【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ラジオ体操の夏休み

2019-08-08 07:23:07 | Weblog

 昭和の私が小学生時代には、朝のラジオ体操は毎日ありました。だからお盆の帰省の時には出席のハンコをどうやってもらうか困ったものでした(大体親の実家の地域のラジオ体操に参加してそこでハンコを押してもらっていました)。ところが平成頃から(少なくとも私が暮らす地域では)夏休みの最初と最後の2週間くらいはラジオ体操をやっていますが、中間はお休み(ラジオ体操の夏休み?)になっています。だから今朝も近くの公園は静かでした。子供たちはお盆のハンコの心配はしなくて良くなっているようです。ただし、帰省ではなくて塾の合宿で忙しいのかもしれませんが。

【ただいま読書中】『潜航ダーダネルス』(海の異端児エバラード・シリーズ3)アレグザンダー・フラートン 著、 高津幸枝 訳、 光人社、1987年、1300円

 ニックが重傷を負って半年、無事傷は癒え(しかし療養中の実家で義母との間には何かが生じたようで心にはストレスを抱え)、彼の姿は地中海にありました。
 ロレンス大佐(「アラビアのロレンス」)に率いられたアラブ軍はダマスカスを落とし、アメリカの参戦でフランスの情勢は変わりつつあり、ロシアの黒海艦隊では反乱が発生し、オスマン・トルコはもう戦争から手を引きたい気配を見せています。しかしコンスタンチノーブルにいるドイツの巡洋戦艦ゲーベン号がそのトルコの動きを抑止しています。そこでイギリス軍はフランス軍と協力して、ゲーベン号をおびき出してやっつけよう、というややトリッキーな作戦を立てました。そのためニックは、嫌いな潜水艦に放り込まれ、ダーダネルス海峡突破に付き合わされることになってしまいます。そこはトルコが密に植え込んだ機雷と防潜網のジャングルなのですが。
 敵を避けながらの潜水艦による推測航法の道行きは、とてもスリリングです。外は見えず、磁気コンパスやジャイロで方位を得、モーターの回転数とその場所の潮流から速度を推測しつつ少しずつ進みます。しかし、敵が近づいたりトラブルがあるたびに深度を変えるのでそのたびに位置の測定には誤差が加わっていきます。帆船時代のクロノメーターがなかった頃の推測航法を思い出させてくれます。
 潜水艦の中でニックはただの“(目的地に届けられるべき)荷物"にすぎません。だからでしょう、潜水艦の中で著者は他の乗組員たちにつぎつぎ注目して、艦内の様子を描写してくれます。それによって何もわかっていないであろうニックが感じているはずのスリルがさらに増しているように私には感じられます。
 潜水艦内部の描写が延々と続き、ニックは影がどんどん薄くなっていくようですが、最後にやっと見せ場が。といっても敵地での破壊活動ですから、あまり派手に見せるわけにはいきません。実際になんとなく竜頭蛇尾にその活動は終わってしまいますが、“実戦"と映画などとはそこが違う、ということでしょうね。
 本シリーズを読んでいてちょっと物足りないのは“相棒"です。ホーンブロワーにはブッシュ、ラインハルトにはキルヒアイスがいますが、ニックにはまだそういった人がいません。次に乗る駆逐艦で、そういった副官に恵まれたら良いのですが。ニックに対してまるで保護者のような感覚を抱く人がこのシリーズにはけっこう多くいるようですが、私自身もそういった感覚を持ってしまったようです。