクンテレケも騒乱の中で下半身を失いかけそれを修理してはもらったものの万全の状態ではない、というハンディキャップを抱えています。それがそれぞれ「駅の外の人間」と凸凹コンビを組むのですが、さて、これは何からの引用かな? もっともトシルとハイクンテレケの旅の仲間は、四国の端であっさり解消されてしまうのですが。
 スケールが大きいんだか小さいんだかよくわからない話ですが、面白く読めます。さて、次作は『重力アルケミック』というホラーですって? ホラーはどちらかというと苦手なんだけどな、図書館で見つかったら読んでみようかしら。